「腎盂尿管がん」の症状・原因はご存知ですか?ステージについても解説!

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腎盂尿管がんという病名を聞いたことがあるでしょうか。腎盂尿管がんは膀胱がんに比べると発生率が低いがんです。

そのため知られていないかもしれませんが、血尿や腹痛・腰痛は腎盂尿管がんのサインかもしれません。

多くの病気でこうした症状が出るため、腎盂尿管がんと決めつけられませんが疑わない理由にもなりません。

腎盂尿管がんの症状・原因・検査・治療方法・ステージ・予後までを詳しく解説しますので読んでいただけると幸いです。

腎盂尿管がんの症状と原因

腎盂尿管がんとはどのような病気ですか?

腎盂と尿管には腎臓で造られた尿を膀胱に運ぶ役目があります。腎盂とは腎臓と尿管が接続している部分で、尿管が尿を膀胱に送り出すためのペースメーカーです。
腎盂と尿路には内腔に尿路上皮と呼ばれる粘膜があり、腎盂の尿路上皮に発生するがんが腎盂がん、尿管の尿路上皮に発生するがんが尿管がんです。また腎盂がんと尿管がんはひとまとめに「腎盂尿管がん」とも呼ばれます。
腎盂尿管がんは尿路上皮に多発的に発生しやすいがんで、進行するまで明らかな自覚症状がないため早期発見が難しいとされています。

腎盂尿管がんの症状を教えてください。

腎盂尿管がんでは主に以下の症状が出ます。

肉眼で見える血尿

腰・背中・脇腹の痛み

血尿と聞くと痛いのではと思う方が多いかもしれませんが、腎盂尿管がんの血尿は排尿時に痛みを伴いません。排尿時の痛みや頻尿が発生するのは稀なケースです。
腫瘍が大きくなり尿管を塞ぎ、尿が腎臓にたまった状態(水腎症といいます)になると、腰・背中・脇腹に痛みが出る場合があります。痛みは止んだり出たりを繰り返しますが、最終的には痛みを感じなくなってしまう点には注意が必要です。

初期症状・末期症状はありますか?

腎盂尿管がんは自覚症状が少ない病気です。自覚できる初期症状はほとんどありませんが、健康診断や人間ドックの尿検査で潜血反応が出る場合があります。この潜血反応が唯一の初期症状といってもいいでしょう。
腎盂尿管がんの末期には腫瘍がある部分に痛みが発生します。また倦怠感が強くなり食欲が落ち体重が減り衰弱し、次第に意識が朦朧とした状態になり死に至ります。

発症の原因を教えてください。

腎盂尿管がん発症の代表的なリスク因子は喫煙・フェナセチン・ベンジンやβナフタレンなどの特定芳香族アミンとされています。これらのリスク因子の中でも最もハイリスクなのが喫煙です。
喫煙者の腎盂尿管がんのリスクは非喫煙者の3倍で、喫煙歴45年以上の喫煙者では7.2倍になります。フェナセチンは過去に解熱・鎮痛剤に使用されていましたが、がんを誘発するリスク因子だと分かり使用されなくなったのでローリスクです。
特定芳香族アミンによる発がんには7年以上の曝露歴が必要で、発がんするまでの潜伏期間は20年以上といわれています。曝露とは食べる・飲む・吸い込むなどして体内に入れることを指し、職業的な理由がない限り特定芳香族アミンを7年以上も曝露する人は少ないでしょう。

腎盂尿管がんの検査・治療・ステージ

腎盂尿管がんは尿検査でわかりますか?

腎盂尿管がんの検査に尿検査がありますが、尿検査だけでは腎盂尿管がんと診断できません。尿検査で尿に潜血があれば腎盂尿管がんの疑いがあります。
尿細胞診でがん細胞があれば泌尿器官にがんの所見ありと診断できますが部位の特定まではできません。また尿細胞診で所見なしと診断されても尿の中にがん細胞がないだけで、小さな腎盂尿管がんが発生している可能性があります。
尿検査は本格的な検査の前の予備的・補助的な検査だと考えてください。

他にどのような検査をするのか教えてください。

尿検査以外の検査は必要に応じて以下を実施します。

腹部超音波検査

CT検査、胸部X線検査、骨シンチグラフィ

膀胱鏡検査

尿細胞診検査

排泄性腎盂造影

逆行性腎盂造影

尿管鏡検査

通常、はじめに腹部超音波検査で腎盂内のがん・水腎症・リンパ節への転移の有無を調べます。膀胱鏡検査は内視鏡検査の一種です。泌尿器のがんでは膀胱がんが一番多いため、尿検査でがんの疑いがあると膀胱から調べ始めます
排泄性腎盂造影は造影剤を投与しX線撮影を行う検査です。腎盂尿管がんでは9割以上のケースで尿の流れに異常が見られるため、この検査で尿の流れを詳しく調べます。
ここまで検査して腎盂尿管がんの疑いがある場合は、逆行性腎盂造影・尿管鏡検査・CT検査・胸部X線検査・骨シンチグラフィといったさらに詳しい検査へと進みます。

腎盂尿管がんの治療はどのように行うのでしょうか?

