ホンダの3代目「N-BOXカスタム」が爆売れしている理由
3代目N‐BOXの開発責任者である諌山博之氏。一文字ライトが輝く
■マイチェン的フルチェンでも"無双状態"
11月7日、日本自動車販売協会連合会と全国軽自動車協会連合会が発表した、10月の国内新車販売台数の車名別総合ランキングで、ホンダの軽スーパーハイトワゴン「N‐BOX」が2万2943台をマーク。前年同月比40.2%増と数字を大きく伸ばし、3ヵ月連続で国内販売の頂点に輝いた。しかも、2ヵ月連続で2万台突破(!)というオマケつき。
ちなみに軽自動車では8年連続、総合でも2年連続トップに立つN‐BOXは、ホンダのニッポン市場で4割弱を占めるドル箱カー。2011年にデビューし、その累計販売台数は240万台を軽く突破! 数多くの日本人を沼らせたという意味においては、もはやユニクロのヒートテック、アップルのiPhoneに並ぶ鉄板商品とも言える。
メッキを抑えド派手な感じではないが爆売れ。ちなみにオプションにはオラオラパーツがワンサカ!
そんなN‐BOXが6年ぶりにフルチェン。爆誕した3代目は10月6日より販売開始となり大きな話題を呼んでいるが、この新型のフォルム、"激変"という感じではない。玄人筋はともかく、クルマに疎い人間からすると、「2代目からあんま変わってなくね?」という印象を抱いてしまう。事実、骨格やエンジンなどは2代目からのキャリーオーバー。
開発責任者の諌山博之氏はこう語る。
「誰もが一目でN‐BOXとわかるシルエットが大事でした。一方で3代目は、総合力の底上げを徹底的にやっています」
つまり、3代目は2代目の魅力を継承したキープコンセプトモデル。ただし、各部の性能は余すところなくアップデートし、総合力をレベチに高めたというわけ。では、なぜいわゆる"マイチェン的なフルチェン"的になったのか。言うまでもなく、N‐BOXは名実ともにホンダの国内市場を支える大黒柱。"絶対王者"であり続ける必要がある。なので、手堅い戦略を採ったのだろう。
カスタムのインテリアカラーはブラックが貴重。上質な空間に仕上がっている。ハンドルは本革巻き
大人4名が乗っても窮屈な思いはしない。軽スーパーハイトワゴンの中では最大級
気になる3代目の販売状況は? 商品ブランド部の廣瀬紀仁氏が説明する。
「新型は8月7日から先行予約が開始され、10月中旬時点で2万7000台以上の受注がありました。受注比率の約7割がN‐BOXカスタムですね」
ホンダは3代目N‐BOXのお顔を白物家電的に仕上げた。開発陣もその出来映えにドヤ顔であった。しかし、いざフタを開けてみれば横一文字ライトを採用した割と派手顔のN‐BOXカスタムが鬼売れ。その理由とは?
「アーリーアダプター(早期導入者)は最上級モデルを求める傾向にあります。もう少し時が経つとN‐BOXとN‐BOXカスタムの販売比率は半々になるかと思います」(廣瀬氏)
3気筒ターボエンジンの最高出力64馬力。高速道路の走行にも余裕がある
N‐BOXカスタムが圧倒的に支持を受ける背景には、いわゆる"ターボ問題"も挙げられる。実は3代目からターボはN‐BOXカスタムのみの設定。いったいどうして?
「N‐BOXのターボモデルは全然売れなかったんです」(諌山氏)
残念なことに2代目N‐BOXのターボ比率は8%だったそうな......。ニッポン市場の売れ筋である派手顔を持ち、さらにターボも用意するN‐BOXカスタムが人気を集めるのは当然の結果とも言える。
3代目N‐BOX。丸目のヘッドライトが白物家電感を高めている
ホンダによると、販売の足枷のひとつだった半導体不足は解消に向かっており、現時点で納期も長期化していないとのこと。それを踏まえ、一部専門家筋からは「月販30000台も夢ではない」という声も飛び交う。
3代目N‐BOXの"無双状態"がどこまで続くか、引き続き観測を続けたい。
取材・文/週プレ自動車班 撮影/望月浩彦