今後の生活を見据えた際、お金に対する不安を感じる人も多いのではないでしょうか。40代のときに離婚してシングルマザーとなった元・ミス日本の伊藤千桃さん(72歳)も、かつては不安を抱えていたといいます。ここでは、日々工夫をしながらお金をかけない豊かな暮らしを実践している伊藤さんに、不安の乗り越え方や心持ちを教えてもらいました。また、購入を迷ったけど、今も伊藤さんを支えているという「買ってよかったもの」を見せてもらいました。

経済力を身につけるより生活力を磨いてきました

現在、家の敷地内の離れ(古民家)を民泊として提供しているほか、ケータリングサービスを行っている伊藤さん。

【写真】その月の電気代くらいだったハンガーラック

「昔も今も貯金なんて全然ないけれど、幸い私にはここがある。開業したときは保健所や消防署と闘いながら、ひたすら自転車操業でした。でも、お金がなかったおかげで、あるものだけで生き抜く生活力が身についた。もしお金があったら、きっと自分を甘やかしてダメになっていたと思います」(伊藤千桃さん、以下同)

今は母屋の2階で暮らす娘と一緒に、家も事業もきり盛りしています。

「子どもたちが独立して、本当に肩の荷がおりた。私ひとりのことならどうとでもなる。体が動く限りは働けばいい。お金は稼げなくても、体と知恵を働かせれば、食べてはいけますから」

伊藤さんは、インドネシア・ジャカルタで日本人の母とインドネシア人の父の間に生まれ、幼少期に日本に渡り、養母に引き取られて育ちました。若い頃には、自分のルーツを知りたくてインドネシアで親族を探したことも。

「実の父は現地では名士だったみたい。大歓迎されて、今もいとこたちとおつき合いがあります。自分には日本とあちらと、両方に家族がいる。その絆も、私に力をくれています」

●レシートは集めておいて年に一度まとめて処理!

家計簿はつけていません。収入は年金と雑誌などからのギャランティ。民泊とケータリングの家業分は娘から給料をもらう形です。領収証やレシートは、費目と月でざっと仕分けしてためておき、「年に一度、確定申告のときに計算。アバウトだけど、どうにかなってます」

40代でシングルマザーに。さあ、どう生きていこう?

40代で離婚。学費と養育費はもらえるものの、生活をどうしていこうか。いちばん不安だったのはその時期だったと伊藤さんは振り返ります。

「私が外に働きに出てお金を得るべきか。そうすると、この葉山の家と庭の手入れは行き届かなくなってしまいます。それよりも、ここを活用して仕事にしよう、この家で働こう、と決めたんです」

庭の手入れは、力仕事も含めてすべて自力で。果樹を植え、傾斜地も耕して畑にしました。

「お金のある・なしよりも“食料さえあれば食べていける”、そんなふうに考えていましたね。お金を稼ぐことよりも、この環境を維持することに力を注ぎたい。試行錯誤で失敗だらけでしたけど、なんとかやりきれたんじゃないかな? あとは娘が、どう工夫して発展させてくれるか。彼女の手腕に期待してます」

●お金がなければないで、なるようにしよう

インドネシアのいとこが送ってくれるバティック。エプロンに仕立てて大活躍でしたが、傷んできたので今はマルチカバーに。「お金がなければないで、なるようにしよう。その工夫があれば不安はなくなります」

自分にとって必要かどうかは長い目で見て判断する

お金に余裕がないときに、欲しいものに出合うこともある。そんなときは「欲しい」気持ちと冷静に向き合って、将来だれかに受け継いでもらえるか、無理してでも手に入れる価値があるかを考えます。「買ってよかったものは、今も私を支えてくれているものばかりです」

●迷って悩んで、でも買ってよかった!伊藤さんにパワーをくれるものたち

民泊の居室で存在感を放つ中国のアンティークだんす。リネン類のストッカーにしています。「これがあるだけで、部屋の雰囲気が決まるんです」

アジアの古い寝台(ベッド)は長椅子に。「重くて丈夫。今の時代のクッションやラグがどんなに傷んでも、これは残り続けていますね」

鎌倉の雑貨店で出合ったハンガーラックは「その月の電気代がこれに化けて大変でした(笑)」。今も玄関で、伊藤さんや家族を温かく迎えてくれます。

キッチンツールをつり下げるラックは「少々お高かったけれど、武骨で丈夫で便利! 背丈に合わせてセットしてあるから使いやすい。娘が欲しがらなかったら、売ってもいいやと思ってます」 

年齢は取材当時のものです