高木豊がセ・リーグの助っ人たちを4段階で評価 人数過多の巨人は「起用する側に問題があった」
高木豊の「助っ人」通信簿
セ・リーグ編
プロ野球においてチーム浮沈のカギを握る助っ人外国人。かつて大洋(現DeNA)で活躍し、現在は野球解説者やYouTubeでも活動する高木豊氏は、そんな外国人選手たちの今年の活躍をどう見ていたのか。まずはセ・リーグ各球団の主な助っ人たちの貢献度を、チームごとに【◎、〇、△、×】の4段階で評価してもらった。
DeNAバウアーら、今年の助っ人たちの評価は? Photo by Sankei Visual
◆阪神【野手◯/投手△】
18年ぶりのリーグ優勝と38年ぶりの日本一を達成した阪神は、投打ともに生え抜きの日本人選手が活躍した一方で、助っ人たちは際立った成績を残せなかった。それでも、シェルドン・ノイジーが日本シリーズ第7戦で先制の3ランホームランを放つなど、チームの日本一に貢献した。
「ノイジーのバッティングは不安定でしたが、3番に入った時は勝利につながる働きもしていました。評価したいのは守備力。捕殺もありますし、二塁打になりそうな打球をシングルヒットで止めることもけっこうありましたね。日本シリーズではランナーを進めるための右打ちもしていましたし、日本の野球に順応してきています。来季はもっと期待していいと思いますよ。
(ヨハン・)ミエセスは、ポジションを争う森下翔太や小野寺暖が起用され、なかなかチャンスが巡ってこなかった。その中でチームに溶け込み、一生懸命やっている姿を見ると、数字以外の部分でプラスアルファを与えてくれる選手だなと。祝勝会でもみんなと盛り上がっていましたし、"バカ"になれる選手は重要なんです。
投手では、(カイル・)ケラーが27試合にリリーフで登板しましたが、阪神は日本人投手だけでリリーフ陣が盤石です。岡田彰布監督は1イニングを任せるというよりもバッターごとに投手を起用することが多いですし、そういう使われ方はケラーには合わないでしょうね。主力のリリーフ陣が疲れた時、穴を埋めるために起用される感じでした。
(ジェレミー・)ビーズリーは球威があって、日本シリーズでは回またぎでも安定したピッチングを見せていました。まだまだ未知数の部分があるので、来年は今年よりよくなると思います。あと、(コルテン・)ブルワーは途中加入ながら球威がありましたし、阪神でなければ勝ちパターンのリリーフも任せられる力があります」
【助っ人外国人の成績】
(野)ノイジー 133試合 打率.240 9本塁打 56打点 出塁率.295 OPS.623
(野)ミエセス 60試合 打率.222 5本塁打 16打点 出塁率.301 OPS.666
(投)ケラー 27試合 1勝0敗8ホールド1セーブ 防御率1.71
(投)ビーズリー 18試合 1勝2敗 防御率2.20
(投)ブルワー 13試合 0勝1敗2ホールド 防御率2.38
◆広島【野手△/投手◯】
昨季は主に4番として打線を牽引したライアン・マクブルームが誤算だったが、マット・デビッドソンは低打率ながら19本塁打を放つなど長打力を発揮。ニク・ターリーは貴重な左のセットアッパーとして44試合に登板し、防御率1.74と昨季以上に活躍した。
「マクブルームの打席数は昨季の半分。デビッドソンとの2枚看板を考えていたと思うのですが、マクブルーム個人は△です。
デビッドソンは(トレバー・)バウアーと対戦した時にいきなりホームランを打ちましたが、向こう(MLB)のスタイルでやらせたら相当打つんだろうなと思いました。もう少し日本のバッテリーの配球を勉強したらホームランを30本くらい打てると思いましたが、残念ながらマクブルームともども退団になりましたね。守備を本当に一生懸命にやりますし、二軍に落とされた時も一生懸命にプレーしていました。なのでデビッドソン個人は◯です。
