保護犬と暮らして8年。男性を怖がっていた犬が、夫に心を開いた日
シェルターから迎えた保護犬・ふうちゃんと暮らす、イラストレーターの岩沢さんと夫。
ESSEonlineで連載中の漫画エッセイ「保護犬マンガ」が『保護犬ふうちゃんとわたしたち』として電子書籍化。それを記念したインタビューの前半では、保護犬を迎えようと思ったきっかけや、保護団体でのふうちゃんとの出会いについて伺いました。後半では、ふうちゃんと暮らす中で芽生えた気持ちや変化について教えてもらいました。
保護犬ふうちゃんに「小さい命でも美しくてかけがえない」と教えてもらった
――ふうちゃんと暮らしてから、暮らしや考え方の面でいちばん変化したなと感じることは？
私も夫も、ありとあらゆる犬が大好きになりました（笑）。よそのおうちの犬と道で行き会ったりすると、かわいい！ となって、もうニコニコして見ちゃったり、話しかけちゃったりしています。私は以前からそういうところがあったのですが、夫は犬に興味がなかった人なので、これはすごい変化だなと思って見ています。
――ふうちゃんと暮らしてよかったと思うことはどんなことですか？
私がいなかったら死んでしまうかもしれなくて、自分を頼りにしてくれている生き物が家にいる、その責任を負ったことがすごく大きかったなと思っています。わたしたちには子どもがおらず、自分より弱くて小さい生き物を守るという経験を初めてしたので。
そういう立場になって責任を負ったということは、人間的に成長させてもらったじゃないですけど、今後の人生にも影響を与えるんじゃないかなと思っています。そういった点でもふうちゃんに感謝しています。
あとは、夫婦げんかの一歩手前でふうちゃんが癒してくれる、みたいなときがあります。子はかすがい的な感じで…（笑）。
空気が悪いと、近づいてきたふうちゃんがなでてほしそうにしていることもあって、それで一旦休憩！ となったりそのまま収まったり。ふうちゃん自身は、察してそういうことをしているわけではないみたいですけど（笑）。
●夫のところへ尻尾を振って向かっていくふうちゃんの姿に…
――ふうちゃんとの暮らしの中で、忘れられない出来事はありますか？
ときどき駅に夫を迎えにふうちゃんと一緒に行っているのですが、ある日、駅に行ったときに私より先にふうちゃんが夫を見つけて、リードをぐいぐい引っ張りながら、夫のところに尻尾を振って向かっていったことがあって、そのときはすごく感動しました。
最初の頃、夫に全然なついてくれない塩対応のふうちゃんを見てきたので、そのときは3人全員がそろって嬉しい気持ちになっていたなと思います。そのエピソードを書いた回は、今でも読み返すとすごく心が温かくなりますね。
いつかはきっと慣れてくれるよ、と夫にずっと言ってはいたのですが、内心ではもしかしたら一生このままかもしれない…と不安だったので、ふうちゃんが夫を好きになり安心してくれるようになって、本当によかったなと思っています。
●やっぱり犬はすばらしい生き物だということを、いちばんに伝えたい
――これからふうちゃんと、どんな風に暮らしていきたいですか？
変わらず穏やかに、現状維持で過ごしていけたらいいなと思っています。でも、これから年をとっていくにつれて、ふうちゃんの体も弱ったり病気が出てきたりすると思うので、そういうときになるべく快適に過ごしてもらえるようサポートしていけたらいいなと思っています。
幸いふうちゃんは今のところすごく健康で、大きな病気やケガはないんですけど、犬の病院代は保険が効かないので、きたるべきシニアの時期に備えてペット保険に入りました。
――昨今、犬を迎える際に保護犬という選択肢を考える人も増えています。そういった人に向け、メッセージをいただけますか。
偉そうに言える立場ではないのですが…。犬はかわいいし癒しもくれる存在ではあるんですけど、うんちやおしっこもする生き物だし、ふうちゃんみたいに全然なついてくれない可能性もあります。かわいさや癒しだけを目的に飼うんじゃなくて、そういった可能性も込みで、本当に家族を増やすつもりで考えてもらえたらいいのかな、と思っています。
ただ、そんな風に大変なこともいっぱいあるんですけど、やっぱり犬はすばらしい生き物だということを、いちばんお伝えしたいです。
夫はよく「ふうちゃんの命は小さいなあ」って言うんですけど、その小さい命でもすごく美しくてかけがえのないものだということを、ふうちゃんに教えてもらったので。本当に犬はいいですよ、ということを言いたいです（笑）。
