大谷翔平「本塁打数26%減」「打撃ではジャッジに軍配」それでも今季の成績が “偉業” なワケ【MLB元通訳が緊急寄稿】
6月21日、ロイヤルズ戦の9回に15号3ランを放ち、ナインとタッチを交わすエンゼルス・大谷(写真・共同通信)
日本時間10月6日、メジャーリーグ(MLB)の2022年レギュラーシーズンが終了。各部門のタイトルが確定した。日本ではもちろん、本国アメリカでも、昨シーズンから続いて大谷翔平の成績に注目が集まった。
160安打、95打点、34本塁打という結果を残した大谷。「飛ばないボール」と呼ばれた今季の大谷のこの成績を、元MLB通訳の小島一貴氏が解説してくれた。
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今年の特に前半戦では、「MLBのボールが飛ばなくなった」と言われていた。シーズンが終わってみて、実際にはどうだったのだろう。
2022年の1試合あたりの本塁打数は、最終的には1.07本だった。2021年の1.22本に比べるとマイナス0.15本、率にして12.3%減ということになる。1試合当たりの本塁打数が1.10本に満たないのは2015年の1.01本以来。やはり2022年は本塁打が出にくい年だったと言っていいだろう。
ただし、日本時間5月24日時点では1試合あたり0.97本で、当時は前年比でマイナス20.5%と大幅な減少になっていた。一口に「ボールが飛ばない」と言っても程度の問題があるわけで、ある年、突然大幅に飛ばなくなるというのはいろいろなひずみをもたらしかねない。そういう意味で、今年のボールの変化は、少なくとも最終的には許容範囲には近づいた、と言えるのかもしれない。
今シーズンの本塁打の主役はやはりアーロン・ジャッジ選手である。打率がわずか6厘弱足りず2位にとどまったものの、三冠王まであと少しだったこともあり、今季MVPに推す声も大きい。
62本塁打を放ちアメリカンリーグ(AL)の最多記録を更新したのはもちろんのこと、それまでの記録である61本は同じヤンキースのロジャー・マリス選手が保持していたことや、その前の記録60本もやはりヤンキースのベーブ・ルース選手だったこともあり、大いに話題になった。
加えて、これまでに単年でマリス選手を超える本数を打った選手がいずれも筋肉増強剤の使用疑惑があるため、「実質的にはMLB記録」という声もあがっている。
特筆すべきは、本塁打が12%以上出にくくなったなかで62本塁打の新記録を樹立したこと。実際、2021年のALの本塁打数トップ10の選手のなかで、2022年に本塁打数を増やしたのは、ジャッジ選手のみだ。
2年連続でトップ10に入ったのは両リーグ合わせて6人。対戦チームによる研究はもちろん、怪我などの突発的な事情が発生する可能性も含めて考えると、2年連続で安定した成績を残すことは本当に難しいのだ。
大谷翔平選手も、この6人に含まれる。ところが本塁打数は、前年の46本塁打から今季は34本塁打となり、12本減、率にして26%減。リーグ平均の12.3%を超えて減ってしまった。
しかし、これは決して悪い成績とは言い切れない。昨年のAL本塁打王だったブラディミール・ゲレーロ選手(48→32。トロント・ブルージェイズ)、サルバトーレ・ペレス選手(48→23。カンザスシティ・ロイヤルズ)をはじめ、昨年の両リーグの本塁打数トップ10にいた多くの選手は、大谷選手以上の割合で本塁打数を減らしているからだ。
大谷選手は本塁打数のリーグ順位でも前年3位、今年4位と、2年連続でリーグトップクラスの成績を残した。さらに、今季で2年連続本塁打数リーグトップ5に入ったのは、ジャッジ選手、大谷選手に加えてナショナルリーグのピート・アロンソ選手(3位→2位)だけだ。
今年は打撃成績に関してはジャッジ選手の陰に隠れた格好になった大谷選手。
上記のとおり2年連続で安定した成績を残すことは難しい。それはもちろん本塁打に限らない。打率、打点はもちろんのこと、投手部門でも防御率、勝利数、奪三振など2年連続でトップクラスの成績を残すことはいずれも困難である。
そんななか、大谷選手はMVPを獲得した昨年に続き、今年も投打のあらゆる分野で昨年にひけを取らない成績を残した。1シーズンだけ投打に好成績を残すだけでもとてつもない偉業と言えるが、2年連続でそれをやってのけるのは、さらなる偉業であることは間違いない。