(ドリュー・)アンダーソンは平均点より少し上という感じで、爆発力があるピッチャーではないので先発タイプだと思うのですが、中継ぎで出てくるケースが多かった。なので、使われ方では苦労したのかなとも思います。ただ、期待に応えられなかったことは事実なのでアンダーソンは△です。
ターリーは中継ぎの一角を占めて2位躍進に大きく貢献したと思います。広島は中継ぎ陣が最大のウイークポイントでしたが、島内颯太郎らとともに頑張りながらストロングポイントに変えましたし、ターリー個人は◎。投手は総合で〇です」
【助っ人外国人の成績】
(野)マクブルーム 70試合 打率.221 6本塁打 31打点 出塁率.305 OPS.659
(野)デビッドソン 112試合 打率.210 19本塁打 44打点 出塁率.273 OPS.698
(投)アンダーソン 21試合 4勝1敗2ホールド 防御率2.20 QS率33.3
(投)コルニエル 8試合 1勝4敗 防御率5.10 QS率50.0
(投)ターリー 44試合 7勝1敗22ホールド 防御率1.74
◆DeNA【野手☓/投手◎】
トレバー・バウアーがサイ・ヤング賞投手としての力を存分に見せ、J.B.ウェンデルケンもリリーフ陣を支える活躍を見せた。だが、野手はタイラー・オースティンとネフタリ・ソトが誤算に終わった。チームは首位の阪神に大きく引き離される結果となったが、両助っ人の不振や故障が響いた。
「ソトは△です。期待されているのはホームランなのですが、わずか14本で低打率。それくらいの成績なら日本人の若手野手を使ったほうがいい。ソトが不振で、佐野恵太をファーストで起用せざるを得ず、それによって佐野のバッティングもおかしくなりました。
オースティンは、右肘の故障から手術を経て交流戦の時期に戻ってきましたが、交流戦の最中に肩を負傷しました。不運な部分もあるとは思いますが、2年間まともに働いてくれないのはさすがに厳しいです。故障からの復帰に時間がかかりすぎですし、オースティンは☓です。
投げるほうでは、バウアーが◎。成績は文句ないですし、日本の野球を変えてくれましたよね。『100球で代えなきゃ罪だ』みたいな風潮がある中で、バウアーは中4日で120球くらい投げる。日本の監督たちの『本当は投げさせたいんだけど、投げさせられなかった』という苦しみを解放してくれました。他のピッチャーの中には『投げなきゃいけないんだ』という意識が芽生えた選手もいると思います。
(ロバート・)ガゼルマンはボールをよく動かす投手で、シーズンを通して使ったら面白いピッチャーだと思いますが、外国人枠の争いで負けた感じです。パワー系のウェンデルケンは勝ちパターンに入ってきましたし、森原康平がいない時は抑えを任されるなど、ブルペンに欠かせないピッチャーでしたね。
(エドウィン・)エスコバーは結果も印象もよくなかったです。登板数を減らして起用すればもう少し成績がよくなったと思いますが、やはり勤続疲労の影響が大きいと思います」
【助っ人外国人の成績】
(野)ソト 109試合 打率.234 14本塁打 50打点 出塁率.316 OPS.731
(野)オースティン 22試合 打率.277 0本塁打 6打点 出塁率.352
OPS.756
(投)バウアー 19試合 10勝4敗 防御率2.76 QS率78.9
(投)ガゼルマン 13試合 3勝5敗 防御率4.45 QS率30.8
(投)ウェンデルケン 61試合 2勝2敗33ホールド3セーブ 防御率1.66
(投)エスコバー 40試合 2勝1敗11ホールド 防御率4.55
◆巨人【野手☓/投手△】
昨季に続きBクラスに終わった巨人。ピッチャーを中心に多くの助っ人を獲得したが、際立った成績を残した助っ人はいなかった。打つほうでは攻守での活躍が期待された(ルイス・)ブリンソンが振るわず、昨季23本塁打を放った(アダム・)ウォーカーも今季は不振に終わった。
