85歳で仕事をリタイヤするために必要な貯金額…年収200万円の男性、両親と不仲で同居拒否

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 両親との関係が上手くいかず、悩まれている人は多いようです。今回は両親と同居をしているものの、不仲であることから独立を思いついたケースをご紹介しましょう。

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「88歳の両親と離れ、一人暮らしをしたい」という相談を受ける

 現在88歳の両親と、築45年を超える一戸建てに同居している相馬さん(仮)。両親と上手くいっていないことから、中古の分譲マンションを購入して一人暮らしをしようと考えています。相馬さん、一人暮らしになってからは、体が続く限りダブルワークで暮らす予定ですが、今後の生活は大丈夫なのか、というご相談でした。相談時には一人暮らしになった場合の毎月の支出やダブルワークで頑張った場合の収入など、一部未定の項目がありました。家計収支を含め、推測を交える形で回答せざるを得なかったことはご了承いただきました。

 相馬さん、相談時の毎月の収入は、手取り額で13万円、年間156万円になります。ご両親と同居されているので、毎月の生活費はだいぶ抑えられていましたが、一人住まいになると支出は大幅に増えることになります。試算では、将来支出が増えることから、ご両親と同居中も家計収支はトントンで、貯蓄は上乗せできないものとしました。

 中古マンションの購入費用は1000万円を計画していましたが、引っ越し等を含めた諸費用を70万円としました。相馬さんは貯金を2500万円保有されているので、マンションの購入費用、諸費用は手持ちの貯金から充当することにしました。マンション購入にあたっては住宅ローンを組むというのが一般的ですが、相馬さんは現在57歳。住宅ローンを組めなくはないでしょうが、組んだ場合のリスク、たとえば体調を崩して返済が滞ったケースなどを考慮すれば、借金をしない方が賢明と考えたからです。

 相馬さんの精神面を考慮して、マンションの購入は1年以内、相馬さんが58歳時点で引っ越す予定としました。マンション購入代金1000万円、諸費用70万円を支払うと、貯蓄の残りは1430万円になります。ただ、相馬さんが1人住まいをするにあたって家電などを買い揃える必要があると考え、その費用を50万円とすれば、貯金の残りは1380万円です。

マンション購入後は副業を始める予定も、生活費が自己負担に…はたして暮らせるのか

 相馬さん、マンション購入後の仕事は、現在の仕事に加えて軽作業の副業を始め、ダブルワークとする予定でした。現在の仕事による手取り収入が年間156万円。定年は65歳だったので、あと8年は続けることができます。さらに副業予定である軽作業の収入が加わることになりますが、65歳までは現在の仕事があるため、相馬さんの健康面を考えれば無理はできないはずです。

 このため副業の収入は月3万円、年間36万円としました。現在の仕事の手取り額は年間156万円、ここに副業の36万円が加わるので年間の収入は192万円になりますが、所得税等が増えるので手取り年収は187万円として試算を行いました。

 支出は1人住まいになるため、生活費等は全額が相馬さんの自己負担になります。毎月の生活費は、年齢によって多少違いがありますが、総務省の家計調査報告(2021年)の高齢単身者世帯の平均額14万4747円を若干増やして月15万円、年間180万円とします。マンションを購入すると固定資産税等が発生しますが、家計調査報告には住居費が含まれているので、別途負担は発生しないことにしています。

 年間の手取り収入187万円、年間の支出が180万円ですから年間7万円の黒字になります。黒字額は年間7万円とわずかですが、相馬さんの現在の仕事は65歳が定年ですから、全額貯蓄に回すことにしましょう。65歳までの8年間で56万円の貯蓄ができるため、65歳時点の貯蓄額は1436万円になります。

定年退職後、副業収入を増やさなければ貯蓄は底をつく

 相馬さん、65歳で現在の仕事は定年退職となりますが、65歳からは公的年金の支給が月9万円、年間108万円受け取れる予定とおっしゃっていました。現在の手取り収入が156万円ですから、公的年金になると48万円の収入減になります。仮に65歳以降、副業の収入がそのままだったとしたら、相馬さんの収入は公的年金108万円、副業36万円の144万円になります。

 ただ、国民健康保険料などの負担が発生するので、年間の手取り収入額は130万円としました。年間の支出は180万円ですから、年間50万円の赤字が発生することになります。相馬さんの65歳時点の貯蓄は1436万円ですから、年間の赤字額50万円を貯蓄から取り崩していくと、29年弱で貯蓄は底を突くことになります。

 これでは人生100年時代には心もとないため、65歳以降は副業の収入を増やすことにしました。65歳までは副業の収入は月3万円でしたが、65歳以降は倍の月6万円、年間72万円とします。公的年金108万円、副業の収入72万円にすれば年間の収入は180万円になりますが、国民健康保険料などの負担が増えるので手取り額を158万円とします。

 年間の支出は180万円ですから、毎年の赤字額は22万円に減少します。65歳以降、毎年22万円を貯蓄から取り崩すと、65年強まで貯蓄は持つことになるので人生100年時代に十分対応できることになり、また日々の生活も少しはゆとりができるはずです。ただ、この試算では生涯働き続けることになることから、非現実的と言わざるを得ませんので、別の試算も行っておきました。

65歳から80歳まで毎月6万円、85歳までは毎月3万円の収入で「人生100年時代」の備えは完了

 相馬さんは毎月6万円、年間72万円の副業を頑張って80歳まで続けることにします。65歳から80歳までの15年間の毎年の赤字額は22万円。15年間では330万円になることから、80歳時点の貯蓄額は1436万円から330万円を差し引いた1106万円になります。

 80歳以降は毎月3万円、年間36万円の収入を5年間、85歳まで得るようにします。年間の赤字額は、先に述べたように50万円に増えるので、85歳までの5年間では250万円を貯蓄から取り崩すことになります。80歳時点の貯蓄は1106万円ですから、5年間で250万円を取り崩すと、85歳時点では856万円になります。

 85歳以降は全く働かない(=完全リタイア)とした場合、収入は年金108万円だけになります。国民健康保険料などを差し引いて手取り額を100万円とすれば、年間支出が180万円なので年間の赤字額は80万円になります。ですが、勤労収入がないことから毎月の支出を2万円、年間24万円減らすことにして、年間支出を156万円としました。

 年間の赤字額は80万円から56万円に減額となります。85歳時点の貯蓄は856万円なので、貯蓄は15年強持つことになります。何とか人生100年に届くためそれなりに安心ができるのではないでしょうか。

 相談時に毎月の支出額や副業の金額が不明だったので、相馬さんには、それらを推測で計算したことを了承してもらいました。マンションを購入しても概ね大丈夫と思われますが、健康に留意されて1日でも長く働けるようにすることが重要だと、相馬さんに念を押したのは言うまでもありません。