「メビウス症候群」の症状・原因・日常生活で注意することはご存知ですか?
メビウス症候群という病気をご存じでしょうか。メビウス症候群とは、主に先天性の顔面麻痺や外転筋麻痺を発症する病気のことです。
脳神経の病気であり、表情・呼吸・食事などへの影響が出てくる可能性があります。
日本では8万人に1人が発症するとされ、指定難病の1つです。遺伝・胎児期の異常などが疑われていますが、はっきりした原因はわかっていないのが現状です。
一般の方には馴染みのない難病かもしれませんが、メビウス症候群は多くの場合、突然変異的に発症します。
この記事ではメビウス症候群の症状・原因・診断・治療方法などについて解説します。メビウス症候群への理解を深めていただければ幸いです。
メビウス症候群の原因や症状
メビウス症候群は先天性の病気ですか?
冒頭で述べたように、メビウス症候群は先天性です。主に顔面神経麻痺と外転神経麻痺を発症する病気になります。外転神経麻痺とは、眼球の筋肉が麻痺してしまい、左右の眼がそれぞれ違う方向を向いている症状のことです。基本的に進行しない病気とされています。また後発的に発症するケースは確認されていません。
原因はなんですか?
メビウス症候群は先天性のため、遺伝や胎児期の血液供給不足などが原因として考えられています。しかしながらメビウス症候群のほとんどは突然変異的に発症し、家族に同じ症例は見られないことから、遺伝の可能性は少ないと考えられています。ただし胎児期における血液供給不足に関しては相関するデータが多数報告されており、現時点においては一番有力な発症原因です。
症状を教えてください。
メビウス症候群では顔面麻痺と外転神経麻痺が起こります。顔面麻痺には表情が思うようにつくれないなどの症状があります。また、意外かもしれませんが、涙が流れない・口を開けにくいのも顔面麻痺の症状です。さらに症状がひどい場合だと、呼吸困難などの影響も懸念されます。外転神経麻痺は一般の方には聞きなれない言葉かもしれませんが、基本的に「眼」に関する麻痺です。主に眼を外側に向けられない状態です。両方の眼に起こるのが多いですが、片側のみに症状がみられるケースもあります。その場合、両目を平行に動かせない状態になります。一般的に「斜視」と呼ばれる症状に見た目は近いです。
遺伝することはありますか?
先述したように、原因の1つとして「遺伝」は考えられていますが、今のところ有力なエビデンスは報告されていません。ただし遺伝子変異の可能性も考えられており、原因究明のための遺伝子研究はされています。また、脳神経の病気であることから小脳・脳幹などの発達に何らかの異常があるのではないかとも考えられており、遺伝説と併せて相関関係の有無が研究されています。
メビウス症候群の診断や治療方法
メビウス症候群はどのように診断されますか?
メビウス症候群の診断は基本的に対面での観察により行われます。その診断基準としては、先天的な顔面麻痺・外転神経麻痺の有無が重要なポイントです。主に顔面への接触に対する反応・目標を観察するときの目の動き・表情などで判別します。そのほか、呼吸困難・嚥下困難などの症状の有無も判断基準として重要な項目です。なお、メビウス症候群は脳神経の病気であり、12本ある脳神経のうち第6・第7神経の異常が確認されることが多い病気です。これら脳神経の異常の有無も診断基準としては重要なポイントとなります。
治療する方法はありますか?
メビウス症候群における治療法は未だ確立されていません。そのため日常生活への支障を最低限に抑えるための対症療法的な治療を行います。具体的には呼吸困難・嚥下困難などに対する治療です。これらは日常生活において最も致命的です。場合によっては喉頭の外科手術なども検討しなければならないケースも存在します。また、表情がうまくつくれない顔面麻痺に関しては、コミュニケーション障害などの社会性に関わる支障も懸念されます。それぞれ、多くの医療関係者・家族の協力のもと、サポートしていかなければなりません。
メビウス症候群の経過や注意点
メビウス症候群の経過について教えてください。
メビウス症候群は出生児に病気が判明するため、病気の経過はその後の子どもの発育・発達に影響します。一般的にはメビウス症候群と診断された子どもは発育・発達の遅れがみられるケースが多いとされています。具体的には低身長・低体重・知的障害などです。特に知能レベルにおいては自閉症を合併するケースもみられ、早い段階での知能検査などが推奨されます。正常な発達がみられれば普通校で教育を受けることも十分可能です。ただし嚥下に支障がある場合は給食の内容などに留意する必要があります。嚥下の異常は窒息などのおそれもあるため、適切な判断が重要です。
メビウス症候群は寿命に影響しますか?
メビウス症候群が寿命に影響するという報告はありません。しかし生後間もない時期は注意が必要です。呼吸や嚥下に異常があるケースでは呼吸困難により人工呼吸器が必要になる場合もあります。適切な対処ができないと窒息死する危険性も出てくるでしょう。また、小脳・脳幹の発達不全が疑われる場合は脳幹機能不全による突然死の事例も確認されています。ただし適切な診断・対処ができれば、徐々に医療的なサポートから自立していくことは可能です。そのためには早期の診断が重要となります。
日常生活で注意することはありますか?
メビウス症候群の方が日常生活で注意することは特にありません。基本的には自立した生活が可能です。ただし重症度によっては先述した呼吸の問題で人工呼吸器が必要になるケースや、日常生活において息切れが生じる可能性もあります。特に注意すべきは生後間もない時期といえるでしょう。乳幼児の時期は子どもをよく観察して、少しでも異変を感じたら医療機関を受診して適切な対処を行うことが大切です。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
メビウス症候群は発症例こそ少ないものの、顔面麻痺・外転神経麻痺を伴う指定難病です。現時点において明確な発症原因は特定されておらず、根本的な治療法も確立されていません。脳神経の病気であることから顔面・呼吸・嚥下・眼などに異常を起こし、最悪の場合は窒息などによる突然死も起こりうる恐ろしい病気です。ただし適切な対処をすれば、発育・発達過程のなかでゆくゆくは自立した生活を行うことも十分に可能です。そのためには早期の診断が大切になってきます。特に生後間もない時期は子どもをよく観察し、些細な異変でも医療機関へ相談しましょう。
編集部まとめ
この記事ではメビウス症候群について症状・原因・診断・治療方法などを解説しました。メビウス症候群は先天性の難病で、顔面麻痺・外転神経麻痺を伴うのが特徴です。
主な症状としては表情がつくれない・涙が流れない・口が開けにくいなどがあります。また、喉や舌などに麻痺がある場合は呼吸困難を起こす可能性もあります。
外転神経麻痺は眼に関する麻痺です。両眼を平行に動かせない・片方だけ別の方向を向いてしまうなどの症状が特徴です。
メビウス症候群の原因は未だ特定されていません。遺伝・胎児期における血液の供給不足などが原因として考えられていますが、現状では後者の説が有力とみられています。
診断は対面による観察などによって行われるほか、日常における呼吸困難の有無などを問診で聞き取ります。また、脳神経の病気であることから、特に第6・第7神経の異常の有無が重要です。
メビウス症候群に対する根本的な治療方法は確立されておらず、現時点では対症療法的な治療のみ行われています。
特に生後間もない時期は呼吸困難などを起こすケースがあるため、人工呼吸器などが必要になることがあります。
ただし将来的に自立した生活を送ることは十分可能です。早期に医師の判断を仰ぎ、子どもの発育を見守っていきましょう。
参考文献
133 メビウス症候群
メビウス症候群(指定難病133)(難病情報センター)