この記事をまとめると

■2023年の上半期で5台の新型車を公開したレクサス

■高価格帯のモデルだけではなくエントリーモデルも発表

■登録台数でメルセデス・ベンツを上まわっている

続々と新型車を投入するレクサス

 2023年にはさまざまな新型車が登場したが、レクサスは、ラインアップする車種数の割に新型車が多い。3月にはSUVの電気自動車となるRZ450eが発売された。4月には上級ミニバンのレクサスLMを上海モーターショーで発表している。6月にはコンパクトSUVのLBX、悪路向けSUVのGX、3列シートSUVのTXが世界初公開された。このなかでTXは、北米専用モデルとされている。

 このほか、一部改良も実施しており、3月にはNXとUX300e、6月にはLC、7月にはRXが変更を受けた。

 販売店に国内販売のスケジュールを尋ねると、レクサスLMは「10月末頃に受注を開始するだろう」と言う。LMには2列シート仕様と3列仕様があるが、最初に受注を開始するのは車内が豪華で価格も高い2列シートの4人乗りだ。LMはアルファード&ヴェルファイアをベースに開発されるが、レクサスとしては「アルファードの上級版」とは見られたくないだろう。4人乗りを先に投入して、新時代のリムジンであることを表現する。

 コンパクトSUVのLBXは、国内市場と交通環境に合った新型車だ。これも「10月末頃に受注を開始」して、おそらく価格がもっとも安いグレードは360万円前後に設定されるだろう。レクサスではサイズがもっとも小さく、求めやすい価格の車種になるわけだ。これは堅調に売れるが、最廉価グレードを400万3000円に設定するレクサスUXは、LBXにユーザーを奪われる可能性が高い。

 ここがプレミアムブランドの悩みどころだ。コンパクトで安価な車種を投入すると「300万円台でレクサスが買える!」と注目されて売れ行きも増えるが、上級車種の販売にはマイナスの影響が生じやすい。

 その後も求めやすいコンパクトな車種の投入を続けると、やがて上級ブランドとしての認知度まで下がってくる。コンパクトな車種でユーザー層を広げながら、なおかつ上級ブランドの位置付けを守ることが求められる。このことは、先に述べたLMを4人乗りから発売することにも通じる。

販売台数ベースで考えるとレクサスの勢いは凄い

 その意味でレクサスGXは、ブランドパワーを守る上級SUVだ。プラットフォームはホイールベース(前輪と後輪の間隔)の数値を含めてランドクルーザー250がベースとされるが、ランドクルーザー300やレクサスLXとも等しい。つまり悪路向けSUVの4車種は、共通のベースを持つことになる。

 その上で日本仕様の場合、ランドクルーザー250のパワーユニットは、直列4気筒の2.7リッターガソリンと2.8リッタークリーンディーゼルターボ。レクサスGXは、V型6気筒3.5リッターツインターボと直列4気筒2.4リッターターボハイブリッドという違いが生じる。この上級SUVのGXと、コンパクトなLBXをほぼ同時期に日本へ導入すると、販売促進を図りながらブランド力もバランス良く保てるわけだ。

 ちなみにメルセデスベンツの日本国内登録台数は、乗用車の場合、2023年1〜8月の1カ月平均が約4070台であった。レクサスは約8420台だから、メルセデスベンツを大幅に上まわり、2022年までの状況から逆転している。

 レクサスが今後の新型車導入により、この勢いを継続して保てるかが注目される。