10月18日、政府の税制調査会が開かれ、所得税のあり方について議論が交わされた。そのなかで委員から、退職金にかかる税金の控除額について「勤続年数で差を設けず、一律にすべき」という意見が出た。

 現在の課税制度では、勤続20年を超えると1年ごとに控除額が増える仕組みになっている。しかし、これは終身雇用制度を前提としたもので、転職をためらう要因にもなりかねない――という考えだ。

 同日、日本経済新聞が「退職金課税『勤続年数関係なく一律に』 政府税調で意見」の見出しで報じると、Twitterで「退職金課税」がトレンド入りした。

退職金一律課税って…働いたら負けに拍車かけてどうすんだ》

退職金の課税周り増やすぜってなったらいよいよ働いたら負けが真実になってくるな》

《勤労意欲なくなるわ 自分らで資産作らないといけないのにそれすらも持ってかれるのね》

 など、SNSでは圧倒的に批判的な意見が多い。

「『退職金に課税なんてひどい』という意見も散見されましたが、そもそも退職金は所得税・住民税の課税対象です。ただ、税制上の優遇措置として控除があり、勤続年数が20年を超えると、その控除額が増えていきます。

 控除額は、勤続20年以下の場合、40万円×勤続年数(控除最低額は80万円)。20年を超えると、800万円に70万円がプラスされていきます。たとえば同じ会社に38年勤め続けた場合、800万円+70万円×(38年−20年)=2060万円の控除を受けることができます」(ファイナンシャルプランナー)

 経団連が2022年3月に公表した調査によれば、「管理・事務・技術労働者(総合職)」の60歳(大学卒・勤続年数38年)の退職金の平均額は2243万円となっており、控除によって課税される額が極端に少なくなることがわかる。

「この制度が適用されると、多くの人の退職金の課税額が増えることになります。老後のために資産形成として政府がすすめるiDeCo(個人型確定拠出年金)への影響も出てきそうです。iDeCoを『一時金』で受け取る場合は、退職所得控除の対象となるからです」(同)

 10月25日からは、厚労省の年金部会で、国民年金の納付期間を40年(20〜59歳)から45年(20〜64歳)に延長する議論がスタートする。

 老後への不安は、ますます大きくなるばかりだ。