2022年2月に開始されたロシアによるウクライナ侵攻を受けて、ロシア政府が海外からの情報を遮断する動きを進める中、Twitterや報道大手のBBCなどが匿名通信システム「Tor」専用のウェブサイトを開設したことが報じられました。しかしTwitterでは2023年3月6日にTor専用ウェブサイトにおけるSSL証明書の有効期限が切れ、Tor版Twitterが事実上廃止されたことが明らかになりました。

Twitter just let its privacy- and security-protecting Tor service expire - The Verge

https://www.theverge.com/2023/3/7/23629504/twitter-tor-onion-site-security-certificate-expired

Twitter’s Most Important Anti-Censorship Tool Is Currently Dead

https://www.vice.com/en/article/3ak8v8/twitters-most-important-anti-censorship-tool-is-currently-dead

Torは複数のノードを介して通信することで通信経路を匿名化し、政府による検閲などを回避することができるシステムで、「Brave」や「Tor Browser」といったTor接続に対応したウェブブラウザで利用可能です。

2022年3月にTwitterは情報統制を図るロシア政府によってアクセス制限が課されたことが報じられました。しかし同月にTwitterはTorを駆使してアクセス制限や検閲を回避することができる「Tor版Twitter」を開設し、ロシアによる情報統制下でもTwitterの利用が可能となっていました。

ロシアから遮断・検閲されてもツイートできる「Tor版Twitter」が登場、実際にアクセスしてみるとこんな感じ - GIGAZINE



当時のTwitterの広報担当者はTor版Twitterについて、「当社のサービスをよりアクセスしやすくすることは、私たちにとって継続的な優先事項です」と述べていました。

しかし記事作成時点でTor版TwitterにBraveを用いてアクセスすると、サイトの信頼性を検証する証明書が2日前の2023年3月6日に失効したことが表示されます。



さらに進むと、「Something went wrong, but don't fret - let's give it another shot (問題が発生しました。もう一度お試し下さい)」というTwitterのエラーページが表示されました。



Torプロジェクトの戦略的コミュニケーションディレクターのパーベル・ゾネフ氏は「2023年3月6日の時点で、証明書の有効期限が切れています。つまり、Tor版Twitterは更新の予定がなく、利用ができなくなったようです」と述べています。今回のTor版Twitterの停止によって、情報統制下のユーザーがツイートやリンクへのアクセス、画像の投稿などの基本的な機能が行えない可能性があるとされています。

Tor版Twitterの立ち上げを支援したセキュリティエンジニアのアレック・マフェット氏はニュースメディア・The Vergeに対して「「現CEOであるイーロン・マスク氏が興味を示さない限り、Tor版Twitterはいつか完全に停止されると確信しています」と語っています。また、マスク氏によるTwitter従業員の大量解雇にも触れ「私とともにTor版Twitterの構築に携わった人々はすべて解雇されてしまいました」と振り返っています。



ゾネフ氏は「政府による情報統制下でTor版Twitterに依存している人々は、Twitterに安全にアクセスする方法が無くなってしまいました。そのため、世界中のインターネットユーザーが自由かつ安全にTwitterにアクセスすることができる何らかの方法をTorは提供する必要があります」と述べています。

なお、ゾネフ氏らはTwitterに対してTor版Twitterを再開させるように求めていますが、記事作成時点でTor版Twitterの再開のめどは立っていません。