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 かつてブンデスリーガやプレミアリーグでクラブの監督を務め、そしてスポーツディレクターやアドバイザーなど、サッカービジネスに多角的に取り組んできた、ラルフ・ラングニック氏。現在は自身初となる代表監督をオーストリアで務めているところであり、これから来夏に控える母国ドイツで開催のユーロ出場に向けた準備を進めていくことになる。そんな同氏からみてこの夏の代表選手の移籍状況は「どれも誤った方向にあるとは思わないね」と評価。例えばマルコ・アルナウトヴィッチのインテル移籍は「大きな後押しになる。彼と親密になっていたしとても嬉しいよ。3大会出場の中で多くの出場機会がまっている」と述べている。

 またバイエルンに移籍したコンラッド・ライマーについては、確かに週末は右SBなど本職とは異なる場所での需要が見られるとはいえ「トゥヘル監督の発言によれば、フィジカルや忍耐強さ、アグレッシブさを求めている。そこでライマーが反故されるとしたら大きな矛盾だろう」と期待。ドルトムントに移籍したマルセル・サビッツァも、現在は苦労しているところがみられるが「心配はいらないし、一朝一夕で物事がうまく行くものでもない。ただ今のボランチの役割として私は彼を見ていないがね」とコメント。いずれにしてもオーストリア代表の中盤ではサビッツァ不在であっても、ニコラス・ザイヴァルト、ザヴエル・シュラーガー、フロリアン・グリリッチュと豊富なオプションが控えているところだ。

 一方でこの夏に移籍市場を席巻しているサウジアラビアにはオーストリア代表選手の移籍は現時点では行われていないが、ラングニック氏は「私があそこに移籍することを薦めるようなことはしないよ」としつつ、自身もまたサウジアラビアで監督に就任することも想像できないとした上で、ただその一方で人権面についてあまり強く論じるべきではないとの見方も強調。「モラル的な部分について指摘する前に、まずは自分の中で仮に自分があの立場だったらと自答する必要があるように思うよ。注意すべきテーマだ」とコメント。「ロシアからの金銭面での呼びかけに、戦前だがウクライナからに渡った選手もいたし、民主主義国家とはいえないという意味ではかつて中国に渡った選手もいた」

 そして今回サウジアラビアのプロリーグでプレーするならば、選手たちはそれぞれこれまでの「10倍、いや20倍」の収入を手にすることが可能であり、かつてマンチェスターUで指揮した同氏は「世界で最も魅力的なクラブの1つである、リヴァプールでプレーする」モハメド・サラーの例にあげ、間も無くサウジアラビアに渡ると見られる世界的スターが「なぜそういうことになるのか。すべきではないなどと言うべきではない」と主張。なかには手にしたお金を母国に送金し、現地の人々へのサポートとして還元している選手もいることにも目を向けるよう促した。