ロイヤリティフリーの写真や画像といったコンテンツを有料で配信しているサービス「Getty Images」が画像生成AI「Stable Diffusion」開発元のStability AIがGetty Imagesの知的財産権を侵害したとして、法的手続きを開始したことを明らかにしました。

Getty Images Statement - Getty Images

https://newsroom.gettyimages.com/en/getty-images/getty-images-statement

Getty Images is suing the creators of AI art tool Stable Diffusion for scraping its content - The Verge

https://www.theverge.com/2023/1/17/23558516/ai-art-copyright-stable-diffusion-getty-images-lawsuit

2023年1月17日、Getty Imagesは「Getty Imagesが所有または代理権を持つコンテンツの知的財産権をStability AIが侵害したとして、Stability AIに対する法的手続きをロンドンの高等法院で開始しました」と発表。Stability AIがGetty Imagesの数百万点の画像とメタデータをライセンスなしに違法にコピー・処理したと訴えました。

Getty Imagesのクレイグ・ピータースCEOはThe Vergeのインタビューに対して、イギリスでの訴訟が差し迫っていることを正式に通知する「letter before action」をStability AIに発行したことを明かし、「Stability AIは、他人の知的財産を許可も対価もなく利用して、自分たちの経済的利益のためにサービスを構築しています。私たちは、私たち自身と貢献者の知的財産権を守るために、行動を起こしています」と述べたとのこと。

Stability AIの広報担当者はThe Vergeの取材に対し、「我々のチームはこの訴訟に関する情報を受け取っていないので、コメントすることはできません」と述べたそうです。

Stable Diffusionのような画像生成AIは人間が作成した画像を学習データとして使用していますが、これら学習データはしばしばクリエイターの同意なしにインターネット上から収集されていることが問題視されています。多くのアーティストがこのような事態に不満を示しているなか、2023年1月13日にはStability AIと画像生成AIのMidjourneyを含む3社に集団訴訟が提起されています。

画像生成AI「Stable Diffusion」と「Midjourney」に対して集団訴訟が提起される - GIGAZINE



Stable Diffusionの学習用データセットはオープンソースで公開されていますが、The Vergeがこのデータセットを独自に分析したところ、Getty Imagesをはじめとするストックイメージサイトがコンテンツの大部分を占めていることが分かったとのこと。なかにはGetty Imagesが管理するコンテンツであることを示すウォーターマークが表示されているものもあったため、権利が侵害されていることは明らかだそうです。



なお、Getty ImagesはかつてGoogleを反トラスト法違反で訴えた経歴があります。Getty Imagesは、Googleの検索画面で高画質画像を一覧表示する機能がGetty Imagesの活動を阻害しているとし、「画像が高解像度の大きなフォーマットで表示されると、ユーザーが元のソースサイトで画像を表示する動機がなくなる」と主張していました。この際はGoogle側が譲歩して和解に至っています。

ピータースCEOは今回の訴訟について、金銭的な損害賠償や画像生成AIの開発中止を求めるのではなく、新しい法的規制を作ることに興味があると話しているとのことです。