(画像はイメージです/PIXTA)

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人生の最後に残るのは、地位や名誉、預貯金の額ではなく、経験から生まれた思い出ではないでしょうか。コミュニケーションとして思い出に触れ、振り返ってもらうことで、相手との心の距離はぐっと縮まります。※本連載は桐生稔氏の著書『質問の一流、二流、三流』(明日香出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。

早いうちから「惜しみなく経験に投資する」メリット

三流は、相手の大切なものに興味がなく、

二流は、相手にやみくもに質問し、

一流は、相手の何を質問する?

「あなたは小さいころどんな子供でしたか?」

「中学校のころはどんな思い出がありますか?」

「学生のころに衝撃を受けたことは?」

このように質問されると、何か蘇ってくるものがあるのではないでしょうか。

2020年、衝撃的なタイトルの、大ベストセラー本が生まれました。

『DIE WITH ZERO』(ビル・パーキンス 著 ダイヤモンド社)です。

直訳すると「ゼロで死ね」です。つまり、全財産を使いきって死んでいこうというもの。

実際の調査では、アメリカ人は70歳のときに資産や貯蓄額が最大になるそうです。この一番お金に余裕があるそのときに、新しく水上スキーを始めたり、ライブを観に行ったり、世界中を旅したりするのはなかなか難しそうです。

「だから早いうちから惜しみなく経験に投資しろ!」というのが本の主張です。

発売以来、口コミで話題沸騰、続々重版、ニューヨークタイムズ紙などでも絶賛の声が多数あがりました。

私は、「人生最後に残るのは、経験から生み出された思い出である」というこの本の教えが本当に心に染みました。まさに人生は経験の合計だと。

ハッピーな出来事だから良い思い出、大変だったから嫌な思い出かというと、そんなことはありません。

私は小学校1年のときに、友達とケンカして大敗を喫しました。殴られて大泣きしたのですが、そのとき「人は殴られると痛いんだ」ということを学びました。大切な記憶です。

音楽フェスに行ったとき、大雨でずぶ濡れになり、パンツもビチョビチョ。それでもライブで歓声を上げながら大盛り上がりしました。なぜかそんなときの思い出の方が楽しかった記憶になっています。

学生時代、貧乏旅行でベトナムに行き、10円のラーメンを食べて腹を下しました。2日間高熱でうなされたのですが、これもまた最高の思い出です。

◆思い出は、良いこともそうでもないことも含め「今の自分を支える宝物」

誰にとっても思い出は最高の宝物です。良いことも、その逆も、すべてひっくるめて今の自分を支えてくれています。

大切だからこそ、相手の思い出にも積極的に触れてほしいのです。質問によって。

「子供のころ、どんな遊びをしていましたか?」

「どんな風に育てられたんですか?」

「一度は行ってみた方がいい旅行先ってありますか?」

もちろん、相手によっては触れてほしくない話題もあると思いますが、こうして質問されることであらためて蘇ってくる思い出もあるのです

そして、それを思い出させてくれたのは、まぎれもなく質問してくれたあなたです。

人生の最後に残るのは、築きあげた地位や名誉、ましてや通帳の金額ではなく、経験から生まれた思い出ではないかと思うのです。それに触れることができるのもまた質問の力です。

【Road to Executive】

一流は、相手の思い出を質問する

★質問によって大切な記憶を蘇らせる

桐生 稔
株式会社モチベーション&コミュニケーション代表取締役
日本能力開発推進協会メンタル心理カウンセラー
日本能力開発推進協会上級心理カウンセラー
一般社団法人日本声診断協会音声心理士