●安藤晴香役は「ほぼほぼ素」『ワタサバ』撮影振り返る

NHKの夜ドラ『ワタシってサバサバしてるから』(総合 毎週月〜木曜22:45〜 ※全20回)に出演中の女優・モデルの若月佑美にインタビュー。本作や自身について話を聞いた。



お笑いタレント・丸山礼が主演を務める本作は、“自称サバサバ女"の異端児・網浜奈美(丸山)が、歯に衣着せぬ言動で日夜事件を起こし、新入りの本田麻衣(トリンドル玲奈)らとバトルを繰り広げるオフィスコメディ。若月は、綱浜が務める雑誌編集部の同僚で、網浜の言動に振り回される安藤晴香を演じている。

――『ワタシってサバサバしてるから』の魅力をどのように感じていますか?

とにかくまっすぐ笑いを追求した作品です。漫画原作で網浜さんのキャラクターは「面白い」で片付けられるものもあるのですが、三次元の人間がやると聞こえ方や見え方が違ってくるんです。なので、ドラマはバランスをとって、網浜さんのキャラクターもプラスで面白くなっていて、より親しみやすくなっているところもあります。また、網浜さんが部署を転々とし、関わっていく人が変わっていくことでキャラクターの見え方も変わると思うので、そこも注目してほしいです。

――自身が演じた安藤晴香の役どころを教えてください。

私が演じる安藤はごく普通の女の子。だからこそ、視聴者目線で網浜さんに巻き込まれていき、迷惑がっているけど網浜さんという存在を面白がってもいる。安藤の目線で網浜さんを見てもらえたら面白いと思います。

――演じる上で意識したことは?

安藤は網浜さんにツッコむセリフがいっぱいありますが、網浜さんという存在をボケとして捉えてツッコむのではなく、ついつい「何でだよ」と言ってしまう。監督から「そんな役どころがいい」という話を受けました。自分で「ここはツッコむセリフだから」と決めないで、自然と役のセリフとして言うことを心がけました。

――安藤とご自身の共通点はありますか?

ほぼほぼ素でした。監督自体が役者同士の関係性を大事にしてくださる方で、アドリブがすごく多い現場でした。網浜さんたちと話すシーンは「普段の雰囲気が出るくらいがいい」とおっしゃって、あえて役に入りきらず演じていました。だから共通点が多いというか私というか(笑)。あと、私はプライベートでもツッコミタイプで、なんでもかんでもツッコんでしまいます。映画に対してツッコんだり(笑)

――丸山さんらとのアドリブ共演はいかがでしたか?

丸山さんがパワフル過ぎてアドリブもがんがんやってくれて、監督もなかなかカットをかけないのでどんどんアドリブが出てくる。ボケとツッコミ両方やってくれて、私たちがボケようとツッコもうと両方に対応してくれて、瞬発力もすごくて、さすがだなと思いました。

●自分の幸せより「人が喜んでいる姿を見るほうがうれしい」



――丸山さん演じる網浜は、自己評価が高くポジティブ思考です。若月さんはいかがでしょうか?

私はネガティブ思考なので真逆ですが、「サバサバしてるね」「男前だね」とよく言われるので、網浜さんを見ながら「私もこう見られているのかな?」と思うこともあります。自分では網浜さんに似てないと思いつつ、ちょっと不安も(笑)。ただ、自分を大切に、自分ファーストで生きているのはうらやましさも感じます。行き過ぎると自己中心的になってしまいますが、自分を大切にするって必要なことなので、いいなと思います。

――若月さんご自身は、自分ファーストではないのでしょうか。

ないですね。自分の幸せを自分で喜べないタイプなんです。何かいいことがあっても「そんなうまく行くはずがない」、誰かに褒められても「褒められたあとはうまく行かないことがある」と思ってしまう。ネガティブにならずに喜べるのは何かなと思ったら、人が喜んでいる姿を見るほうがうれしい。誰かのために自分が何かをしたことで喜んでいます。

――昔からそうなのか、それともいろんな経験を経て?

小学生の頃は自分のことしか考えてなかったです。中学に入って、人がやりたくないトイレ掃除などを率先してやったら、まわりから「ありがとう!」と感謝され、自分もトイレ掃除をしながら「いいことをしてる。これからきっと何かいいことあるぞ!」と思える。それに気がついてからは、そういう生き方をしたほうが自分の性格的に楽だなと思うようになりました。

――それから他人ファーストで生きるように。

そうですね。自分のために頑張れないタイプなので、逆にこの仕事はすごく合っていると思います。芸能界のお仕事は「人を笑顔にするため」とか「ファンの人を喜ばせるため」。「じゃあ頑張ろう!」となれました。自分ファーストではない生き方として、いい意味で頑張れていると思います。もともと強いやる気があったわけではなかったのですが、いざ入ってみて「これだな」と思いました。





――以前はグループの一員として、アイドルとして活動し、ファンの方々の大声援を受けて。

はい。学生時代は勉強で優劣がついたりしたので、選ばれないことが出てくると自分を否定しがちでしたが、アイドル時代は、何かに選ばれなくても、それでも応援してくださる方がいるということに気づけました。頑張る意味が、選ばれない人にもある。それが勉強とは違うと思って勇気をもらいました。

――アイドル時代を経て、現在は女優としてご活躍です。現在の自分の好きなところは?

