男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。

出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。

-あの時、彼(彼女)は何を思っていたの…?

誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。

さて、今週の質問【Q】は?

▶前回:食事会では盛り上がったのに、そのあと個別の連絡やデートの誘いがない…原因は?




いつから、こうなってしまったのだろうか。私は結婚前に、気がつけなかったのだろうか…。

「晴翔、今月の生活費が少し足りないから、もう少しもらってもいい?」
「え?何で?今月は既に8万渡したよね?」
「それじゃ足りないよ…」

外資系投資銀行勤めの年収5,000万の晴翔と結婚して、私の人生は完全に勝ち組だと思っていた。

でも現実は、そう甘くはない。

家族カードは渡されているものの、出産を機に仕事を辞めてしまった私の収入源は夫から渡される生活費のみ。でも晴翔は、想像以上に財布の紐が固かった。晴翔からもらえる生活費が、とにかく少なすぎる。

― あんなに稼いでいるのに、何で私に渡す額はたったこれだけなの…?

夫に対し、ここ数年鬱憤と疑惑の念が募っている。


Q1:結婚前からあった予兆とは?


晴翔と出会ったのは、友人が開催してくれた食事会だった。その時、晴翔は33歳で、私は27歳。お互い、結構派手に遊んでいたほうだと思う。

当時の私は芸能の仕事をかじっており、生活は不安定だった。

晴翔と出会った時、私にはまだ年上の彼氏がいた。実を言うとかなりその年上の彼氏に、援助してもらっていた。

東京で、女ひとりが生きるにはお金がかかる。

彼が住んでいた代官山の家賃70万の家に住み、食事はすべて彼持ち。生活費はほとんどかからなかった。

でも、彼とは結婚できない事情があった。27歳になり、焦っていた私の目の前に現れたのが晴翔だった。

最初から、晴翔が私に気があることは感じていた。

「良ければ、今度二人で会わない?」

帰り際、彼からそう誘われた時、私の本能が働いた。「彼を捕まえろ」と…。

その直感が当たったのか外れたのかはわからないけれど、彼は初デートから、一人5万以上はする予約困難店を予約してくれていた。




「素敵…」

思わず、感嘆の声が漏れる。

「綾乃ちゃんは何飲む?」
「どうしようかな…。ワインをいただいてもいいですか?」
「もちろん。何がいい?」

悩んでいると、晴翔がスッと店員さんを呼んでこう伝えているのが聞こえてしまった。

「このモンラッシェ、ボトルでください」

ちらっとメニューを見たけれど、10万ほどするワインだった。それをさりげなく、しかもかなりスマートに頼んでくれた晴翔。これはもう、神様が私にくれたチャンスだと思った。

「晴翔さんって、どういう女性が好きなんですか?」
「何かを頑張っている人かな。自分にないものを持っているとか。綾乃ちゃんは?」
「わかります。私は尊敬できる人です」

私に気のある晴翔と、このチャンスを逃したくない私。関係が進むのは、時間の問題だった。

結局この後、3ヶ月ほどかかって彼氏と別れると(いや、少しかぶっている間もあったけれど)、私は晴翔と交際を開始した。そして交際1年半後。晴翔からプロポーズをしてくれた。




「綾乃、結婚してほしい」

ハワイのクルーザーでのプロポーズは本当に夢のようで、2カラットの指輪がサンセットのオレンジ色の光に反射し、輝いていた。

「…はい。もちろんです」

しかもその後もとんとん拍子に進み、入籍後すぐに私の妊娠が発覚。それと同時に、仕事もほぼ休業状態に入った。

「僕たちの子ども、楽しみだね」
「うん。絶対可愛いね」

こうして私の人生は、すべてが完璧のように見えた。

でも出産直後はとにかく忙しくて子育てに追われ、気がついていなかった。時代がコロナ禍だったということもあり、出かけることもあまりなく、お金は出ていかなかったから。

しかし子育てが少し落ち着き、普通の生活を取り戻した頃。私は気がついてしまった。晴翔が私への生活費を、渋り始めていることに。


Q2:夫が妻に対して思っているコトは?


モデル時代からの友達で、同じ歳の子どもを持つママ友である美亜と「グランドハイアット東京」の『オーク ドア』でランチをした時のことだった。

美亜のベビーカーには、無造作にエルメスのバッグがかかっている。




「そんな色、持ってた?」
「これ?うん。旦那がこの前ホワイトデーの時に買ってくれたの」
「ホワイトデーで!?」

私へのお返しは、花束だけだった。美亜の旦那さまは経営者だけれど、たぶん稼ぎはうちと同じくらいなはず…。

「美亜の旦那さんは、優しくていいなぁ」
「何を言ってるのよ。綾乃の旦那さんのほうが、うちより稼いでいるでしょ(笑)」
「全然買ってくれないよ」
「そうなの?でもカードはもらってるでしょ?」

家族カードはもらっている。基本的に食費や生活必要品などはそのカードを使っていい。家賃や教育費はもちろん晴翔が支払っているけれど、私がその他自由に使えるお金としてもらえるのは月8〜10万程度だった。

「全然足りないよね、それじゃ」
「でもこのランチ代とかはそのカードで支払ってもいいんでしょ?だったらいいじゃない」

人ごとだと思って、お気楽な美亜。東京で生きていくのに10万円じゃ全然足りない。

美亜のように自由に使えるお金が少なすぎると気がついた私は、その夜、晴翔に直談判することにした。




「晴翔。生活費のことなんだけど…。やっぱり月8万じゃ足りないよ」
「え…なんで?カードで色々支払っているうえ、まだ足りないの?」
「ヘアサロンとネイル行って、洋服なんて買おうと思ったらもう終わっちゃうよ。私は今仕事をしていないから、晴翔頼りなのはわかるでしょ?」

すると、晴翔は少し黙って何かを考えている。でも、表情はかなり硬い。

「俺としては、結構渡しているほうだと思うけど。それなら綾乃も働けばいいじゃん。保育園だけでなく、シッターさんを雇うことにNGとは一度も言ったことないと思うけど」

晴翔の言葉に、私は思わず返答に詰まる。でも専業主婦だからといって暇なわけではない。

日中は家事をしたり、子どもの送り迎えをしたり、そうしているうちにもう夜ご飯の準備の時間になっている。こう見えて、かなり忙しい。

「そんなの無理だよ。家事とかやることたくさんあって、忙しいから」
「忙しい?日中あんなにも時間あるのに、綾乃は何をやってるの?」

さすがに、この言葉にはカチンときた。私は妻として母として、最大限のサポートをしている。それなのに、こんな言い方はないだろう。

「何それ、最低なんだけど」

結局この喧嘩はヒートアップし、ここから2週間私たちは口を利かなかった。でもそうだからといって離婚ができるわけもなく、結局私はお小遣い8万で泣き寝入りのままだ。

― なんでウチの夫はこんなにケチなんだろう?

SNSでキラキラしている他の主婦の人たちの投稿を見るたびに、私は何とも言えない思いに潰されそうになっている。

▶前回:食事会では盛り上がったのに、そのあと個別の連絡やデートの誘いがない…原因は?

▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由

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夫が専業主婦の妻に対してずっと思っていること