新しい職場「すぐなじむ人」「なじめない人」決定差
人間関係を構築していくのに役立つ「印象をよくする秘訣」について解説します(写真:Jake Images/PIXTA)
「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」 と心理学者のアドラーが考えたように、ほぼすべての人が人間関係で悩んだ経験があるはず。
元お笑い芸人である中北朋宏氏は、芸人引退後に未経験でコンサル業界に転職し、「笑いの技術」を駆使して3年で売り上げナンバーワンに。
その後、起業して株式会社俺を設立。現在は心理的安全性や営業力を向上させる独自のノウハウ「コメディケーション」を260社、2万6000人以上に提供している。
最新刊『おもしろい人が無意識にしている 神雑談力』では、中北氏がこれまでの経験やお笑い芸人として培った技術を駆使した「人を動かすコミュニケーション術」を網羅。
以下では、その中北氏が「印象をよくする秘訣」について解説します。
4月は人間関係の悩みのピーク
4月となり、社会人生活が始まる頃ではないでしょうか。
このたびは、入社おめでとうございます。
株式会社俺では、新入社員研修を数多くの企業様とご一緒していることもあり、4月〜5月にかけて1200名ほどの方とお会いさせていただいています。
この配属前のタイミングで新入社員の方々が必ず抱く悩みとして「先輩・上司とうまく関係を築けるか……」「職場になじめるのか……」など、人間関係に対する悩みが一番多いのではないでしょうか。
前回の記事『仕事で成長するには「印象に残る力」が超重要な訳』でもお話しさせていただいた通り、職場で人間関係を構築していくためには、相手に「自分の印象を残す」ことが非常に有効であり、社会人生活に多大なメリットを及ぼします。
それでは、入りたての職場の人間関係を分析してみましょう。
職場になじむのがなぜ必要なのか
例えば、新入社員の方であれば自律的に仕事ができるようになるまでに、3つの時期を越えていく必要があります。
1.順応期:職場になじみ、上司・先輩と関係構築している
2.成長期:与えられた仕事を周囲からアドバイスをもらい実行する
3.自律期:与えられた仕事の中で自ら考え行動する
このような3つの時期がある中で、「順応期」にて職場になじむことができずつまずいてしまうと、「周囲に気軽に相談できる人がいない」や「成長機会を与えてもらいづらい」などが考えられます。
そうなると、せっかく成長期に差しかかっていても、自分が求めるような成長が得られず「職場が悪い……」「上司・先輩が悪い……」など、他責思考に陥ってしまう方が多く見受けられます。
これは、職場としても、新入社員の方々にとっても不幸であることは間違いありません。
このような不幸に見舞われないためにも、配属されてから「自ら関わる」だけでなく、相手の印象に残ることで先輩・上司から「関わりたいと思われる人材」、つまり「周囲から応援されて可愛がられる人材」になる必要があるわけです。
新しい職場に「すぐなじめる人」と「なじめない人」の差は、この「周囲から可愛がられる人」になれるか、なれないかによるところが大きいです。
今回の記事では、周囲から応援されて可愛がられる人材になるための即効性の高いノウハウをお渡しします。
もちろん、ご紹介するノウハウは、新入社員に限らず中途社員や部署異動など、新たに職場で順応期を迎える可能性がある方は、把握しておいて損はないものになっていますので楽しんでお読みいただけますと幸いです。
では、具体的にどのようなスキルがあるのでしょうか。
お笑い芸人は「4回お礼をする」
まず、最初にお伝えしたいのは、これから配属されてからの順応期で起こるイベント代表としては、「歓迎会」「先輩との飲み」が想定されます。このイベントで簡単に使えるノウハウをお伝えします。
私がお笑い芸人だった頃、芸人の先輩から教えてもらった「4回のお礼」についてお伝えします。実は、4回のお礼すべてに目的や意図が存在し、あまりに計算し尽くされており唸ったのを覚えています。
4回のお礼すべてに別々の目的や意図がある(図解:『神雑談力』より)
・「お礼1」:レジの前でお礼
・「目的1」:レジ前でお店にいるお客さんに聞こえるように大きな声でお礼を伝えることで、上司(先輩)の承認欲求を満たす
・「お礼2」:お店の外でお礼を伝える
・「目的2」:お店の外で、改めて上司(先輩)に対して目を見てお礼を伝える
・「お礼3」:家に着くタイミングでメールやLINEにてお礼を伝える