腎盂尿管がんは進行の度合いによって治療方法が異なります。尿路上皮だけにがんがとどまりリンパ節や他の臓器に転移がない場合は外科的手術でがんを切除します。一般的に切除の対象は膀胱壁の一部と尿管・腎盂・腎臓です。
また浸潤している場合は抗がん剤による化学療法でがんを小さくしてから手術します。リンパ節や他の臓器に転移がある場合は、手術ではなく抗がん剤による化学療法になります。
がんの治療には放射線療法もありますが、腎盂尿管がんには効果が少ないため実施されるケースは少ないでしょう。

腎盂尿管がんのステージについて教えてください。

腎盂尿管がんのステージはがんの広がりと転移により「0a」から「Ⅳ」までに分類され、数字が大きくなるほど進行しています。
順を追って説明すると「0a」「0is」は腎盂尿管がんの初期段階です。「0a」はがんが粘膜だけにとどまり転移がなく、「0is」は上皮内にがんがとどまり転移がない状態です。
「Ⅰ」はがんが腎盂や尿管の上皮の下の結合組織に広がっていますが転移はありません。「Ⅱ」はがんが腎盂や尿管の粘膜を越え筋肉の層まで広がっていますが転移なしです。
「Ⅲ」は腎盂や尿管の筋肉層を越え外側の脂肪まで広がっていますが転移はありません。「Ⅳ」はリンパ節や他の臓器に転移がある状態です。
一般的に手術できるのは「0a」から「Ⅲ」までで、「Ⅳ」では抗がん剤治療や痛みを和らげる緩和治療を行います。

腎盂尿管がんの転移と予後

腎盂尿管がんは治りますか?

腎盂尿管がんの5年生存率は全ステージを合わせると約48パーセント、ステージⅠに限ると約85パーセントです。この数値から早期発見・早期治療で寛解が望める病気といえますが、発見が遅れると生存率は低くなります。
しかも腎盂尿管がんは自覚できる初期症状がほとんどないため早期発見が難しい病気でもあります。尿検査で潜血があれば早期に腎盂尿管がんを疑えますので、定期的な健診を受けることが大切です。

腎盂尿管がんは転移しますか?

腎盂尿管がんは腎盂や尿管の壁が薄いため近隣の臓器に転移しやすいがんで、特に進行がんの場合は転移しやすいとされています。そのため腎盂尿管がんの手術では、腎臓から膀胱壁の一部も含めた腎尿管全摘と膀胱部分切除を行うのが一般的です。
転移ではありませんが、腎盂尿管がんになると膀胱にがんが発生しやすいという特徴があります。

腎盂尿管がんの治療後について教えてください。

腎盂尿管がんの治療後は経過を観察するための定期的な検査が必要です。CT検査で転移がないか、また膀胱鏡検査で膀胱内への再発がないかの確認などを行います。
腎盂尿管がんの術後の日常生活では適切な水分を摂取することが大切です。水分制限がないか、適切な水分量はどの程度かなどを担当医師に確認してください。
また腎臓の機能に問題がなければ特別な食事制限はありませんので、消化のよいものを規則正しく食べましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

腎盂尿管がんは早期発見と早期治療が大切です。血尿などの自覚症状が出た場合は速やかに検査を受けてください。
また尿の検査は早期発見につながりますので、特に不調がなくても定期的に尿検査を含んだ健康診断を受けることをおすすめします。

編集部まとめ


先生のお話から腎盂尿管がんは初期症状に自覚がないことが分かりました。

血尿・腹痛・腰痛といった自覚症状が出て病院に行く頃には、ステージが進んでしまっている可能性も高いと考えられます。

早期発見と早期治療で寛解が望めますし、生存率も高くなります。また腎盂尿管がんだけではなく、どのような病気も早期発見が大切です。

面倒かもしれませんが定期的な健康診断を受けましょう。

参考文献

腎盂・尿管がん(じんう・にょうかんがん)

終末期がん患者に出現する症状(日本終末期ケア協会)