もし、子どもが体調不良になって保育園を休まなければならなくなったら……(写真:ucchie79/PIXTA)

来春の新入園に備えた保育園への「入園申し込み」がピークを迎えています。入園を希望する園のリストアップ、見学、申請書の入手を経た最終段階。認可保育園では来年1〜2月ごろに内定あるいは不承諾の通知が届く見込みです。

そんな新入園児を持つ親御さんが気になることの1つは、入園後に子どもが体調不良で保育園を休むかもしれなくなった場合の対策でしょう。今年は冬に流行するインフルエンザが春ごろから流行り出したり、ヘルパンギーナやプール熱などの乳幼児の感染症も例年以上に大流行したりしているため、「これ以上仕事を休めない」「有給休暇がなくなりそう」という保護者も多いのではないでしょうか。

「SOSを出せるところは多ければ多いほど○」と解説するのは『保育園一年生』の監修者である認定NPO法人フローレンス・会長の駒崎弘樹氏。どんな選択肢があるのでしょうか。本書から一部抜粋、再構成してお届けします。

どんな制度があるか?

まずは看護休暇です。看護休暇とは、働く親の就学前の子どもが病気やケガをしたときに取得できるもので、育児・介護休業法で定められた休暇です。子どもひとりにつき1年間で5日取得することができます。

次に、夫婦間の役割分担です。今は保育園の送迎を担うパパが増えていますが、発熱などで園からお迎え要請があったとき、対応するのは多くがママです(体感では8割以上でしょうか)。お互い働いているのに不平等にならないよう、入園前にルールを決めておくことをおすすめします。なし崩し的にならないよう、最初の話し合いが肝心です!

職場にも子どもの体調不良で休む可能性を伝えておくといいでしょう。突発的に休んでもスムーズに引き継げるよう、自分の仕事を「マニュアル化」「ドキュメント化」し、デスクのどこに何があるのかわかりやすくしておくこともセットです。

仕事を休めないことを想定し、病児保育に登録しておくのもひとつです。地域に利用できる病児保育があるか、事前登録が必要かなど調べておきましょう。自宅に病児保育シッターに来てもらうサービスについては、自治体の補助があったり、職場によってはこども家庭庁のベビーシッター券を使って割引額で利用できたりするので、ぜひ確認を。

「じいじ・ばあばレスキュー隊」ももちろん心強い味方です。いざというときにサポートをお願いできるか相談してみるといいでしょう。

このようにセーフティーネットは、ひとつではなく、幾重にも張っておくことが大切です。

病児保育には「施設型」「訪問型」の2タイプがあります。

子どもが保育園へ入園すると、突発的に体調を崩すことがしばしばあります。登園できる基準は園によって違いますが、発熱や下痢などの症状がある場合は預かってもらえないことがほとんどです。

ママやパパがその都度仕事を休んでみてあげられるといいのですが、現実的には100%対応することは難しいもの。そんなとき、親御さんに代わって専門のスタッフが病気の子どもを預かるのが「病児保育」です。

病児保育には大きく分けて2タイプがあり、サービス形態の違いで「施設型」と「訪問型」に分けられます。「施設型」は病児専用の保育室に預けるタイプ、「訪問型」は自宅に保育スタッフが訪れるタイプです。

行政が中心となって運営する病児保育は施設型が多く、医療機関に併設されているものと、保育園に併設されているものの2種類があります。

「病児」と「病後児」で保育対象を分ける場合も

一方、訪問型は、病児保育のプロを派遣するNPO法人や民間のベビーシッター会社などが担っているケースが多いです。保育者が自宅に来てくれてマンツーマンで子どもを見てくれるのが特徴です。

保育対象を「病児」と「病後児」で区別する場合もあります。自治体が管轄する病児保育では、病気の回復期に至っていない子どもの保育を「病児保育」、回復期に入っているものの集団保育に適さない子どもの保育を「病後児保育」としています。ただ、民間が運営する病児保育ではこのふたつを分けず、「病児保育」ということが多くなっています。

勤務先がこども家庭庁ベビーシッター券を導入していれば1日あたり最大4400円の割引で病児保育を利用できます。自治体によっては助成制度(東京都ベビーシッター利用支援事業など)もあります。ぜひチェックを!

施設型と訪問型、それぞれの特徴をまとめました。

施設型(医療機関併設型、保育園併設型)

<特徴>
家庭で保育できない病児・病後児を、病院や保育園に併設された「病児(病後児)保育室」で保育士や看護師など専門のスタッフが一時的にお世話をする。

<事業者>
主に自治体

<スタッフ>
・保育士:子ども約3人につき1人以上
・看護師等:子ども約10人につき1人以上

<料金>
1日2000円前後

<メリット>
・利用料金が安い
・在宅ワークの人も利用しやすい
・医療機関併設型は医療者が常駐していて安心

<デメリット>
・自宅から遠いと親子とも負担が大きい
・定員が少なくすぐ満員になることも
・利用するまでの要件が厳しいことも

訪問型のメリット、デメリットは?

訪問型

<特徴>
病児の自宅に専門のスタッフが訪れて保育を行う。事業者に依頼し所属するシッターが派遣される方法と、マッチングサイトを通じてシッターに直接依頼する方法がある。


<事業者>
主にNPO法人、ベビーシッター会社など

<スタッフ>
子ども1人に対し1人の保育スタッフを派遣(※サービスによる)

<料金>
サービスにより異なる

<メリット>
・病児を自宅外へ連れ出す必要がない
・マンツーマンで見てくれるので、子どもが楽しめる
・100%対応、受診可能などサービスの選択肢が幅広い

<デメリット>
・施設型に比べると高額
・信頼の置ける事業者を見極める力がより必要
・サービス対象エリアが限られる

(駒崎 弘樹 : 認定NPO法人フローレンス会長)