年齢を重ねるごとに、世帯の人数も変わっていくもの。ひとり暮らしになって、「家族のため」ではなく「自分のため」に料理をするようになると、張り合いがなく、おっくうになりがちという声をよく聞きます。53歳で夫が急逝、子どもが独立し、以来、約20年間ひとり暮らしを続ける足立洋子さん(72歳)に、日々のリアルな食事や「ひとりの食卓」を手間なく楽しむヒントをうかがいました。

家族がいたときと同じ分量でつくり、残りは冷凍

どんなに料理が好きでも、毎食イチから手づくりするのは面倒。そんなときは多めにつくって保存しておく“冷凍ストック”が活躍します。

【写真】おかずは4人の分量でつくって1食分以外は冷凍

「4人分も1人分も、調理の時間や手間は同じ。だったら、まとめてつくる方がラクです」と足立さん。写真はある日の残り物一掃メニュー、グラタンです。

「牛乳、卵、ハム、ちぢみホウレンソウを使いきりたくて、マカロニをたしてグラタンにしました。4人分一気につくり、食べない分はすぐに冷凍。1食分ずつ同じサイズの保存容器に分けて冷凍し、固まったら、チャックつき保存袋に移し替えます。冷凍室の中で迷子になって食べずじまい…ということがほぼなくなりました」(足立さん・以下同)

ハッシュドビーフも同じように、1食分は食べて残りは冷凍。

「保存方法をひと工夫すれば、使い忘れも防げます。なにもつくりたくない…という日も、冷凍ストックのおかげでパパッと料理が完成します」

「なに食べよう?」が思い浮かばない日のお助けメニュー

冷凍庫におかずやご飯のストックを常備しているため、メニューに悩むことはあまりないという足立さんですが、時にはまったく思い浮かばないということも。

「食べないという選択肢はないので、とりあえずなにかをお腹に入れておこう…と思ってつくる“鉄板メニュー”は圧倒的に『ジャガイモの重ね焼き』。以前、一日に食べた食品群を記録したところ、私は比較的イモ類の摂取量が少ないことがわかったこともあり、手軽においもが摂れるレシピを積極的に食べるようにしています」

つくり方はシンプル。フライパンにオリーブオイルを熱し、スライスしたジャガイモを並べ入れ、塩、コショウ、ガーリックパウダーを振りかけ、コンビーフやベーコン、ソーセージなど好みの加工肉、シュレッドチーズ、スライスしたジャガイモを重ねて、両面をこんがりと焼くだけです。「サラダやスープを添えれば、十分なボリュームに」。

仕上がり時間が逆算できる“スピード料理”で心に余裕

子どもがまだ小さいとき、足立さんが決めていたのは「夜ごはんは18時に食べること」と「20時に寝かすこと」の2つだったそう。

「タイムリミットが決まっているので、何時までになにをしなくてはいけない、という逆算が習慣になりました。料理も、支度から完成まで『〇分でできる』というメニューがあると、心に余裕ができるので、スピード料理のレパートリーが増えたのはこの頃です」

代表的なメニューが、今もよくつくるという「6分スパゲティ」です。

「当時から、6分ゆでの1.4mmのパスタを愛用しているのですが、ゆでている6分間に、肉やあり合わせの野菜でソースをつくればゆで時間と仕上がり時間が同じに。写真は冷凍シーフードミックスを使ったトマトソーススパゲティです」

子育て時代の工夫から生まれたスピード料理が、70代の今も自分自身を助けてくれるメニューに。

行く先々で見つけた食材が、料理のやる気を引き上げてくれる

仕事や家族の用事で、定期的に東京に足を運ぶ足立さん。地元・北海道では手に入りにくい食材を見つけるのも楽しみのひとつです。

「羽田空港で新鮮な芽キャベツを発見。北海道では手に入りにくく、あったとしても高いんです。早速買って帰ってソーセージ、ジャガイモ、シメジと一緒にスープにしました。味つけはコンソメとローリエだけ」。同じく空港で買ったカラフルなミニトマトも添えて、シンプルでも見た目に華やかな食卓に。

「ひとりの食卓だからこそ、彩りは大事。カラフルなランチョンマットや食材の色合わせを工夫するのも楽しいんですよ」