日本と違い、海外では頻繁にホームパーティが開かれる。イギリス在住で著述家の谷本真由美さんは「憧れている日本人が多いかもしれないが、ただの社交の場ではない。実態は、仲間かどうかをはっきりさせるための恐怖の儀式だ」という――。(第3回/全3回)

※本稿は、谷本真由美『世界のニュースを日本人は何も知らない5』(ワニブックス【PLUS】新書)の一部を再編集したものです。

■「ホムパ」に憧れる日本人が知らないこと

日本人が勘違いしていることのひとつにアメリカやヨーロッパのホームパーティ文化があります。これらの地域の実態を知らない人々は、雑誌やテレビ、ドラマなどでのホームパーティ、いわゆる「ホムパ」の光景を見て憧れ、日本でも真似しようとします。

ちょっと小金持ちの主婦とか意識高い系の女性が読むような雑誌にはそういうわけで、ホムパの美しい写真とかサンドイッチやタルト、カナッペなど、手軽に手でつまんで食べられる料理のフィンガーフードのメニューなどがガンガン掲載されています。そして、なぜかクソ狭い日本のマンションや住宅でそれらの国々のテーブルコーディネートや庭の家具をそっくり真似してみたりするのです。

ところが日本人は、このホムパの真の意味をまったくわかっていません。

■「お前は俺の敵か、仲間か」を確認する儀式

ホムパとは、これらの国々で相手が自分の派閥の仲間かどうかを確認するため同調圧力全開の恐怖の儀式なのです。生ぬるい社交の場ではないのです。この会に招くか招かれるかは、「お前は俺の敵なのか? 仲間なのか? それとも舎弟か?」ということを確認する儀式であり、はっきり言って参加はほぼ強制なのです。

写真=iStock.com/monkeybusinessimages
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/monkeybusinessimages

このホムパの意味にもっとも近いものは任侠社会の“兄弟の盃”です。

任侠社会はこのような集いの儀式が大変重要視され、そこで組や自分の同盟に対して忠誠を誓い、それを形にあらわす儀式をおこなうのです。兄弟の杯の交換や、同席して飲食を共にすることがそれに当たります。お互いに飲食物に毒を仕込まず、こういった集いの場では襲撃をすることもなく、自分は味方である、ファミリーの一員であるということを証明しているのです。

■呼ばれて行かないなんてことは許されない

実はアメリカやヨーロッパは日本人が想像する以上に大変な部族社会です。その部族は古代のような同じ村や血縁関係からかなり拡大されていて、地縁や血縁に縛られた運命共同体というよりも利益を共有する集団になっています。

たとえば業界内の派閥や会社内での交友関係、上司と部下の関係、学校での子どもの同級生との関係といったものになります。だからホムパに呼ばれるか呼ばれないかということは、その後の人生を左右し、所属している社会での立ち位置を明確にするための重要な儀式なのです。

したがって会社で上司やかなり力を持った目上の人々がホムパを開催する場合、呼ばれたらほぼ完全に出席しなければならないことになっています。これは利害関係の対立が激しく、部族社会的な色合いがたいへん濃いアメリカでは特に強烈です。

ホムパに呼ぶか呼ばないかを他人の目の前でも堂々と公言し、自分の派閥に入れない人間に対してはまったく声をかけないということをやります。さらにホムパを開催したあとはその写真や動画をSNSやWhatsApp(ワッツアップ/チャットツールのひとつ)などで公開し、会社内や業界内での自分たちの力関係や派閥を明確にするのです。

■似たような格好の女性があふれかえるワケ

これが富裕層や芸能人となると、そのような写真や動画を週刊誌やニュースサイトなどで大量に公開します。アメリカやヨーロッパの芸能関係における媒体の雑誌は毎週このようなホムパの写真を掲載しています。掲載専門のコーナーまであるほどで、どれだけ人気があるコンテンツかということがおわかりになるでしょう。派閥関係の公開提示がそれだけ重要だということです。

さらにここで重視するのは特に女性の場合、参加者は同じような服装、同じような髪型、同じようなメイクで、写真や動画に登場することです。日本の任侠社会とか珍走団(暴走族を格好悪く言い表した表現)とまったく同じで、同族であることを示すシンボルはまず見た目です。

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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/monkeybusinessimages

だからこのようなホムパで力関係を示すことが大好きな意識高い系の白人の女性たちの場合、意識が高そうな白っぽいセクシーな服、金髪のロングヘア、ナチュラルメイクに見えるが盛りまくった化粧、派手なネイル、ヒールの靴などで同族性を強調します。時にはお揃いのTシャツを着たり帽子をかぶることもあります。

