相生学院がジュニアユース創設、発起人は入学したての1年生。「高校生と一緒に遊ばせておく」新プロジェクトの狙いとは?
強豪高校がジュニアユースを創設して中高一貫の強化を目ざすのは最近の趨勢(すうせい)だ。しかし、相生学院の場合は発起人が在校生で、しかもこの春入学してきたばかりの1年生だった――。
実は相生学院にはすでに生徒が起ち上げたスクールがあり、小学生を対象に安価で指導をしていた。発起人は今年卒業した一期生の白倉琉聖前主将で、スクール生の父兄からも「選手たちがみんなで教えてくれるので、コーチの数が多くて凄く丁寧」と好評を得ていた。
選手たちの指導への興味に点火したのは、上船利徳総監督だった。上船総監督は東京国際大在籍中から、アルバイトで子どもたちへの指導歴を持ち、自ら身を持ってアウトプットの重要性を痛感していた。
また相生学院サッカー部では、様々な業種の成功者を招きセミナーを実践しているが、「新しいことを学んだら、自分でもアウトプットすることが大切だ」と講師たちも異口同音に強調していた。こうして選手がコーチを務めるスクールが始まったわけだが、今度は新入生の高橋新太郎が「あの子たちが将来ウチに来てくれたら、きっと面白いですよ」と、バスを運転中の上船総監督に話しかけた。
「だったらジュニアユース作れば」
「いいんですか!」
「うん、お前が名前もつけていいよ」
とんとん拍子に話は進み、さっそく高橋が企画を起ち上げた。
「相生学院高校サッカー部1年生の高橋新太郎です。当高校が運営している小学生を対象とした『SALTOサッカースクール』と、これから起ち上げる『FCクレセール淡路島U-15』、『相生学院高校サッカー部』の3カテゴリーで同じコンセプトを持ち、日本一の育成ピラミッドを作ります」
今年9月には2度のセレクションを実施することが決まり、初代指揮官には清水エスパルス監督時代には天皇杯制覇などの実績を持つゼムノビッチ・ズドラブコが就任した。
上船総監督は、新チームについて様々な構想を温めている。
「基本的に試合日になる土日を除くジュニアユースの練習は、週に2度だけに止めます。要するに監督が指導をするのは2日間のみで、残る3日間は高校生と一緒に遊ばせておく。例えば、適当にチーム分けをしてミニゲームをしてもいい。サッカー界では弟が上手くなるという定説がありますが、お兄ちゃんと一緒に遊ぶことで、下の子が勝手に育っていくイメージです」
かつて南米や欧州で名手が育つ土壌となったストリートの世界を、選手たちに提供するわけだ。一方でゼムノビッチ監督は、こうしたトレーニングや遊びを見て個々の特徴を把握し、より個別のアプローチを描いている。
ちなみに相生学院出身の最初のJリーガー福井悠人がカマタマーレ讃岐と契約をした時に、讃岐の指揮を執っていたのはゼムノビッチだった。
「プロになれるのは、特別なものを持っている選手です。逆に平均レベルで何でもできるファミレスタイプならいくらでもいる。悠人は僕一人が認めて獲ったわけではありません。あのスピード、1対1のドリブル突破などをチームスタッフのみんなが認めたからプロになれたわけです」
そこで、中学年代からポジション別、さらには個々の特性を見極めて、どこを伸ばし、どこを修正していくかを伝えていく心積もりだ。
もともと相生学院のプロジェクトは「プロ選手の育成」に主眼を置き、ジェリー・ペイトン(元アーセナルGKコーチ)監督以下トップレベルの指導スタッフを揃えてきた。さらに指導者が上から教え込むだけではなく、選手同士が刺激し合い、高め合っていく伝統が重なっていけば、斬新な世界が構築されていくのかもしれない。
取材・文●加部究(スポーツライター)
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