「ブリンソンはバッティングも守備も能力が高いと思うのですが、すぐに代えられてしまっていた。何度かあった走塁ミスの印象が強いのか、我慢して起用できないんでしょうね。秋広優人が外野に回るなど外野手が増えてきて、首脳陣が誰を使っていいのか迷っていたこともあるかもしれません。使い続けたら面白い選手だと思っていたので、残念でした。
ウォーカーは打席数が昨季から300くらい減って、ホームラン数も約1/4になりました。ただ、それはチーム事情が影響していて、助っ人が多くなると外国人枠の問題もありますし、成績も何もあったもんじゃない。試合に出られるかわからなければモチベーション維持も難しいです。ウォーカーからすれば、『なんのために、昨季にあれだけ頑張ったんだ』という思いではないでしょうか。
それと、巨人の助っ人投手は(フォスター・)グリフィンにしろ、(タイラー・)ビーディにしろ、使い方によってはいい成績を残したと思うんです。特にビーディは、打線が点を取れなかったから勝てなかった印象が強い。助っ人たちを競争させたりもしていましたが、僕は起用する側に問題があったと思います。もったいなかったなと。
そんな中で(ヨアンデル・)メンデスはよくやったと思います。当初の立ち位置としたら優先順位の低い助っ人でしたが、試合をよく作っていましたし、防御率もいい。フォアボールも少なく、制球がよかったですね。少しマウンドでイライラするところがありますが、メンデス個人は◯です。
(アルベルト・)バルドナードもよかったですね。シーズン途中の加入でしたが、13試合連続無失点に抑えるなど安定していました」
【助っ人外国人の成績】
(野)ブリンソン 88試合 打率.248 11本塁打 35打点 出塁率.272 OPS.694
(野)ウォーカー 57試合 打率.263 6本塁打 20打点 出塁率.275 OPS.758
(投)グリフィン 20試合 6勝5敗 防御率2.75 QS率65.0
(投)メンデス 16試合 5勝5敗 防御率2.07 QS率56.3
(投)ビーディ 30試合 0勝6敗7ホールド1セーブ 防御率3.99 QS率16.7
(投)バルドナード 21試合 2勝1敗7ホールド 防御率1.69
◆ヤクルト【野手◎/投手△】
連覇から一転、5位に沈んだヤクルトだが、ドミンゴ・サンタナとホセ・オスナは今季も打線の主軸として活躍。特にサンタナは打率.300をマークするなど気を吐いた。投手のサイスニードは、ふた桁勝利とはならなかったが、規定投球回を投げるなど先発ローテーションのひとりとして役割を果たした。
「サンタナは◎です。前後のバッターを含めてなかなかバッター陣の調子が上がらず、どんよりしたチームの雰囲気の中でよく頑張ったと思います。スタートがちょっと遅れましたが、最初からいれば打点や本塁打はもっと伸びたはずです。
オスナも◎です。今年は打率が低めでしたが、試合を休みませんし、常に一生懸命に取り組む姿勢がいいですね。チームの調子が上がらない中で「勝ちたい」という気持ちを見せてくれました。サンタナとオスナの活躍がなければ昨季までの2連覇もなかったですし、今季はチームがふがいなくても、自分たちのプライドを守ろうとしていたような気がします。
サイスニードは23試合に先発しているので10勝ぐらいはしてほしかったですが、チーム状態が非常に悪かったので、7勝するのも大変だったと思います。いい時と悪い時の差が激しすぎたので、そこが安定するといいですね。(ディロン・)ピーターズの課題はスタミナです。必ず6回ぐらいで捕まるというか、5回まではしっかり試合を作るので期待していると、それ以降に急に崩れてしまう。前半戦に好投していた時、もう少し勝ちをつけてあげたかったですね。
