12月24日、全日本選手権フリーの紀平梨花

 紀平梨花(トヨタ自動車)は、2023年の世界選手権や四大陸選手権につなげたいという思いを持って全日本選手権に臨んだ。目標は、ショートプログラム(SP)、3回転ルッツを入れたフリーともにノーミスの演技をし、表彰台に上がることだった。

 11月のグランプリ(GP)シリーズ・フィンランド大会で得点を192.43点まで戻していたなか、今回の全日本選手権でシニア3番目の得点が197.21点(吉田陽菜)だったという結果を見れば可能性はあった。しかし、紀平はケガをしている右足首の状態に不安が出て、目標を果たせなかった。

 練習拠点のカナダから帰国する2週間前に右足首に痛みが出て、4〜5日はジャンプの練習を休んだあと、ルッツの練習を始めたという紀平。

「帰国の2〜3日前からは軸を締めて3回転に挑戦し始めたけど、パンクしたり、怖いという感覚にもなってあまりうまくできなくて。でも最後の日になって一発だけ決めることができました」

【自分の滑りではまったくないSPの演技】

 12月22日、全日本のSPはGPシリーズと同じ3回転サルコウ+3回転トーループ、3回転ループの、手応えを持っている構成で臨んだ。

 だが、流れをつくれなかった。シニアの有力選手のなかでは早い18番滑走。最初のダブルアクセルは確実に決めたが、次の3回転サルコウは、4分の1の回転不足で前につんのめる着氷になってしまい、2回転トーループをつけるにとどまった。

 踏み切りで、6分間練習の時に自分がつくった穴にハマってしまい、軸が傾いたジャンプになったのが原因だった。

「練習ではいいジャンプがたくさん跳べていて......。本番では、動きのキレはそこまでよくなかったけど、それでもノーミスはできる状態でした。それなのに、ミスをしてしまってすごく悔しかった。その時点で焦りを見せないようにして、次のジャンプのことを考えましたが、結局、最後のループもあまりいいジャンプではなかった」

 紀平がこう話すように演技後半の3回転ループは回転不足と判定されて0.67点の減点。片手側転をしてからのステップシークエンスは丁寧に滑り、3本のスピンとともにレベル4をとったが、得点は60.43点。

 その時点の得点は前に滑っていたジュニア勢にも後れをとる6番目。結局、3位に10.63点差の11位スタートと、苦しい状況になってしまった。

「ショートは自分の滑りではまったくないような演技になってしまい、何のために練習してきたんだと思いました」と話す紀平。「フリーで挽回するためには、3回転ルッツを入れるしかない」と、思いを強くした。

【構成を大きく変えて挑んだフリー】

 だが、2日後のフリー当日朝の公式練習では、パンクとなった3回転ルッツで右足首を痛めてしまった。

「大きく骨折したわけではないので試合には出られたけど、そのあとは右足に負担がかかる3回転フリップの練習もやめました。演技にも、これからの大会にも支障が出るかなと思ったので練習後にブライアン・オーサーコーチと相談して、『3回転フリップを1本入れた、フィンランド大会と同じ構成でいいと思う』と言われて、そうすることに決めました」

 当初は3回転フリップと3回転トーループを2本、3回転ルッツを1本入れる予定だった構成を、大きく変えての演技。だが、フリーでも目指していたノーミスの滑りはできなかった。

 最初の3回転サルコウ+3回転トーループは、サルコウが4分の1の回転不足になって0.06点の減点。右足首の痛みで不安を感じていた3回転フリップは単発のジャンプでしっかり決め、フリップからループに変えた4本目のジャンプに2回転トーループをつけて連続ジャンプにした。

 だが、ルッツに変えてループにした後半の3回転ループはステップアウトになって大きく減点。セカンドからのジャンプを3回転トーループ+2回転トーループから2回転トーループ+2回転ループに変えたダブルアクセルからの3連続ジャンプも、難度は落としたにもかかわらずアクセルが4分の1の回転不足で減点される結果に。

 フリーはフィンランド大会より0.17点低い128.19点にとどまり、合計は188.62点とステップアップは望めない得点だった。

【生まれ変わった自分を見せたい】

 結局、最終順位はSPからは上げられず11位。10位までにジュニアが5人も入ってくる結果になったが、紀平は四大陸選手権も選考条件の「全日本選手権10位以内」をクリアできず、次への夢は絶たれた。

「ショートを終えてから不安もあるなか、2年ぶりの戻ってこられた全日本の舞台で、自分の滑りをできたのは本当に幸せなことだなと、今はすごく感じています。でも、演技や点数にはぜんぜん満足していない。もっともっと点数や構成を上げて、『いつでもミスはしない』という自信を持って挑めたらいいなと思うので。また新たに生まれ変わったかのような自分を見せていけるように頑張りたいです」

 演技終了後に右足首に触った理由を、「6分間練習でも3回転フリップを跳んだ時にはすごく痛かった。不安だったけど、『よく持ってくれたな』と思って触りました」と説明した。

 今季の挑戦が一段落した今、復活へ思いをこれまで以上に強くし、その道をじっくりと歩もうとしている。