2004年に日本料理店『賛否両論』をオープンした直後から、予約のとれない店の店主として知られるようになった笠原将弘さん。以来、テレビや雑誌、食育活動など、さまざまな分野から常に引っ張りだこで、著書も多数。日本一忙しい料理人といってもいいほど活躍している笠原さんに、オンとオフの切り替え方などについて聞きました。

仕事と休みの割合は9:1。笠原さんがモチベーションを保ち続けられる理由

――とにかく忙しそうな笠原さんですが、仕事に対するモチベーションをどのように保っているのでしょうか?

【写真】笠原将弘さん、オフの日の楽しみは

笠原将弘さん(以下、笠原):僕は自分のやりたいことを仕事にできているから、それはすごく幸せなことだと思っています。だから、基本的には、仕事に対して文句は言わない。おかげさまで、自分の夢もほとんどかなってるんですよね。自分の店をもつとか、毎日満席の店にするとか、自分の本を出すとか。そこに関しては本当に恵まれていると思っているので、感謝の気持ちを忘れないようにと常に自分に言い聞かせています。仕事があって当たり前と思っちゃいけないなと。

 

――いつも仕事に対して謙虚な気持ちをもち続けているんですね。

笠原:あとは、好きな仕事だから、楽しくやろうと心がけています。やっぱり僕がつまらなさそうにしていたら、スタッフもイヤだろうし、子どもたちもそんな親父は見たくないだろうなと思うので。みんなに楽しそうなところを見せて、「がんばれば、こんなふうになれるんだ」と思ってもらいたいですね。

――上に立つ人が楽しそうにしていると、職場の雰囲気もよくなりますよね。

笠原:僕は趣味があまりないんですよ。サウナに行くこととビールくらいで。で、修業時代の師匠から「やることがないなら仕事をしとけ」と言われてきたので、かなりの仕事人間ですね。

 

――サウナに行ったり、お酒を飲んだりと、仕事以外のことをしているときに、どれくらい仕事のことを考えていますか?

笠原:それは、いまだにどれが正解なのか答えが出ないんですが、僕はとにかく時間を効率よく使いたいから、移動時間やサウナの中でもレシピを考えたりしています。以前は、そういうときは頭を空っぽにした方がいいとも思ったんだけど、それができないんですよね。無駄な時間をなくすために、ついつい仕事をしちゃう。

完全にオフの日の楽しみは「絶景でビール」

――仕事のことが頭から離れることはあるのでしょうか?

笠原:唯一、仕事から離れられる時間は、完全にオフで家族と一緒に過ごすときだけですね。そのときは、さすがにスケジュール帳も持ち歩かないし、携帯も極力見ないようにしていますね。電話も緊急じゃなければ出ない。年に数回の限られた時間だから、家族や昔からの友人といった大切な人たちと向き合いたいと思いますね。

 

――どんなに忙しくても、完全にリラックスする時間は必要ですよね。

笠原:少し休みがとれると、めちゃくちゃ行きたかった場所に思いきって行くこともあります。僕は昔から『世界の車窓から』みたいな番組が大好きなんですよ。夜中にBS放送でやっているような旅番組とかをぼーっと見たりもします。とにかくきれいな景色を見るのが好きなので、世界でも日本でも、絶景といわれる場所に行ってみたいと思いますね。おかげさまで、日本全国に仕事で行く機会があるので、その点は恵まれていますよね。あとは、飲めるんだったら、景色のいいところで必ずビールを飲んでいます。絶景を見ながら飲むビール、これはたまらないですよ!

 

――具体的に、今までに絶景でビールを飲んだ場所でいちばん印象に残っているのはどこですか?

笠原:もう20年以上前に友人の結婚式で行った、フィジーのマナ島というところですね。今は少し変わっているかもしれませんが、見たこともないような真っ白な砂浜に白い教会がぽつんと立っていて、僕以外にだれもいないような、そんな空間に身を置いたことがあるんです。真っ青な海に膝までつかり、フィジーの缶ビールを飲んだときのことは、いまだに忘れられないですね。

――それは最高にリフレッシュできそうですね。

笠原:人間って、本当に幸せなときは、心の底から笑っちゃうんですね。そのときも、誰もいない海で「ハッハッハッハッハッ」て大声で笑っちゃいました。