好きなところは、人に相談されやすいところです。超絶肯定マンなので(笑)。自分自身が、否定されることが得意ではないので、みんなを肯定してあげたいんですよね。どんな生き方も、すべての感情も全部肯定してあげたい。誰かのことを憎んだり怒ったりしていても、その感情だけは否定したくない。何か行動に起こしてマイナスに向かうことは止めてあげたいですけど、その感情を持つこと自体に「その感情を持たないほうがいいよ」とは言いたくないんです。

――逆に今感じている課題点は?

積極性のなさです。今回のドラマはアドリブ合戦で、どんどん自分を出さないとそのシーンが成立しないのですが、私は人に迷惑をかけないで生きようと思ってしまうので、そういうときにあまり話せず、もっと積極的に参加すればよかったと反省しました。ほかの作品を撮っていても自分に制限をかけて無難な道を選びがちなので、そこは変えたいです。

●裏方業務に関心 「メンタル・プロデューサー」の仕事を提案



――振り返ってみて、2022年はいかがでしたか?

自分と向き合う時間が多い年でした。将来をよく考えたり、個人的には不思議な年でしたが、バランスのいい生き方ができました。私は無趣味で物欲もなく、買い物も旅行もしない人間だったので、昔はお仕事がないとき何をしたらいいのかわかりませんでしたが、2022年はプライベートも充実させようと思って、いろんなところに行きました。

――ちなみにどこに行きましたか?

犬カフェに通うようになりました(笑)。犬が大好きで、「事務所でワンちゃん飼ってくれませんか?」ってお願いするくらいなんです。

――ご自身で飼う予定は?

実家ではゴールデンレトリバーとミニチュアダックスフンドを飼っていました。好きすぎるからこそ、命の重さを知りすぎていて自分では飼えないんです。ペットショップにもよく立ち寄って見るんですけど、触れたいという欲があふれて(笑)。犬カフェに行ったらもう幸せで幸せで。2023年も通おうと思います。

――女優業への思いや仕事との向き合い方などで変化はありましたか?

女優業もすごくやりがいがありますが、「他に自分は何をやりたいのかな?」と考えるようになりました。今まではがむしゃらに目の前のことを頑張ってきたのですが、グループを卒業してもう4年経つので、そろそろ本当に自分がどうなっていきたいのか。そう考えるようになって、2022年に出た答えとしては、表に出ない仕事もしたいと。企画やプロデュース、制作など。2022年は久しぶりに舞台にも出演させてもらって、制作の裏側を見て自分も関わりたいと思いました。

――裏方に興味があるのですね。

はい。中学時代のトイレ掃除もですけど、人の役に立っていきたいという思いがあります。この間『invert 城塚翡翠 倒叙集』(日本テレビ系)というドラマに出させてもらって、そこで清原果耶ちゃんとお話しする機会があったのですが、私が勝手に「メンタル・プロデューサーという役職を作りたい」という話をしました。



――若月さんが考えるメンタル・プロデューサーとは?

役者さんの大変さをそばで感じ、役者さんが今何をしてほしいのかを察知して、やりやすい空気を作る人。今はみんながそれを兼任してくれているんですよね。助監督さんがスケジュールを組み、APさんが私たちのお水を持ってきてくれ、ヘアメイクさんが役者の悩み相談を聞いてくれる。本当の仕事はそれではないと思いますが、そこの役の人がいない。だったらそういう役職が1人いてもいいかなと。俳優に「来週泣くシーンがありますが、空気作り的にどうしたいですか?」と事前に聞いて、俳優が監督に言いづらいことを全部言ってあげる。そういうポジションがあっても面白いなと思います。

――若月さん自身、俳優さんに水を渡すといったサポートを率先してやりたいですか?

めちゃめちゃやりたいです! 寒そうだったらそっとヒーターの温度上げに行きたいですし。感謝されるってすばらしいことだと思うので、そうやって生きていきたいです。

――2023年はどんな年にしたいですか?

2022年に出た答えを実行に移していく年になると思います。メンタル・プロデューサーは最終職かもしれませんが、企画・制作など裏方のお仕事もしてみたいです。あとは趣味を見つけたいです。

――犬カフェに行く以外の趣味を?

そうですね、身になる趣味(笑)。たとえば料理を極めるとか、韓国ドラマ好きなので韓国語を調べてみるとか。そういうことをしてみたいです!

■若月佑美

1994年6月27日生まれ、静岡県出身。2011年から乃木坂46で1期生として活動し、2018年11月にグループを卒業。その後は女優としてドラマ『今日から俺は!!』(日本テレビ)、『私の家政夫ナギサさん』(TBSテレビ)、『共演NG』(テレビ東京)、映画『ヲタクに恋は難しい』、『劇場版ラジエーションハウス』、『ブラックナイトパレード』、Netflix『桜のような僕の恋人』などに出演。ファッション誌『Oggi』で美容専属モデルを務め、モデルとしても活躍している。