じつはプリウス、ハリアーと同い年。今も残るクルマ、続かなかったクルマ…。花の1997年組(1)

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「プリウス」と「ハリアー」。その初代が誕生したのは1997(平成9)年。発売はどちらも同年12月だった。以後プリウスは5代、ハリアーは4代を重ね、着実にブランドを構築。四半世紀を経た2023(令和5)年現在、いずれもトヨタを代表するモデルに位置付けられている。トヨタにとって両車は “花の97年組” と言える存在かもしれない。


●今年で26歳。ともに丑(うし)年生まれ

その1997年に誕生した乗用車は、もちろんプリウスとハリアーだけではない。ここでは両車と同じ年にブランニューモデルとして生まれた、いわば “同級生” の今昔に触れたい。ちなみにトヨタ車以外で今も同じ名前で生き長らえている(継続生産されている)のは、スバル「フォレスター」と日産「エルグランド」だけなのだ。

■スバル フォレスター(1997年2月~)

●「森に住む人」などを意味する車名は全世界共通。こう見えてCD値:0.38と空力性能に優れていた

乗用車とSUVそれぞれの機能を進化させた「新時代のスポーツビークル」を目標に開発。ベースは初代インプレッサで、200㎜の最低地上高を確保。エンジンは当初250馬力/31.2㎏mを発揮する2L DOHCターボのみだったが、のちに2L NAを追加。米・インディアナポリス・モーター・スピードウェイで24時間世界速度記録に挑戦。平均速度180.082㎞/hの新記録を樹立した。


●全長4450㎜×全幅1735㎜×全高1580㎜。プロポーションは今で言うSUVよりもワゴンに近い

●こちらは現行型の5代目(2018 年6月~)。写真は特別仕様車の「XT-EDITION」(305万円)。今やターボエンジンはEJ20ではなく1.8LのCB18なのだ

■日産 エルグランド(1997年5月~)

●全長4740㎜×全幅1775㎜×全高1945㎜。2mに迫る高さのため当時はデカく見えたが、全長は現行型のセレナ ハイウェイスターよりも短い

初代の正確な車名は「キャラバン エルグランド」と「ホーミー エルグランド」。販売店の違いで前者(モーター店向け)と後者(プリンス店向け)に分けられていた。縦置きフロントエンジンの後輪駆動車(FR)で、テラノ譲りの駆動力電子制御4WD「オールモード4×4」も設定。エンジンは3.3L V6ガソリン(VG33E)と3.2L直4ディーゼル(QD32ETi)を設定。のちにどちらも新型のユニットに置換された。


●Xグレード(FR・7人乗り・ディーゼル車)の当時価格は349万8000円(東京地区本体価格)

●こちらは現行型の3代目(2010年8月~)。ボディサイズは初代比でおよそ230㎜長く、75㎜幅広で、130㎜ほど低い。4代目はあるのか?

ブランニューではないものの、ハイパフォーマンス版の派生モデルとして初代シビック タイプRが誕生したのも1997年。ただし、日本での発売はいったん途切れている(3~4代目間)ので、ここでプリウス・ハリアーと同級生として扱うのはちょっとビミョーかも。

■ホンダ シビック タイプR(1997年8月~)

●全長4180㎜×全幅1695㎜×全高1360㎜。当時価格は199万8000円(東京地区本体価格)

NSX(NSX-R)、インテグラに続くファインチューニングモデル。タイプRの思想である、レーシングカーのテイストと圧倒的なドライビングプレジャーの獲得を目指して開発された。SiRグレードをベースにリッター当たり116馬力を発揮する1.6L 自然吸気のVTECエンジンを搭載。固めた足まわり徹底した軽量化、専用セッティングのABSや大径ブレーキディスクローターなどを採用した。


●エンジンは最高出力185馬力/8200回転(最大トルク16.3㎏m)を誇るB16B 98 spec.R


●レカロのバケットシートにMOMO製ステアリング、チタン削り出しシフトノブを装備。ペダルレイアウトもSiRとは異なる


●車高はSiRより15㎜低かった。タイヤはBS ポテンザRE010で15インチ7本スポークの5穴ホイールもタイプR専用


●そしてこちらは現行型の3代目(2022年9月~)。2L直4ターボ・K20C型の性能は、最高出力330馬力/最大トルク42.8㎏m。ボディ全幅は1890㎜で価格は499万7300円



