マンションの「修繕積立金」が喰い物にされている…!大規模修繕の「狡猾キックバック」その深すぎる闇【マンション管理クライシス】

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国交省は、2017年1月27日付けの通知において、以下のようにマンション大規模修繕に関する警鐘を鳴らしている。

「一部のコンサルタントが、自社にバックマージンを支払う施工会社が受注できるように不適切な工作を行い、割高な工事費や、過剰な工事項目・仕様 の設定等に基づく発注等を誘導するため、格安のコンサルタント料金で受託し、結果として、管理組合に経済的な損失を及ぼす事態が発生している」(*記事内容は編集部が保証するものではありません。実際のマンションの状況に合わせて考え方を参考にしてください)

国交省も警鐘を鳴らす「設計管理方式」の闇

大規模修繕の事業方式は主に、管理会社や建設会社が元請けとなる「責任施工方式」と、設計コンサルタント会社が作成した共通仕様を基に工事会社に相見積もりを取る「設計監理方式」がある。

前者は元請けが全てをマネジメントするのでマンションの管理組合は手間が少ない反面、中間マージンが発生するため、高額になりやすいというデメリットがある。

一方、後者の設計監理方式は現在、主流の事業方式となっており、相見積もりによる競争原理の導入により、安価になると“期待”される。しかし、上記の国交省の通知は「設計監理方式」に関してのもので、現実は違う。

大規模修繕の見積もり見直しサービス「スマート修繕」代表の豊田賢治郎氏が解説する。

「『設計監理方式』は時には談合が行われ、割高になってしまうことがあります。公募をしたとしても、設計コンサル会社の主導で条件設定をすると、結局、彼らと付き合いのある業者が選ばれるように仕組まれていたりします。

談合の良し悪しというより、設計会社も最初は選ばれる立場です。不適切な設計会社は、修繕工事における設計監理の見積もりを、工事会社からのキックバック(バックマージン)を見込んで割安な価格で契約を得ようとしますが、トータルで管理組合が支払う工事費は高額になってしまいます」

談合され、高額キックバック業者の施工に

このキックバックの割合は、施工会社が受け取る工事費の10〜20%と言われており、近年では協力会社などを迂回して、そのやり取りもより巧妙化していると業界内では言われている。

「工事会社にとっては、付き合いのある設計会社から実質的には競争不要で斡旋され

た仕事となり、キックバックの原資も含むため、適切に取得した見積金額よりも割高になってしまうケースがあります。実際、我々が同等仕様であらためて見積もり取得した場合、20〜30%程度コストダウンできるケースが少なからずあります。この差分が、不適切な見積もりによる増分である可能性は十分に考えられます。

しかし、残念ながら多くの管理組合では相場が分からず、感覚的には高いと思いつつも渋々、割高な工事費を受け入れているように見受けられます」(豊田氏)

「公募」も出来レース

また、別の業界関係者によれば、設計会社の主導で公募しようとすると、『資本金1億円以上』『直近3期のマンション大規模修繕の受注高30億円以上』など、ハードルの高い条件設定を勧められ、結局は設計会社の意中の業者しか応募者できず、事実上の談合と変わらない状況になるという。

実際、大規模修繕の公募情報では、そのような案件ばかりなのが実情で、公募を持ちかけられた時点で怪しんだ方がよさそうだ。

そして「騙されまい」と管理組合主導で見積もりを取ろうとしても、まだ油断はできない。前出の豊田氏がいう。

「管理組合組が独自に工事会社から見積もりを取ろうとしたり、公募に関係性のない工事会社が応募したりした際には、『競合排除』が発生するケースもあります。これは、管理会社や設計会社、時には受注予定である工事会社から『他取引とのバーター』、『今後の新規取引の停止』をその工事会社に対して示し、辞退してもらうというものです。見えないところで、このような機会損失が生じている可能性もあるのです」

キックバック業者は施工品質も悪い

しかも、発注する工事会社がキックバックを取っている会社だと、経費圧縮の観点から施工品質にも影響が出かねないという。

一級建築士でマンションコンサルタントの須藤桂一氏が言う。

「私がコンサルで入った談合と思しき割高な大規模修繕では、手抜き施工だらけです。防水や塗装の塗布量も規定に達しておらず、シーリングは古いものを除去せず、“増し打ち”です。タイル補修もやらずにお金だけ請求する事案も確認しています。悪質な設計コンサルや管理会社と付き合うような工事会社は仕事を取ることにコストを費やしていて、施工レベルはひどいものです」

このような談合の排除を目指すことが、正しい大規模修繕の実施に繋がるのだ。

談合案件もひどいが、なんと住民の中にも談合を手引きするスパイがいるという。続く記事『マンション大規模修繕の巨額利権に「住民スパイ」が群がるケースも…あなたのマンションも「談合グループ」の餌食に!』で詳報する。

マンション大規模修繕の巨額利権に「住民スパイ」が群がるケースも…あなたのマンションも「談合グループ」の餌食に!【マンション管理クライシス】