先代クラウンの不振はアルファードの台頭が原因! 新型クラウンが挑む「次期アルファード」との仁義なき戦い
この記事をまとめると
■新型クラウンが4種類のモデルを用意したのは先代モデルが売れなかったからだ
セダン一本で勝負することができなかった新型クラウン
2022年7月に新型クラウンが発表され、合計4種類のボディを用意した。その内の3種類(クロスオーバー/エステート/スポーツ)は、SUV風のデザインだ。
クラウンがこのような異例の発展を遂げた背景には、先代型の販売不振がある。クラウンは1990年に1か月平均で約1万7300台を登録したが、2021年は約1800台だ。先代クラウンの売れ行きは、1990年の約10%まで下がった。
過去を振り返ると、マークII(後のマークX)、コロナ(同プレミオ)、カリーナ(同アリオン)など、かつて人気の高かったセダンが廃止されている。この流れに沿って考えれば、クラウンを廃止する方法もあっただろう。
しかしクラウンは、1955年に初代モデルを投入したトヨタの根幹車種で廃止はできない。そこで、海外を含めて好調に販売される上級SUVの新型車を開発して、そこにクラウンの車名を当てはめた。実際の開発経緯とは異なるが、ユーザーから見れば、このような図式になる。
そして、クラウンの人気が低迷した背景には、セダン需要の伸び悩みと併せて、アルファードの存在もある。2015年に現行アルファードが登場した時は、姉妹車のヴェルファイアが多く売られていたが、2017年のマイナーチェンジでアルファードが存在感を強め、ヴェルファイアの登録台数を追い抜いた。
2020年には、トヨタの販売体制が変わり、全店でトヨタの全車を扱うようになった。そうなるとアルファードは大量に売られ、2021年にはコロナ禍の影響を受けながら、1カ月平均登録台数が約7900台に達した。
この売れ行きは、小型/普通車の販売ランキングでは4位になる。ただし、カローラとヤリスはシリーズ全体の数字だ。ボディタイプ別に見ると、1位がルーミー、2位はヤリス(ヤリスクロスとGRヤリスは除く)、3位が僅差でアルファードとなる。アルファードの価格帯は、ルーミーやヤリスの2倍以上だから、超絶的な売れ行きだ。
クラウンvsアルファードの仁義なき戦いが始まる
そして、アルファードがここまで売れる理由は、現代のクラウンがアルファードになったからだ。外観に存在感があり、内装は豪華で、車内は後席を含めて広い。4名で乗車して快適に移動できる。この特徴は両車に当てはまるが、アルファードは背が高いから、クラウンよりも外観の存在感は強い。内装の豪華さは同等としても、車内の広さはミニバンのアルファードが勝る。
つまり、アルファードが絶好調に売れるのは、クラウンとの勝負に勝ったからだ。かつてクラウンを専門に販売していたトヨタ店からは「全店で全車を扱うようになって、当店でもクラウンからアルファードに乗り替えるお客様が急増した」という声が聞かれる。
そうなると、クラウンの時代は終わったともいえるが、前述のようにトヨタとしてはクラウンの廃止は絶対に避けたい。そこでSUV化という異例の展開になった。
アルファードについては、トヨタブランドの実質的な最上級車種に就任したから、高価格のグレードも用意される。ハイブリッドを搭載するエグゼクティブラウンジSは775万2000円だ。確かに高価格だが、先代クラウンにV型6気筒3.5リッターハイブリッドを搭載した最上級グレードも約740万円だったから、アルファードが際立って高いわけではない。
むしろ、アルファードを割安と受け取るユーザーも多く、好調な売れ行きに結び付いた。先ほどのトヨタ店は「政治家や企業のトップがアルファードを使う様子がTVニュースなどで流され、イメージアップに繋がった」と述べた。
アルファードハイブリッド・エグゼクティブラウンジSにツインムーンルーフ(12万1000円)、ITSコネクト(2万7500円)、寒冷地仕様(2万6400円)を加えると約800万円に達するが、それでも車内の豪華さ、広さ、充実した装備などによる快適性を考慮すると、買い得感が伴う。
加えてアルファードの場合、残価設定ローンの残価率(新車価格に占める残価の割合)は、3年後で55%と高い。これは数年後に高値で売却できることも意味する。一方、先代クラウンの残価率は、3年後でも40%台と低かった。法人ユーザーにとっては、資産価値の保全という意味でも、アルファードは魅力的だ。
仮に800万円のアルファードが3年後に新車価格の55%で売却できれば、その金額は440万円だ。3年間の価値の減少は360万円で済む。しかし、740万円のクラウンを新車価格の45%で売却すると、333万円だから、3年間の価値の減少は407万円に達する。つまり、先代クラウンは、高価なアルファードよりも、大きな値落ちが生じる可能性がある。
このように、身内のクラウンとの勝負を含めて、いろいろな好条件によってアルファードは売れ行きを伸ばした。果たして新型クラウンは、フルモデルチェンジを行う次期アルファードに勝てるのか?