救急車を追って緊急救命室にやって来た犬。飼い主が亡くなったことを知らず、10日間、その前で待ち続けた(画像は『The Dodo 2023年9月1日付「Loyal Dog Stares At Emergency Room Entrance For 10 Days, Hoping To See Her Human Again」(SUZETTE HALL)』のスクリーンショット)

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飼い主が亡くなったことを知らないまま10日間、病院の前で帰りを待ち続けた小さな犬がいる。犬は飼い主が搬送された緊急救命室のドアをじっと見つめていたそうで、健気な姿に多くの人が心震わせた。動物専門ニュースサイト『The Dodo』が伝えた。

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米カリフォルニア州コンプトンのマーティン・ルーサー・キング・ジュニア病院に8月中旬、病院の近くに住む男性が緊急搬送され、救急治療室に運ばれた。

そしてそんな男性を追うようにやって来たのが、のちに“ヒラリー(Hilary、1)”と名付けられたメス犬で、容体が優れない男性と一緒に中へ入ろうしたという。

犬の保護団体「ローガンズ・レガシー・ドッグ・レスキュー(Logan’s Legacy dog rescue)」の創設者シュゼット・ホールさん(Suzette Hall)は、当時のヒラリーについてこのように語った。

「男性は病院の近くに住んでいて、病院の警備員はヒラリーが救急車を追ってくるのを見ていたようです。そうして緊急治療室に入ろうとしたヒラリーは警備員に止められ、飼い主が現れるのをずっと待ち続けたのです。」

「ヒラリーは扉が開くたび、『飼い主ではないか』と確認していたようですが、待っていた男性が出てくることはありませんでした。」

飼い主の男性は亡くなってしまったそうで、病院のスタッフはヒラリーに餌を与え、なんとか保護しようと試みた。ところがヒラリーは人を寄せ付けず、緊急救命室のそばで飼い主をじっと待ち続けたという。

ところがそれから10日後のこと。カリフォルニア州には熱帯暴風雨警報が発令され、ヒラリーの衰弱し始めた体に強い雨が降り注いだ。

そうして呼ばれたのがシュゼットさんで、病院の近くに温かい餌を仕掛け、ヒラリーを保護することに成功したのだった。

実はヒラリーという名前は、カリフォルニア州に大雨をもたらした熱帯暴風雨「ヒラリー」からとったものだそうで、シュゼットさんは「ヒラリーは雨の中で眠り、飼い主を待ち続けたのです。本当に忠誠心の強い犬ですよ」と述べ、こう続けた。

「ヒラリーを保護した後、私は何度もギュッと抱きしめました。でも悲しいことに、ヒラリーは緊急救命室のドアをまっすぐに見つめていたのです。それはまるで『もうすぐ、大好きな飼い主が出てくるから…』と言っているようで、胸が締めつけられる思いでした。ヒラリーはきっと、飼い主を忘れることができなかったのでしょうね。」

幸いなことにヒラリーはその後、カミノ・ペット病院(Camino Pet Hospital)のケアのもと少しずつ回復。シュゼットさんは日本時間の9月2日、Facebookで次のように報告した。

「ヒラリーは今日、一時的に預かってくれるママのところに行きました。ローラ・イングルさん(Laura Engel)ありがとう…。ヒラリー、あなたの折れた心はきっと癒されることでしょう。大好きよ!」

そしてシュゼットさんのFacebookには、「心が痛む」「保護してくれてありがとう」「ヒラリーの瞳には悲しさを感じてしまう。幸せになって欲しい」「ぜひ引き取りたい」「たくさんハグしてあげて!」「きっと亡くなった飼い主が見守ってくれているよ」といったコメントが多数寄せられた。

ちなみに忠犬ハチ公のように、他界した飼い主を待ち続ける犬は世界中から報告されており、中国では2020年、入院後5日で亡くなった飼い主を病院内で3か月も待ち続けた犬が話題になった。

画像は『The Dodo 2023年9月1日付「Loyal Dog Stares At Emergency Room Entrance For 10 Days, Hoping To See Her Human Again」(SUZETTE HALL)』『Suzette Hall 2023年9月2日付Facebook「Sweet Hilary」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 A.C.)