by Kārlis Dambrāns

Qualcommが、ヨーロッパのテクノロジー企業や自動車部品メーカーら4社と合同で、Armの対抗馬になると目されているオープンソースアーキテクチャ「RISC-V」を採用した製品を開発する新企業を設立することを発表しました。

Leading Semiconductor Industry Players Join Forces to Accelerate RISC-V | Qualcomm

https://www.qualcomm.com/news/releases/2023/08/leading-semiconductor-industry-players-join-forces-to-accelerate

Qualcomm-one of Arm’s biggest customers-starts a RISC-V joint venture | Ars Technica

https://arstechnica.com/gadgets/2023/08/qualcomm-one-of-arms-biggest-customers-starts-a-risc-v-joint-venture/



Qualcomm, NXP Team Up to Develop Rival to Arm Chip Standard - Bloomberg

https://www.bloomberg.com/news/articles/2023-08-04/qualcomm-nxp-and-others-team-up-to-develop-arm-rival-chip-tech



Qualcommは2023年8月4日のプレスリリースで、ドイツの自動車部品メーカー・Robert Bosch GmbHおよび産業向け半導体大手のInfineon Technologies AG、ノルウェーの半導体企業のNordic Semiconductor、オランダの半導体企業のNXP Semiconductorsと共同で、次世代ハードウェアを開発しRISC-Vを世界的に促進することを目的とした会社に出資することを発表しました。



ドイツに設立されるこの新企業の名前はまだ決まっていませんが、Qualcommは「オープンソースのRISC-Vアーキテクチャに基づく将来の製品の商業化を加速することを目指しています。最初の製品の焦点は自動車ですが、最終的にはモバイルとIoTを含むように拡張されます」と説明しました。

海外メディアのBloombergは、この取り組みの根底には「ソフトバンク傘下のArmへの過度な依存に対する世界のチップメーカーの懸念がある」と指摘しました。

また、Qualcommは多くのモバイル機器に採用されているArmコア搭載SoCのSnapdragonシリーズを手がけており、Arm最大の顧客のひとつと数えられていますが、2022年にはArmがQualcommをライセンス契約違反と商標権侵害で提訴するなど、両社の間には溝もあります。

さらに、Qualcommは2023年第3四半期の決算短信で、携帯端末向けチップの売上高が前年同期から25%減少し、人員削減の計画も検討していると報告しており、業績が振るわないことから新しい収益の柱の確保に乗り出しているとの見方もあります。



IT系ニュースサイトのArs Technicaは、「メーカーはオープンソースライセンスのRISC-Vを採用することで、Armの手数料を回避できる可能性があります。また、RISC-Vは不安定なハードウェアパートナーとなりつつあるArmの問題から身を守る手段でもあります」と述べて、RISC-Vへの注力はリスク回避姿勢の表れであるとの見解を示しました。

RISC-Vはアメリカのカリフォルニア大学バークレー校で開発されましたが、RISC-V財団は2019年11月に米中貿易戦争への懸念から本拠をスイスに移転し、ブランド名もアメリカの政治的影響を受けないことを示す「RISC-V International」へと改められました。これにより、Arm最大の市場である中国のハイテク企業が軸足をRISC-Vに移しているとArs Technicaは指摘しています。