(エルビン・)ロドリゲスはひとつひとつのボールの質はいいと思います。多少ばらつきますが、だからといってフォアボールが多いということもない。彼に必要なのは"慣れ"でしょうね。打線との兼ね合いで1勝5敗ですが、逆の5勝1敗になってもいい内容だったと思います」
【助っ人外国人の成績】
(野)サンタナ 136試合 打率.300 18本塁打 66打点 出塁率.360 OPS.844
(野)オスナ 134試合 打率.253 23本塁打 71打点 出塁率.308 OPS.745
(投)サイスニード 23試合 7勝8敗 防御率3.67 QS率52.2
(投)ピーターズ 18試合 6勝5敗 防御率3.22 QS率44.4
(投)ロドリゲス 7試合 1勝5敗 防御率4.09 QS率50.0
◆中日【野手△/投手◎】
最下位に低迷した中日は、ダヤン・ビシエドが昨季の数字を大きく下回る不振に陥り、期待されたオルランド・カリステも数字を伸ばせなかった。一方でライデル・マルティネスは、例年通りに絶対的なクローザーとして君臨した。
「ビシエドは☓です。首脳陣がビシエドを使うのか、使わないのかをはっきりさせなかった点では同情します。シーズン全体を考えた時、調子が上向くまで我慢して起用しなければいけない時期もあると思うのですが、『もう代えちゃうの?』という感じのスパンで代えられていた。それでは落ちついて野球ができません。彼は日本での実績がありますし、使っていたら打てる時期が必ず来るので、ある程度我慢して使うべきだったんじゃないかと思います。
カリステは数字だけ見ると物足りないですが、ショートの守備ですごくいい動きを見せてくれました。日本の野球に慣れようと努力していた部分も考慮して、◯でいいと思います。決してうまいとは思いませんが、守備がダイナミック。あれだけの動きができるショートはなかなかいません。
投げるほうでは、マルティネスは◎です。48試合に登板して防御率0.39は驚異的。投げたらほぼ救援失敗がないわけですから。何年も安定した成績を残していますし、文句のつけようがないです。
(ウンベルト・)メヒアもすごくよかったです。シーズン途中から加入したが、コントロールもいいし、先発として十分なピッチングを見せてくれました。ただ、やはり打線が点を取ってくれないと勝てません。今まで、これほど打てないチームで投げた経験はないんじゃないですかね。(マイケル・)フェリスはピンチでも冷静に投げていたのが印象的ですし、シーズン終盤は安定していました」
【助っ人外国人の成績】
(野)ビシエド 91試合 打率.244 6本塁打 23打点 出塁率.311 OPS.641
(野)カリステ 47試合 打率.233 5本塁打 13打点 出塁率.265 OPS.639
(投)メヒア 8試合 3勝1敗 防御率2.23 QS率62.5
(投)マルティネス 48試合 3勝1敗9ホールド32セーブ 防御率0.39
(投)フェリス 19試合 1勝0敗9ホールド 防御率3.14
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【プロフィール】
高木豊(たかぎ・ゆたか)
1958年10月22日、山口県生まれ。1980年のドラフト3位で中央大学から横浜大洋ホエールズ(現・ 横浜DeNAベイスターズ)に入団。二塁手のスタメンを勝ち取り、加藤博一、屋鋪要とともに「スーパーカートリオ」として活躍。ベストナイン3回、盗塁王1回など、数々のタイトルを受賞した。通算打率.297、1716安打、321盗塁といった記録を残して1994年に現役を引退。2004年にはアテネ五輪に臨む日本代表の守備・走塁コーチ、DeNAのヘッドコーチを2012年から2年務めるなど指導者としても活躍。そのほか、野球解説やタレントなど幅広く活動し、2018年に開設したYouTubeチャンネルも人気を博している。