野町 直弘 / 調達購買コンサルタント

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今回は、調達購買部門の地位向上のための方策と、そのポイントについて、調達購買部門のKPIやパフォーマンスの見せる化を含め、2回に分けて述べていきます。

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最近でも、調達部門長などから、「自分の会社では、調達部門ポジションが高くない。どうしたら、上げられるか」と聞かれることがよくあります。

調達購買部門の重要性や経営からの期待は、20年前から比べたら、圧倒的に高まっているでしょう。以前は、調達購買部員は、年配の人が殆どでしたが、今は若い人や女性が増えています。また、専門職としての専門的な研修や、調達購買部門としての人材育成プログラムも整備され始めています。

このように、徐々に調達購買部門の地位や重要性は高まりつつありますが、今でもこういう問いかけをされることが多いことから、やはり現在でも、ポジションが高くない企業も、多く存在するようです。

以前、私がこう問いかけられたら、「小さな成功事例を積み上げていくこと」しかない、と考えていました。しかし、様々な経験をしてきて、それだけではダメだということに気がつき始めています。それでは、どうすればよいのでしょうか。

一つ目は、調達購買部門として、ビジョンミッション、共有の価値観を持つことです。これも、自己満足のビジョンミッション共有の価値観に終わってはいけません。

社内ユーザー、マネジメント、サプライヤー、部内の声を吸い上げ、どのような役割機能を果たしていくべきかを定義し、その上で日々機能強化をすすめていきます。それとともに、これらの取り組みを、様々な手段で啓蒙していくことが、社内評価の向上にもつながるのです。

前回までのメルマガで、調達購買部門のDXについて述べましたが、その中で、調達購買部門の情報系DXは3つあり、その一つがマネジメント系DXで、具体的にはKGIやKPIである、と書きました。

私はKGI、KPIのデータ収集、分析、活用がマネジメントへの啓蒙につながると考えます。具体的には、KGI、KPIのデータ収集がKGI、KPIの設定にあたり、データ分析は、レポートの作成であり、データ活用は、KGI、KPIの目標設定と進捗管理にあたります。

本来、KGI、KPIとはマネジメントのニーズで、こういう指標、データを見たい、というものですが、一方で、部門としてマネジメントに、こういう成果を見せたい、という意味もあるのです。

これは、「成果の見える化」であり、調達購買部門視点では、「成果の見せる化」と言えます。しかし、マネジメント系情報の収集-分析-活用は、とても難しい取組みです。中でも活用のプロセスが上手くいません。

収集プロセスは、KGI、KPIの設定になりますが、従来から、私は「調達購買部門を、コスト削減額や率だけで評価する時代は、終わりにしましょう。」と言っていましたが、総合的なKGI、KPIの設定をし始めている、企業は徐々に増えています。

分析プロセスも、綺麗なレポートやダッシュボードでなくてもよいから、手間をかけずにレポートを月次で発行しましょう、というようなプロセスの整備が、進んでいるようです。

一番の問題は活用プロセスであり、これはKGI、KPIの目標設定と評価になりますが、日本企業でこれを上手く仕組み化しているところは、多くありません。これは、日本企業の従来からの文化や人事評価の考え方によるところが、その原因となっています。通常、目標は部門単位から部単位へ、部単位から課単位へ、課単位からグループ単位へ、グループ単位から個人単位へと、展開していくべきですが、グループ別や個人別の目標設定や評価自体が、自社のカルチャーや人事戦略にあわない、と言った声も良く聞かれることです。

しかし、測れないものは評価されません。逆に、計測するということは、評価することにつなげなければならないといえます。

このように、様々な問題はありますが、KGI、KPIの設定と「見せる化」は調達購買部門の地位向上につながります。

ある企業の事例ですが、過去に何度もボトムアップでKGI、KPIの設定、分析、活用を進めようと検討してきましたが、そもそも何を目的に進めるのか、など部内での反発や異論があり、中々上手くいきませんでした。

それが、社内の、あるプロジェクトをきっかけに、KGI、KPIの意義や目的を共有し、プロジェクトメンバーが尽力することで、今まで集計、レポート作成に一カ月以上かかっていたものが、3年後には5営業日までに、レポート作成の早期化を実現しました。

また、これによって、マネジメントに対しても、月次でKGI、KPIの達成状況を定期的に報告できるようになったのです。

この企業の調達購買部門は、これによって、マネジメントからの評価が改善され、褒められる機会が増えていきました。これによって、一層、KGI、KPIだけでない調達購買部門の活動や成果の「見せる化」の取り組みが進んでいったのです。

このように、できる所から「見せる化」を始めていき、それを積み上げて、継続していくことは、調達購買部門の社内での地位向上に非常に効果的なやり方と言えるでしょう。

次回は、調達購買部門のポジション向上の為の、もう一つの効果的な方法について、述べていきます。