働くことが困難なADHD。さらに通院や薬代も高く負担が大きい/画像提供:ゆめの(@yumenonohibi)

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働き始めて「社会に適応しにくいのは、実は性格のせいではなく何らかの障害だった」と気づく人もいるだろう。長い間、生きにくさを感じていたゆめのさん(@yumenonohibi)もその1人だ。自ら検査を受けて、ADHDにASDが合併してると診断をもらったゆめのさん。

【漫画】「自立支援医療」の申請方法は?

しかし、通院にかかる交通費や治療費が高いと感じていた。そんな時に「自立支援医療」や「障害者手帳」について知り、体験談として「障害者手帳を取得した話」をTwitterに投稿したところ、後ろめたさや恥ずかしさを感じていた人からも「勇気がもらえた」「作ってみる」と背中を後押しする漫画となった。今回、作品を紹介するとともに、ゆめのさんがADHDと診断をもらうまでに感じていた社会との距離についても話を伺った。

※本作で紹介している症状は、個人の体験談でありすべての人に当てはまるものではありません。症状で悩んでいる場合は医師・看護師等の専門家に相談してください。また、センシティブな内容を含む為、閲覧にはご注意ください。

■バイト先でも馴染めず、対人恐怖症になってしまった過去

フルタイムで働くことが体力的にも精神的にも自分には難しかったというゆめのさんは、主に接客業のアルバイトを転々としながらフリーター生活をしていた。しかし、アルバイト先でケアレスミスが多く、簡単な仕事も覚えられずに怒られることが多かったという。

そして、職場に行くたび「今日はどんなミスをしてしまうんだろう?」と怯えるようになっていく。また、元々対人関係を築くのも苦手だったゆめのさん。とくに複数人で話すのが苦手で、話の輪に入っていけずに孤立してしまうことも多かった。

そんな状況が何度も続き、ゆめのさんは人が多い場所に行くだけで怖くて泣いてしまったり、精神状態が常に不安定で引きこもりがちになっていったという。

■「制度に繋がれずにいる人」の手助けになれば

――何がきっかけでADHDであることに気がついたのでしょうか?

これというきっかけがあるわけじゃないですが、発達障害の話題をテレビやネットで目にして、ADHDの特性であるケアレスミスの多さや不注意、ASDの特性である対人関係の苦手さなど、自分に当てはまる部分が多いと感じていました。きちんと検査したいと思い、病院で診察と検査を受けて、ADHDにASDが合併してると診断を受けました。

――リツイートを見ると、障害手帳を使うことに羞恥心や後ろめたさを感じる方がたくさんいましたね。

自分もそう感じる部分があったからこそ「障害を補うための制度は堂々と利用すればいい」「後ろめたく思う必要はない」と伝えたくて漫画にしました。漫画を読んだことで、考えが変わったという感想も多くいただけて嬉しかったです。

――ゆめのさんはADHDだとわかって、どのような生活の変化がありましたか?

コンサータというADHDの薬を飲むことで、日中の集中力を以前より保つことができるようになり、社会活動の困難が少し軽減されました。本などで発達障害についての情報を調べて、特性を理解することで、生活の中で起こる問題に対処しやすくなった部分もあります。

――同じような悩みを抱える読者にメッセージがあればお願いします。

私は障害者手帳を取得したことで福祉制度の大切さをとても感じました。この漫画が「必要としながら制度に繋がれずにいる人」の助けになれば嬉しいです。ただ、症状が軽くて制度の対象にならない場合や、手帳を持つことでのデメリットの方が大きい場合もあると思うので、各々の事情に沿って調べて、福祉の担当者などに相談して判断してもらえればと思います。

――その他にどのような漫画を描いていますか?

『心を病んだ父、神さまを信じる母』という本を出版しています。統合失調症だった父親の問題を中心に、子供の頃の家族の話を描いています。精神の病気が題材で、今回の漫画と通じる部分もあるので、気になった方はぜひ読んでみてください。

障害者手帳を持つことで、公共施設で料金の割引や助成を受けることができる。また、就職の際に障害者雇用制度を利用できるため、働き方の選択肢も広げることができる。同じような症状を抱えている人は、一度制度について調べてみてはいかがだろうか。

取材協力:ゆめの(@yumenonohibi)