「エンジェルリスト」を立ち上げるなどして、シリコンバレーの「最重要思想家」とも言われるナヴァル・ラヴィカントが人生で大事にしている言葉とは(写真はイメージ。写真:Efurorstudio/PIXTA)

人生で何かに迷うことは誰にもあるだろう。「そんなとき、選択肢は3つある。変えること、受け入れること、そしてそのままにすること」。そう述べるのは、シリコンバレーの「最重要思想家」として有名なナヴァル・ラヴィカントで、起業家と投資家を結びつける「エンジェルリスト」の共同創設者兼CEOだ。

「良くない選択肢は、変えようとして変えないこと、そのままにしようとしてそうしないこと、受け入れようとして受け入れないこと」だと述べるナヴァルが人生で大事にしている指針はなんだろうか。

『「週4時間」だけ働く。』の著者として知られるティム・フェリスが、現代のパイオニア106人に成功の秘密を聞きまくってまとめた本『巨神のツール 俺の生存戦略』の『知性編』の中から、紹介しよう。

ナヴァルとティムの最初の出会い

(ティムから)ナヴァル・ラヴィカントは、起業家と投資家を結びつけるSNS、エンジェルリストの共同創設者兼CEOだ。


ナヴァルはエンジェル投資家としても積極的に活動していて、これまでにユニコーン(評価額が10億ドルを超える非上場のベンチャー企業)を含め、100以上の企業に投資してきた。

起業に関するアドバイスを求めるなら、彼が最も適任だろう。

ナヴァルと私が初めて会ったのは何年も前のこと。

サンフランシスコのコーヒーショップで、私が当時のナヴァルのガールフレンド(そうとは知らなかった)を口説こうとしたからだ。

彼は満面の笑みでゆっくり歩いてきて、私に自己紹介した。

彼の兄カマル・ラヴィカントは、IT投資から「引退」するように私を説得した。

ナヴァル:人生のどの場面でも、選択肢は3つしかない。いや、3つある、と言ってもいいかな。変えること、受け入れること、そしてそのままにすること。

自分の気分とパターンを予測するもの

ナヴァル:良くない選択肢は、変えようとして変えないこと、そのままにしようとしてそうしないこと、受け入れようとして受け入れないこと。

私たちの苦悩の大半は、そうした葛藤や嫌悪が原因だ。私の頭の中で最もよくこだまする言葉は、受け入れろ、だ。

「5匹のチンパンジーの理論」を知ってるかな?

動物学では、どのようなチンパンジーでも、彼らが最も多く行動をともにする5匹のチンパンジーを見れば、その気分と行動のパターンを予測することができる。

君も自分に適した5匹のチンパンジーを慎重に選ぶことだ。

物理学とロシア人のギャングから学んだこと

ナヴァル:誠実であることの大切さをいろんな場所で学んだ。

物理学について言うと、子どもの頃、私は物理学者になりたくて、リチャード・ファインマンに傾倒していた。

技術的なものもそうでないものも、ファインマンに関する本をできるだけたくさん読んだ。

彼はこう言っていた。「決して自分をだますな。自分というのは最もだましやすい人なのだ」

物理学の基礎知識はとても重要だ。物理学の世界では、真実を口にしなければならないから。妥協したり、交渉したり、八方を丸く収めたりできない。

方程式が間違っていたら、何事もうまくいかない。真実は、総意や人気で決まるものではない──その逆であることが多い。

だから、人生においても科学のバックグラウンドは重要だと思っている。

2番目はロシア人のギャングからだった。

私はニューヨークの荒っぽい子どもたちに囲まれて育った。実際に、ロシア人のギャングだった人もいた。


ナヴァル:ギャングの1人がほかの仲間から殺すぞと脅されている場面に出くわしたことがあった。

脅されていた人は逃げて隠れたんだけれど、「いや、殺そうとしているわけじゃない」という約束を敵から取り付けて、最終的に敵を自分の家に入れたんだ。

彼らの間では、誠実は美徳だった。お互いを殺そうとしているときでも、相手の言葉を当然のこととして受け入れようとした。何よりも大切なことだった。

ギャング内の抗争の中で見た誠実さだったけど、私は、これはあらゆる人間関係に大切なことだと悟った。

ナヴァルが大事にしている言葉

(ティムから)人生の参考にしたりよく思い出したりする名言は?と聞くと、彼は次のように答えてくれた。すべて金言だ。じっくり読んで理解してほしい。

ナヴァル:すべてが引用というわけではなく、多くは自分のために考えたものだ。

・何よりも、今を大切にする
・希望は苦しみの種だ(仏陀)
・怒りとは、ほかの人に投げつけようとして熱い石炭を手に持っているようなものだ(仏教の格言)
・誰かと生涯一緒に働くことができないのなら、1日だってその人と一緒に働くことはできない
・読書(学習)とは究極のメタスキルであり、ほかの何物にも代えがたい
・人生の本当の価値は、異なる関心を歩み寄ることから生まれる
・時間をかけるのではなく、真心をこめて信頼を勝ち得る
・努力の99%は無駄になる
・常に誠実に。いつでも誠実で前向きであることは可能だ
・褒めるときは名指しし、批判するときは不特定多数に向ける(ウォーレン・バフェット)
・真実には予測力がある
・あらゆる考えに注目する(「なんでこんな風に考えたのか」と常に自問する)
・器の大きさは、悩みから生まれる
・愛は与えられるもの、決して受け取るものではない

人間は取るに足りない存在

ティム:不朽の名声を求めない理由は?

ナヴァル:ほんのわずかでも科学をかじったら、実用的な意味で、人間は取るに足りないものであることに気づくだろう。


基本的に、超巨大な多元的宇宙の中の、巨大な銀河系の中の、発展の遅れた小さな星を周回する小さな岩の上のサルなんだ。

人間の行動は長く続かない。最終的に自分は消えてしまい、自分の仕事は消えてしまい、自分の子どもたちも、自分の考えも、この地球も、太陽ですら消えてしまう。……すべてなくなってしまう」

来世を信じないのなら、自分の命は実に短くて貴重だと認識しなければならない。

不幸に過ごすなんてありえない。みじめに過ごすなんてありえない。宇宙は500億年あるいはそれ以上長く存在するかもしれないが、僕たちはそのうちの70年しか与えられていない。

(ティム・フェリス : 起業家、作家)