成田・羽田の2空港で構成される「首都圏空港」で年間100万回の発着数を目指す試みでは、一時期「その他空港」を使うという案が出たことがあります。どのようなところが「その他空港」として考えられたのしょうか。

茨城?…それとも調布?両方違うっぽい!

 成田・羽田の2空港で構成される「首都圏空港」は、近い将来、発着数が年間100万回を超えることが確実視されています。首都圏空港の発着数100万回は長年の念願だったわけですが、その過程で2008年頃、羽田50万回と成田40万回に加え、「その他(の空港)10万回」を合わせて100万回程度と言われた時期もありました。
 
「その他」空港の名前は明確にはされなかったですが、そのモブのような扱いだった空港はどこだったのでしょう。


羽田空港(乗りものニュース編集部撮影)。

「その他」を挙げたのは、民間有識者でつくられた政府の諮問機関「規制改革会議」でした。2008年5月の意見書で「羽田50万回、成田40万回、その他10万回の計100万回を目標とすべき」と提起し、同じ年の公開討論の資料も、2030年頃の首都圏の発着枠を3空港合わせて100万回程度にすべきとしていました。

 その後、2018年に国土交通省や成田国際空港株式会社、成田空港などの地元でつくる協議会が、成田空港の年間発着枠を30万回から50万回へ拡大すると示したことで、100万回は羽田と成田の合計で達成できる見込みとなったため、「その他」は空港名も明らかにならず、やがて話題にのぼることもなくなりました。

 「その他」はどこだったのかでしょうか。2000年初頭は、羽田と成田の発着枠不足の解消へ「首都圏第3空港」の建設が期待されましたが、「ここがよいのではないか」と候補地が挙げられたのみで実現していません。また、この「10万回」という数字は、羽田と成田の発着数に比肩するような空港規模でないため、この「首都圏第3空港」を指していたのではないと思われます。

 また、2010年には航空自衛隊の百里基地を共用化した茨城空港が開港しましたが、東京都心からは成田より遠くにあります。東京都西部の調布飛行場は都心からさほど離れていませんが、ジェット旅客機は就航できません。

では「その他空港」どこだったのか?

 では、民間用ではない都心近郊の飛行場まで検討範囲を広げるとなるとどうでしょうか。

そうなると挙げられるのが、米海軍・海上自衛隊の厚木基地(神奈川県)と米空軍の横田基地(東京都)です。そのなかでも、横田基地は常に空域も合わせて日本への返還や共用化が求め続けられてきたことから、「その他」が暗に示していたのは横田基地だったのではないか、と筆者は考えています。

 それでは、横田基地を民間空港としても利用するという案に、再び期待がかけられることはあるのでしょうか。現時点では、難しいのかもしれません。


成田空港(乗りものニュース編集部撮影)。

 横田基地はその空域の返還も合わせて、軍民共用化に強い熱意を示した人々もいましたが、100万回の達成が現実になった今は共用化の優先順位はさほど高いと言いづらい状況です。それよりも、現在懸念されている中国による台湾有事が、もしも現実になった際には、横田基地がクローズアップされるのは間違いないでしょう。

 台湾有事の際は、米本土から横田基地への輸送機や戦闘機の飛来数は飛躍的に上がることが大いに予想されます。米軍はその備えとして、空域はおろか基地の発着枠も余裕をもって確保しておきたいのは間違いありません。

 ただし、100万回が実現した後も首都圏の空港需要も伸び続けるのも間違いありません。その時に横田もしくは別の空港へ期待をかけるのか。羽田と成田の発着枠をさらに伸ばすのか。今から議論に備えておくのも早計とは言い切れないでしょう。