ryuchellの離婚が賛否を呼んだ理由 タレントに一貫性を求めすぎる時代

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先日、タレントのryuchell(26)と妻のpeco(27)がそれぞれインスタグラムを投稿。夫婦関係を解消して今後は「人生のパートナー」として共に歩んでいくこと、子育てにも向き合っていくことを報告した。

ryuchellは《“本当の自分”と、“本当の自分を隠すryuchell”との間に、少しずつ溝ができてしまいました》《父親であることは心の底から誇りに思えるのに、自分で自分を縛りつけてしまっていたせいで、’’夫’’であることには、つらさを感じてしまうようになりました》と告白。法的な結婚で夫という肩書を持ったことで自分自身も役割に縛られ、精神的に辛くなってしまったことを告白。

こうしたしがらみから開放されるためにpecoと話し合った末、法的な夫婦関係は解消。今後はパートナーという関係へと変化させ、新しい形の家族を愛していくという。

これを受けて、芸能界からは若い2人を応援する声が続出。だがいっぽう、ネット上では「離婚を言い渡された側は厳しい」「結婚後に言われても困る話」といった声も上がっていた。

そうしたリアクションが二分される状況について、コラムニストのおおしまりえ氏は「今回の問題には、“事後報告”ということと“法律婚解消”という2つの要素が絡んでいる」と解説する。以下、その詳細について語ってもらったーー。

離婚によって発生する法的なデメリット

今回の報告に厳しい声が上がる理由の1つには“人生のパートナー”という関係に変化することになったものの、その結果として「離婚を選択したこと」が大きく関係しています。

もちろん批判のなかには、自分らしさという部分に関して「結婚前に話しておくべきではなかったのか」といった“事後報告”に対するモヤモヤを抱える人もいるようです。ただ、そにれ加えて「法律婚の解消は必須だったのか」といった声もあります。

現在、日本の法律では異性間でのパートナーシップ制度は存在しません。何かトラブルが起きた際に内縁関係が証明されれば法的効力はある程度発揮されるとはいえ、離婚して人生のパートナーになるということは“法的な部分での立場が弱くなる可能性”を秘めています。

こうした現実をふまえて、今回の離婚決断にネガティブな印象を抱く人もいたようです。

ただ、ryuchellさんの辛さの1番は「夫という肩書での苦しさ」です。そこから開放されるためには、やはり離婚して「夫をやめる」という選択は必須だったのでしょう。

2人が言う“人生のパートナー”であるために、法律婚に変わる契約を何かしら整えたかは語られていません。報告には《新しい形の家族を愛していきたい》と綴られていますが、法的に守られていない以上、その関係は弱いものなのではないか……。そう考えた人から、批判の声が上がったようです。

■その肩書はryuchell自身が選んだものではなかったか

ryuchellさんの報告に対して批判の声が上がったもう1つの理由として、“肩書に苦しんだというものの、それは自らが選んだものではなかったのか”という声があります。

たしかに近年のryuchellさんは、「若者夫婦の代表」「若い世代の夫代表」といったポジションで芸能活動をしていました。こうした活動が苦しさを生んでいた一因だったとはいえ、そのキャラ付けを選んで発信し続けていたのは紛れもない本人ではなかったかという指摘です。

実際、若者代表として、いわゆる上の世代の男性を辛口でコメントするシーンを目にしたこともあります。彼自身、サービス精神が旺盛で求められた役割を楽しんでこなしてしまうフシがあるとインタビューでも語っていました。とはいえこうしたはっきりとしたキャラクターを180度ひっくり返す宣言に、見る側からは疑問の声が上がったようです。

今後もタレントとして活動するのであれば、また新たなポジションを求められることになるでしょう。

報告では明言していませんでしたが、今後はジェンダーレスポジションになるのか、また夫婦別姓や事実婚といった新しいパートナーシップを選んだ人という立ち位置なのか。どうなっていくかは分かりません。

ただ、結局はまた新しい立ち位置を求められることになります。そしてそれに応じることで、また新たな苦しみを生み出すリスクはあるのではないか。そうした考えもよぎってしまうのです。

■私たちは、タレントに一貫性を求めすぎかもしれない

とはいっても改めて考えると、ryuchellさんはとてもしっかりとした考えを持って発言していますが、まだ26歳です。

しっかりした発言ゆえに成熟した印象を持ちがちですが、26歳を一般的な社会人に当てはめるとまだまだ自分のことで手一杯だったり、自分探し中だったりする人がたくさんいます。いきなり今までと違うことを言い出すことなんて、ザラにある年代ではないでしょうか。

急に「夫でいるのが辛くなった」と言われるのも妻としては困るとは思いますが、若い20代夫婦であれば一定数あることのような気はします(もちろん、夫でいるのが辛い理由はそれぞれです)。

彼は“自分らしさ”を結婚して子どもを育てるなかで見つけ、受け入れていくことを決めました。子育ての責任、パートナーとしての責任は果たすと宣言して離婚するのは、果たして本当に無責任なのでしょうか。

彼の決断と報告は、こうして振り返るといくつもの論点があるのかもしれません。

(文:おおしまりえ)