ミュージカル「ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド」公式HPより

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 2月8日、ミュージカル「ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド」(東京・帝国劇場)の“公演中止期間の延長”が発表された。6日に初日を迎えるはずだった舞台は、その2日前の4日、初日から3日間、4公演の中止が発表されていた。さらに2日間、3公演の中止が発表されたのだ。

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【写真を見る】事前公開された衣装やメイクはジョジョの世界観を見事に再現 ファンの期待度も高かっただけに

 荒木飛呂彦氏の「ジョジョの奇妙な冒険」といえば、1986年から「週刊少年ジャンプ」で連載が始まり、現在も月刊「ウルトラジャンプ」で続いている、単行本の累計発行部数が1億2000万部を突破する大人気コミックだ。

 その「ジョジョ」の初のミュージカルとなるのが「ファントムブラッド」だ。ジョジョ役は松下優也(33)と有澤樟太郎(28)のWキャスト。敵役ディオには宮野真守(40)、ジョジョの父ジョースター卿は別所哲也(58)が演じる。ファンの間では“ジョジョミュ”と呼ばれて楽しみにされていただけに、チケット購入者の落胆は大きい。

ミュージカル「ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド」公式HPより

「世界初のミュージカルですから、みんな何とかしてチケットを手に入れようとしました。原作が連載されている『ウルトラジャンプ』から申し込んだり、出演する役者のファンクラブに入ればチケットが取りやすいとファンクラブに入ったりした人もいました。松下くんと有澤くんも見たいから、複数公演のチケットを手に入れるのは当たり前。私はそれほど良い席ではなかったけれど、なんとか3公演分のチケットが入手できました。もちろん2月7日も行く予定でした」(女性ファン)

 その日は公演2日目の予定だったが……。

「2月7日は原作のPart1『ファントムブラッド』でジョジョことジョナサン・ジョースターが亡くなった日、つまり命日なんです。今回の舞台で描かれるのも『ファントムブラッド』をベースにしていますから、ファンの間ではこの日の公演を見たいという人が特に多かったんです」(同・ファン)

 それも中止に。もっとも、チケットの払い戻しはもちろん、その販売手数料やシステム利用料、手配済みの交通費と宿泊費のキャンセル料も主催の東宝が負担するという異例の対応だ。

神対応じゃない

「SNSでは“神対応”なんて声も上がっていますが冗談じゃない。上演していないのだからチケット代や販売手数料の返金は当たり前。事前予約したグッズやパンフは送料無料で送ってくれるというけれど、見ていない公演のパンフなんて……。なにより2月7日は帰ってこないんです。そもそも公演中止の理由だって全然理解できません」(同・ファン)

 6日に公式ホームページで発表された公演中止の理由は以下の通りだ。

《本作品については、弊社製作体制のもと、その複雑な演出プランに対応するための確認作業が想定以上に必要となったことなどから、稽古の進行が予定より遅れておりました。帝国劇場における舞台上での稽古開始後も、ぎりぎりまで、予定通りの初日に向けて一同で力を尽くして参りましたが、さらなる修正・見直し等が発生するなどしたことから、進行の遅れを挽回することができず、協議を重ねた結果、スタッフ・キャストの安全確保の観点からも、初日を延期し、上記4公演を中止せざるを得ないという判断に至りました。》

 次いで8日に発表された「公演中止期間延長【2月10日〜11日】のお知らせ」にはこうある。

《その後、2月10日からの公演実施に向けて一同鋭意舞台稽古に取り組んで参りましたが、スタッフ・キャストの安全確保に努めながらの準備に更なる時間を要し、誠に苦渋の決断ではございますが、2月10日(土)、11日(日)の3公演も中止とさせていただき、2月12日(月・祝)の公演より上演させていただきます。》

 コロナ禍で体調不良の出演者が出るなどして公演中止になることはあったが……。舞台評論家に聞いた。

天下の帝劇

「出演者やスタッフにコロナ感染者やケガ人が出たというのなら、正直に発表するでしょう。ファンだってそのほうが納得できますからね。一方、コロナ禍では多くの舞台が中止になり、職を失うことになった舞台技術者などスタッフは少なくありませんでした。いまになって舞台スタッフが足りないという声はよく聞きます」

 ジョジョミュも人手が足りなかったのだろうか。

「それはあり得ません。業界トップの東宝が率いる帝国劇場ですから、ベストのスタッフを揃えたはずです」(同・評論家)

 ではなぜ?

「残念ながら、はっきりした原因はわかりません。“複雑な演出プラン”という発表でしたが、演出の長谷川寧さんはダンス系の演出家で、それほど複雑な演出をするとは考えにくい。演出だけなら、初日に合わせて変えるとか何か対応策はあったはずです。予想以上にテクニカルな問題が出てきたのかもしれません」(同・評論家)

 テクニカルとは?

複雑化する舞台

「演出に合わせた舞台技術です。昔は回り舞台に書き割りのセットぐらいでしたが、最近は映像にLEDを使ったり、セットも非常に細かくできており、意外なところが動いたりもする。回り舞台も何分の1度回すとか、立体パズルのような舞台もある。その中でセットと役者がシンクロするのです。暗転もなく芝居を続けながら背景が変わっていくという複雑な作りが多くなっています。そのうちのどれかひとつでもズレたりすれば、舞台は成り立たないのです」(同・評論家)

 そのために中止になった舞台もあるという。

「昨年10月にケラさん(ケラリーノ・サンドロヴィッチ)が作・演出した『眠くなっちゃった』(東京・世田谷パブリックシアター)は、舞台機構にトラブルが発生して初日から2日間が中止となり、さらに延長して5公演が中止になりました。11月には舞台『鬼滅の刃』(東京・天王洲 銀河劇場)も、舞台稽古に想定以上の時間を要したことで進行に遅れが生じたため初日の公演が中止になりました」(同・評論家)

 なんだか、今回と似ているようにも思えてくる。

「漫画やアニメを原作にした舞台やミュージカルは増えていますからね、忙しくて稽古時間が少なくなっていることも影響しているかもしれません」(同・評論家)

 とはいえ、天下の帝劇である。

「帝劇は老朽化による建て替えのため来年2月に休館することを発表しており、現在は“クロージングラインナップ”を上演しています。中でも『ジョジョ』は、建て替え前の帝劇最後の新作オリジナル・ミュージカルと謳っています。それだけに力も入っており、攻めた作品なのだと思いますが……。ただでさえ実写のイメージがない『ジョジョ』ですからね、これだけ待たされると、どこがどれだけ大変だったのかが見たいし、変な話ですが、かえって期待値が上がってしまいます」(同・評論家)

デイリー新潮編集部