・「目的3」:家族やパートナーとの話題の一つとしてもらう(遅くなった言い訳にもなる)
・「お礼4」:会社でお会いした時に直接お礼を伝える
・「目的4」:職場の人に聞こえるような大きな声でお礼を伝えることで、上司(先輩)の承認欲求を満たす
さらに「お礼4」のタイミングで、お礼とともに「またご一緒させてください」の一声を伝え、「次はいつごろ行きますか?」と次の予定入れることも可能です。
ちなみに、この4回のお礼は、時代的に飲みの文化が徐々に衰退していることから失われてきている礼儀作法です。
だからこそ、4回のお礼を使うことで劇的にその他大勢との差別化が見込め「相手から印象に残る」こと間違いなしです。
ちなみに、私はご馳走した後輩や部下から「お礼」が1回もない場合、その後輩を二度と誘いません。
なぜかというと、相手に対して敬意がないからだけでなく、私との飲みの席がまったく楽しくなかった可能性があるからと勘繰ってしまうためです。時代ですね……。
最後に、もうひとつノウハウをお伝えします。
相手によって相づちを変える
これから社会人生活を歩んでいくと学生時代とは違い、「年代が違う人」「役職が上の人」など、多くの方と関わる機会が増えてきます。
その場合、「緊張してしまう」「話すことがない」などのコミュニケーションの課題に直面される方が多くいらっしゃいます。改めてコミュニケーションというものを分解すると「発信」と「受信」の2つの要素に分けることができます。
年代が違う人や役職が上の人と関わる場合、重要なことは、あなたから「発信」ではなく、相手の話を聞く「受信」にあります。
つまり、相手が話しやすい場を作るための「相づち」が要になります。
持ち帰ってもらいたいのは、ただ相づちをしましょうということではなく、相手の欲求レベルによって相づちを変えることで気持ちよく、相手が話をしてくれるようになります。
あなたは、マズローの欲求5段階説をご存じでしょうか。
マズローの欲求5段階説とは、アブラハム・マズローが、「人間は自己実現に向かって成長する」と仮定して、人間の欲求を図のような、下から順に満たしていく5段階の階層で示したものになります。
今では、この理論に対して諸説ありますが、わかりやすく説明するために一つの基準として扱います。
相手の社会的な立場によって、刺さる相づちはちがう(図解:『神雑談力』より)
例えば、どの欲求段階の人に対してどのような相づちが効果的かというと
・「社会的欲求」を満たしたい人
この方々は、「すごい」と相づちを打つと話すことにノリノリになっていきます。
なぜかというと、社会的に認められたいという欲求があるため「他者よりすごい」という言葉を集めて生きている傾向があるからです。家に飾ってあるのかな……というほど集めています。
「社会的欲求」をすでに満たしている人には、どのような相づちをすればいいのでしょうか。
より「偉い」人たちを虜にする相づち
・「尊厳欲求」以上を満たしたい人
「尊厳欲求」以上を求めている方は、すでに他者との比較を終えており、オリジナリティを求めています。 効果的な相づちは「面白い」です。
「新しい発想であること」「初めて見た」など、オリジナリティを指摘する相づちを打つことで心が躍り出し、「こんなこと初対面で言っていいのかな」とニンマリと笑いながら、ベラベラとなんでも話をしてくれる傾向があります。
ちなみに私の経験則上、社会的欲求の相づちは課長までの役職の方に効果が高く、尊厳欲求の相づちは部長以上の役職の方へ行うと効果が高い印象があります。
・「自己実現欲求」が終了した雲上の人
すべてを手に入れており5段階では表現しきれない雲上の人も存在しています。
例えば、資産数百億円で若い起業家の成功を心の底から応援する方や、〇〇省の事務次官のようなエリートの中のエリートのような方は、「面白い」ですら心を動かすことは難しくなっています。
相づちを「変わってますね」と少し攻めたものに変えてみてください。すると普段言われ慣れない言葉だからこそ「君、いいね!」となる可能性があります。
注意したいのは「変わってますね」の相づちを打った場合、リスクとして雲上の方が怒った場合、取り返しのつかない事態に陥る危険性があるということを念頭に置いてお使いください。
『おもしろい人が無意識にしている 神雑談力』でも多くのノウハウをご紹介しています。
この記事のノウハウと併用して使っていただきながら、新たな新社会人生活を謳歌していただけますと幸いです。改めて、このたびは入社おめでとうございます。
あなたならできる!
(中北 朋宏 : 俺 代表取締役社長)