畳みかけるようにシングルを並べたオープニングで、ロックファンたちは関ジャニ∞の世界に巻き込まれたようだ。『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)などで彼らを知る人は、恐らく身近に感じている部分もあるだろう。その親近感とアイドルが奏でる音への好奇心は、あっという間に関ジャニ∞への愛溢れる視線に変わった。

そして、安田の曲紹介で、1年前のインスタライブで演奏した「ふりむくわけにはいかないぜ」を披露。この場で演奏することで、本当の意味でのリベンジが果たされたのではないだろうか。かつ、この曲の提供者(作詞・作曲/山口隆)である、サンボマスターと同じ日に、同じGRASS STAGEに立つことに、偶然を超えたストーリーを感じずにはいられない。そんなサンボ節と関ジャニ∞の化学反応は、さらにオーディエンスを勢いづけた。

「象」のイントロでは会場の熱気を体中で受け止め、歌うようにギターを奏でる安田。様々なバンドマンとも交流がある彼だが、その全員と言っていいほど「安田くんは、本当にギターが大好きな人」と表現する。心底ギターを、バンドサウンドを愛する心が滲み出た音色こそ、安田のギタリストとしての魅力でもある。また、高橋優からの提供曲を演奏する関ジャニ∞からは、刺すような激しさと真っ直ぐな温かさが放たれていた。

そして、静まった会場に色っぽくグルーヴする丸山のベースの音が響く。そして、一瞬間をおくとスイッチを切り替え、スラップベースの軽快な音を慣らした。丸山の華のあるベースは披露するたび、リスナーに驚きを与え続けている。そこに、絶妙なタイミングで重なる村上のオルガンの音色と、横山の弾けるようなトランペットに、炎の特効。「NOROSHI」の重くエネルギーのこもったサウンドが、オーディエンスの体の奥まで響いた。

激しいビートを刻む2曲を、がっしりと支えていたのが大倉のドラムだ。様々なバンドマンからも評価される彼の音は、天性のリズム感だけでなく、タイトさや力強さも兼ね備えている。あれだけのドラムを叩きながら、さらりとボーカルもこなしてしまうところに、そのポテンシャルの高さを伺い知ることができるのではないだろうか。

ここで、5人が楽器を置いてステージの前へ。安田の「(距離は)離れてるかもしれんけど、心に届けるからね!」という言葉で始まったのは「オモイダマ」だ。情熱の中に温かさを携えた歌声が、千葉市蘇我スポーツ公園を突き抜けていった。その楽曲終わり、村上が「来年20周年を迎えさせていただくのですが」と話し始めると、会場から祝福の拍手が贈られる。村上はさらに「初めての経験がだんだんなくなってくるんですよ。その中で、19年目にして初体験(したロッキンのステージ)にお付き合いいただいて、ありがとうございます!」と客席に感謝を伝えた。

いよいよ、アクトは後半戦。どこか青春の甘酸っぱさを感じるメロディと歌詞が耳に残る「喝采」が流れると、少しずつ暮れ始めた空が演出のひとつとなり、よりエモーショナルな空間を作り出す。そして、10代を思い出させるストレートなバンドサウンドが清々しい「BOY’23」は、村上の繊細なピアノから始まった。鍵盤を弾く人の多くは幼いころから触れていることが、ある種デフォルトだが、彼は大人になって、しかも忙しい仕事の合間を縫って、自分の体にピアノを浸透させてきた。長年かけて真摯に向き合い、気づけば村上にしかない音を表現できる楽器になっていたのだ。