「すごい秘密」が隠されたクリアファイルが、2024年3月5日に発売された。

こちらは、高知県室戸市の「むろと廃校水族館」の公式Xアカウント(@murosui_kochi)が2月28日に投稿した写真。

「このクリアファイルにはすごい秘密が隠されています。その秘密は3月5日の発売日に発表します」

廃校となった小学校を水族館に再活用したこのユニークな施設はそう呟きながら、大きなサンゴと青い海、カメやダイバー、魚群のシルエットが美しい新グッズの販売開始を予告したのだ。

3月5日は、サンゴの日。サンゴの日を記念した、サンゴクリアファイル。秘密とはいったい、何だろう?

待ちに待った発売の日、同館は再び、クリアファイルの写真を投稿した。

サンゴの日に明かされた秘密とは?

それは、こんな写真だった。

あれれれ? 前のと同じ......ようだが、ドヒャヒャ? サンゴが白い!

それに、沢山いた魚たちも、カメも、居なくなってしまっている。

サンゴの日の投稿には、次のようなコメントが添えられていた。

「紙を入れるとサンゴが白化(はっか)。海水温の上昇など、ストレスがかかると共生藻が出てしまい、白化します。そして周囲の生物たちも......。
紙を抜くと、健全な状態に戻ります。しかし、実際の海ではそう簡単には戻りません」(「むろと廃校水族館」公式アカウントより)

美しいサンゴがデザインされたファイルに、白い紙を入れると、たちまち"白化"する。紙を抜くと、元の健全な状態に戻る。これが、隠されていた「すごい秘密」だ。

どんな思いを込めたのか? Jタウンネット記者は、むろと廃校水族館に電話して聞いてみた。

サンゴの白化現象を考えるきっかけに

Jタウンネットの取材に電話で答えてくれたのは、むろと廃校水族館の若月元樹館長(日本ウミガメ協議会理事)だった。

「海水温の上昇など環境にストレスがかかると、サンゴから褐虫藻(共生藻)が出てしまい、白化現象が起きてしまいます。この白化現象に興味を持ってもらい、環境問題を考えるきっかけになればと考えたのが、このサンゴクリアファイルです」(若月館長)

環境省の「サンゴ礁生態保全行動計画2022-2030」では、気候変動に伴う海水温上昇はサンゴの白化現象をもたらすと説明されている。

白化の後、サンゴが回復する場合もあるが、今後、気候変動が進行し、水温が上昇を続けると白化現象はより発生しやすくなる。そして、回復する前に大規模な白化現象が起こったり死滅したりして、サンゴが減少していくと予測されているという。


美しいサンゴが、大きな問題を抱えている――そのことを表現するためのクリアファイル。表裏の印刷を分けることで、にぎやかな海と寂しい海が白い紙によって切り替わるようにした。

1000部ほど作って、「むろと廃校水族館」内のショップで販売中。お値段は? と聞くと「サンゴ!(350円)」と答えた。オンライン販売などの予定はないとのこと。

「サンゴは3月の誕生石だそうですから、全国の皆さん、高知県室戸市まで来てください」と若月館長は呼びかけた。

「むろと廃校水族館」は旧椎名小学校を改修して、2018年にオープン。大小2つの屋外プールや、校舎内に設置した水槽、理科室にある流し(手洗い場)、AEDを収納する箱、跳び箱などにも、室戸近海の魚約90種が展示されている。「サバ、ブリ、ボラなど、室戸の漁港に揚った、地元産の魚ばかり展示しています」と、若月館長は誇らしげに語る。「サバらしい日々」と呼ぶことも(笑)。

高知県の東の外れに位置しており、交通の便はきわめて良くない。それにも関わらず、県外から、またインバウンド客も、レンタカーを借りて訪れる人が多いという。

いったいなぜだろう? クリアファイル以上の「すごい秘密」が隠されているのかもしれない。一度、行ってみなければ......。

(2024年3月8日18時50分編集部追記:気所初出時、「日本ウミガメ協議会」が「日本ウミガメ協会」になっていたため修正しました。)