清水建設は8月29日、AIの画像解析技術やIoT制御の消火装置を活用し木材を使用した伝統的な重要建築物を守る防災システム「慈雨(じう)」を開発したことを発表した。

「慈雨」利用イメージ(同社資料より)

従来システムでは、一定の大きさの炎の大きさが無いとセンサーが反応しない、装置の一斉稼働による消化用水が不足するリスクなどが課題であったが、監視カメラにAI画像解析技術を導入する「慈雨」では、炎センサーでは捉えづらかったわずかな炎を検知。消火時においてもIoT制御技術で消火装置を一斉に稼働させず、出火部分に対象を絞ることで、消火用水の効率活用と沈火時の建造物破損を最小限に抑える。

同社は、システム用に扇形放水ノズルも開発、水圧による建造物の損壊を回避するために細心の注意を払っており、同社が江東区潮見に建設中の自社施設「(仮称)潮見イノベーションセンター」内に再建予定の旧渋沢邸に導入、約15台の監視カメラと60台の放水ノズルで建築物の火災の監視を行う。

国内外を含めてノートルダム大聖堂や首里城など貴重な伝統木材建築物が火災の被害に遭うなど、その防災対策に注目が集まっているが、国内では文化庁が「国宝・重要文化財(建造物)の防火対策ガイドライン」や「世界遺産・国宝等における防火対策5か年計画」を策定、2024年までに建造物の防火対策強化を発表している。ソリューションはそれらに対応するもので、同社は、システムを積極的に活用し伝統建築物保護に力を入れていくという。