■「一緒にバカができる人間」を選別している

そのイベントのためにわざわざお揃いのものを縫製するのです。そういった服をチャリティーイベントやマラソンなど、さまざまなイベントの都度つくり、打ち上げをやる場面で着用して一緒に写真を撮ってネットでガンガン回しまくるのです。

つまり同じ服を着ることを許されない人間や、招待されていない人間は仲間ではないということを遠回しに言っているのです。イギリスの場合ではここに仮装要素が入ってきます。ようするにコスプレです。こういう力関係を精査するイベントで、テーマごとの仮装を大の大人が真剣にやるわけです。一緒にバカができる人間なら仲間にしてやる、というこれまたきつい同調圧力がそこに存在しています。

仮装にはそれなりにお金をかけるので、数万円単位で衣装を特注したり、着ぐるみを調達したり、夫婦でお揃いのテーマにしたりとかなり面倒くさいです。しかも仮装が他人とダブったりするのもご法度で、ユニークさや奇抜さがなければなりません。この馬鹿げたことにもお金がかかるのです。

■日本の会社の人間関係は実はさっぱり

さらにホムパだけではなく、厄介なのが会社でのさまざまな行事です。アメリカや北欧の会社は日本の会社に比べてやたらと行事が多いのです。

海外の実態を知らない人は、日本の会社はやたらと飲み会や行事が多くて大変というような文句を言っていますが実は大違いです。近年は日本の会社のほうがはるかにさっぱりしていて、昭和の頃とは違って飲み会や行事もだいぶ少なくなっています。

ところがアメリカやヨーロッパ北部の職場は日本の会社よりもはるかにねっとりしています。たとえば管理職やチームリーダーレベルの人々が合同で泊まりがけの研修や海外の視察旅行に出かけます。そのなかには遊びに近いものもけっこうあります。

だからアメリカやヨーロッパ北部には大企業や超儲かっている会社向けの大変高価なコーポレートパッケージ(福利厚生プログラム)の旅行やイベントがかなりあります。

■いまでも「美人コンパニオン」が活躍中

こういった会社の人々が運賃の高いタクシーで来たり、豪華なドレスを着て一人当たりの参加費が10万円以上のディナーをやったり、競馬やF1ヨットのイベントでVIP席を占領したり、はたまた宿泊代が高価なホテルのイベントルームを貸し切って贅沢で華やかなパーティをやったりしているのです。

写真=iStock.com/bernardbodo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/bernardbodo

日本ではほとんど報道されないので知らない人が多いでしょうが、こういった豪華絢爛(けんらん)なパーティには若くて美しい白人の女性がコンパニオンとして大勢派遣され、露出度の高い服を着て参加者の世話をしたりします。

政治や社会に中立的であり偏見や差別を感じさせない表現をする考え方およびその姿勢を意味する「ポリティカル・コレクトネス」(ポリコレ)や性的平等など、対外的には大騒ぎしていますが、これがアメリカやヨーロッパ北部のお金がある世界の実態です。

■「非ポリコレ」なのに批判されることはない

谷本真由美『世界のニュースを日本人は何も知らない5』(ワニブックス【PLUS】新書)

こういったコンパニオンをやる女性も、お金がある人々との出会いを求めている方も多いので人気がある仕事です。需要と供給がマッチングしているので批判する人はいません。ポリコレで大騒ぎするようなマスコミとか左翼や女性運動家の人々はこのような金満社会にまったく縁がないので彼らが何をやっているのか知らないのです。

それにメディアや社会運動の団体にとってこういった人々は貴重な資金提供者です。ようするにパトロンですから批判などするわけがありません。富裕層は寄付をすれば自分のイメージがアップし、税金も安くなるので気に入った団体には寄付します。

このようなメディアや活動家も、本当にお金がある人々のポリコレ的ではない活動はいっさい批判しません。それになぜか風俗産業や芸能界の枕営業もスルーなので、世の中はこれが実態ということです。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)
著述家、元国連職員
1975年、神奈川県生まれ。シラキュース大学大学院にて国際関係論および情報管理学修士を取得。ITベンチャー、コンサルティングファーム、国連専門機関、外資系金融会社を経て、現在はロンドン在住。日本、イギリス、アメリカ、イタリアなど世界各国での就労経験がある。ツイッター上では、「May_Roma」(めいろま)として舌鋒鋭いツイートで好評を博する。
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(著述家、元国連職員 谷本 真由美)