間もなく定期便から退役予定のJAL国内線の「ボーイング777-200ER」。この機には、JAL国内線屈指の"神席”があります。どのようなもので、どういった経緯で誕生したのでしょうか。

2002年8月に運航を開始

 JAL(日本航空)の国内線で使用されてきた「ボーイング777-200ER」が2023年11月12日をもって、定期旅客便から退役します。この機は20年ものあいだJALの国内・国際の主力機のひとつとして活躍したほか、近年では「コスパの高すぎる座席」をもつ“アタリ機”として多くの航空旅行ファンに親しまれてきました。どのようなものだったのでしょうか。


JALのボーイング777-200ERラスト1機「JA703J」(乗りものニュース編集部撮影)。

 ボーイング777は「ジャンボ・ジェット」こと747シリーズに代わるような形で、JALの大型主力機で運用されてきたモデルです。同社ではこれまで、標準型の777-200、胴体延長型の777-300、777-200をベースに航続距離を延長した777-200ER、そして胴体延長と航続距離延伸を図った777-300ERの4タイプを保有してきました。

 777-200ERは2002年8月に運航を開始。導入以来777-300ERとともに、長らく国際線をメインで担当してきました。

 国際線仕様機はフライト時間が長いことから、内装が国内線仕様機より豪華になっているのが一般的で、777-200ERも、フルフラットシートを特徴とするビジネスクラス「JAL SKY SUITE III」と、国内線仕様機より1席少ない、横2-4-3列のシート配置とすることで、足元や座席の前後間隔が広い「エコノミークラス」の2クラスを搭載しています。

 そうしたなか、2020年度末(2021年3月末)、おもに国内幹線を担当していた777-200・-300が退役します。この2タイプは2021年2月、搭載エンジンの問題により運航を停止しており、以来定期便への投入が見合わせとなっており、そのまま予定より前倒しで退役となった形です。

 そこで、本来777-200・-300が担当していた国内路線を777-200ERが担当することになったわけです。

777-200ERが「アタリ機」になった経緯

 JALの国内線には、3つの座席クラスが存在します。「国内線ファーストクラス」「クラスJ」「普通席」です。この中間クラスにあたる「クラスJ」は、JALのなかでも屈指の人気を誇る座席です。

「クラスJ」のサービス内容自体は普通席より少しドリンクの種類が増える程度ですが、普通席より広く快適なシートを、普通席運賃にプラス1000〜3000円(当日アップグレードの場合)で選ぶことができます。


JAL国内線「777-200ER」の機内(乗りものニュース編集部撮影)。

 777-200ERは、国際線の客室仕様をそのままに国内線へと転換されました。「エコノミークラス」は国内線では普通席扱いでしたが、ビジネスクラス「JAL SKY SUITE III」は国内線の「クラスJ」扱いとして運用していたのです。「クラスJ」は普通席に数千円単位の追加料金を払うことで利用できるアップグレード席ですが、この機では、それでフルフラット席を利用できたことが「コスパ最強座席」と呼ばれるゆえんです。

 今回777-200ERが退役することにより、JALで運用されている777シリーズは、長距離国際線向けの「777-300ER」を残すのみとなります。

 また、777-200ERが定常投入されていた国内幹線は今後、JALが2019年から導入を進めてきた最新鋭旅客機「エアバスA350-900」がおもに担当することになります。こちらの「クラスJ」はフルフラットシートこそありませんが、JAL国内線最新仕様の客室となっています。

 また、ビジネスクラスをそのまま転用していたことから777-200ERの「クラスJ」は26席しかなく、"神席”を確保するのには高いハードルがありましたが、A350-900の「クラスJ」は56〜94席に。「クラスJ」席の確保のしやすさという意味では、大きな改善が期待できます。

 なお、退役後の777-200ERラスト1機「JA703J」の最終便は、11月12日のJL916便(那覇18時00分発→羽田20時15分着)となる予定です。その後同機は12月に売却のための回送運航(フェリーフライト)を予定しており、同社ではこれをチャーター便として航空ファンを乗せる旅行商品を発売しています。