「プリウス」、「ハリアー」と同じく1997(平成9)年に誕生したクルマたち。前半は、今も当時の名前のまま代を重ね、継続販売されているモデルを紹介してきた。ここからは、すでに絶版となった同級生たちの記憶をたどる。

まずはトヨタ。“花の97年組” にはプリウスやハリアーにも負けない、新たなジャンルを開拓すべく送り込まれた意欲作があった。例えばこんな…。

■トヨタ カローラ スパシオ(1997年1月~2007年)

●「スパシオ」はイタリア語の “空間” を意味する “Spazio”(スパッツィオ)に由来。全長4135㎜×全幅1690㎜×全高1620㎜

8代目カローラ(AE110系)のプラットフォームに背の高いワゴンボディを載せたコンパクトミニバン。開発テーマは、多機能で楽しさあふれる “私の部屋”。発売当初は2列シート4人乗り(2-0-2)と3列シート6人乗り(2-2-2)の2タイプを用意。前者は広い室内空間、後者は2列目をジュニアシートに切り替えられるなど、多彩なシートアレンジを売りとした。ただし見てのとおり6人乗りの2列目はかなり狭く、大人の常用には向かなかった。のちに一般的な2列5人乗り(2-3-0)が追加された。


●3列目席ではなく2列目席の有無による斬新なシートアレンジ(上:2列、下:3列)。3列シート車の2列目は脱着可能で、別売りのシートアタッチメントを使えば屋外でもベンチシートとしても使えた

■トヨタ ラウム(1997年5月~2011年)

●全長4025㎜×全幅1685㎜×全高1535㎜。前出のカローラ スパシオ(2465㎜)より55㎜長いロングホイールベースが特徴

カローラより小柄のターセル/コルサをベースとしたコンパクトハイトワゴン。背高のパッケージと2列シートに割り切ったことで広い室内空間を確保。狭い場所での乗降や駐車を助ける左右リヤスライドドアや、フラットフロア、コラムシフト、足踏みパーキングブレーキなどを採用。前席左右と前後席間のウォークスルーが可能だった。99年には前席ベンチシートの「ペアベンチ仕様」を追加。


●テールゲートは一般的な上ヒンジではなく横開き式を採用。後席スライドドアの窓ガラスも昇降可能だった。「ユニバーサルデザイン」を量産車に導入したハシリ的存在と言える(写真はウェルキャブ)

カローラ スパシオとラウム。ともに2代でその名は途絶えたものの、両車の長所を採り入れ、統合するかたちでその系譜を今に受け継ぐのが「シエンタ」。初代は2003年に登場。10年にいったん生産中止となるも、後継車と目されたパッソ セッテの不振などによりまさかのカムバック。2代目で大きなヒットを飛ばし、今やプリウスとハリアーにも負けないトヨタの稼ぎ頭へと成長した。


●写真は2022年8月発売の現行型シエンタ Z(ハイブリッド)


●写真は現行型。3列7人乗り、2列5人乗りとも基本のシートアレンジは先代を踏襲。使い勝手を大幅に進化させた。ウェルキャブも同様(写真は車いす仕様タイプIII)

シエンタと同様に、車名は違えど起源が1997年に誕生したモデルであるのがスズキの「ソリオ」だ。その礎は「ワゴンRワイド」。ワゴンR(軽自動車)のボディを180㎜拡幅し、全長も前後バンパーを大型化して105㎜延長。軽規格よりひとまわり大きなボディに新設計の1Lエンジンを搭載した。以後改良やモデルチェンジごとに「ワゴンRプラス」→「ワゴンRソリオ」と改名を重ね、現在のソリオに至る。


●(左:ワゴンRワイド)ドアパネルやフェンダー、ライト類を共用するため見た目はほぼ初代ワゴンR。(右:ソリオ)現行型はワゴンRからの完全独立以後3代目にあたる

先に「すでに絶版となった」と書いたものの、前述のクルマたちは、名前は変われど完全に消滅したわけでなく、時代進化を重ねた現行ラインアップの起源だ。進化の過程としては当然だが、その基となる確かなコンセプトや優れたパッケージを備えたモデルが多く見られるのが “花の97年組” の特徴とも言える。92年のバブル景気崩壊以降に始めた、言わば “地に足を着けた開発” が、ちょうどこのころカタチになり始めたのだろう。

一方で、一代限りで姿を消しながらも鮮烈な記憶を残すモデル、すでに記憶の片隅からも消えかけているモデルもあった…。その2 につづく。

〈文=ドライバーWeb編集部〉