稲盛和夫さん。その経営哲学は中国でも支持する人が多かった(12年8月撮影)

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電子部品大手京セラの創業者で、経営破綻した日本航空(JAL)の再建にも尽力した稲盛和夫(いなもり・かずお)さんが2022年8月24日8時25分、老衰のため、京都市内の自宅で死去した。90歳だった。京セラが30日に発表した。

「経営の神様」としての知名度は中国でも高く、中国メディアも稲盛さんの経歴を詳報。中国の経営者にも稲盛さんの経営哲学に共鳴する人が多かったことを伝えた。

ファーウェイ、アリババ、ハイアール創業者も「稲盛哲学」に心酔

稲盛さんの中国での知名度があがったのは2007年ごろ。この年の米フォーチュン誌が発表する企業売上高ランキング「フォーチュン・グローバル500」に、稲盛さんが立ち上げた京セラとKDDIの2社がランクインしたことがきっかけだと考えられている。若手経営者を育てる「盛和塾」が10年に中国上陸し、著書「生き方」もベストセラーになった。

稲盛さんの影響を受けた中国の経緯者の中には著名な起業家もいた。

「毎日経済新聞」は、「『稲盛哲学』は生き続ける」の見出しで訃報を掲載。稲盛さんと中国の経営者とのつながりを

「稲盛和夫の経営哲学は、数多くの起業家や経営者に影響を与え、任正非(華為技術=ファーウェイ創業者)、ジャック・マー(アリババ創業者)、張瑞敏(海爾集団=ハイアール創業者)などの中国の起業家からも高く評価されている」

などと伝えている。ジャック・マー氏が、会社の成長ステージに応じて稲盛さんのもとを3回も訪れてアドバイスを受けたエピソードや、張氏が「もし、稲盛和夫にあと1日早く出会っていたら、ハイアールはもっと早く発展していただろう」と語ったことを紹介している。

「日本の経営4賢人」死去で「日本経済の『黄金時代』は、もう戻ってこないだろう」

「北京商報」は、稲盛さんが中日友好協会を通じて「西部開発奨学基金」を設立し、「日中友好に尽力していた」ことを紹介し、

「中国の伝統文化である陽明学と仏教文化を企業経営と実践に結びつけ、哲学的思考と実践的経営を融合させた『外国人』」

だとした。さらに、「日本の経営4賢人」として稲盛さん、松下幸之助さん、本田宗一郎さん、盛田昭夫さんの4人を挙げ、4人全員が鬼籍に入ったことで

「日本経済の『黄金時代』は、もう戻ってこないだろう」

と論じた。

「新京報」は、「『アメーバ経営』は多くの中国の有名企業で模範とされている」「日中友好の提唱者として有名だった」などと紹介。「経営4賢人」が死去したことで、日本メディアが「次の『経営の神様』を探している」として、稲盛さんが唯一無二の存在だったことを伝えた。

「稲盛和夫が残したものは、その伝説的な経営哲学だけでなく、軽妙な人生観、日本の侵略の歴史に対する反省、そして日中関係を重視したことである。 稲盛和夫のような思考レベルに達しなければ、誰が日本の新しい『経営の神様』になっても、かつての尊敬を得ることは難しいだろう」

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)