ソフトバンクが配布したビジター応援グッズのピンク傘で応援するヤクルトファン【写真:福谷佑介】

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11、12日に行われた「タカガール・デー」はヤクルトファンにもグッズが配布された

 6月11日、12日に本拠地PayPayドームで行われたヤクルト戦で、女性向け人気イベント「タカガール・デー」を開催したソフトバンク。ここ2年は、コロナ禍における無観客や入場制限が続いたこともあり、この2試合は3年ぶりの満員御礼となった。スタンドは「タカガール・デー」のテーマカラーでもあるピンク一色に染まり、非日常の空気を生み出していた。

 この「タカガール・デー」は2006年に「女子高生デー」として始まり、イベント名を変えて続いている大人気イベント。キュートなデザインの「タカガール・ユニホーム」が来場者に配布される女性ファンのためのイベントとしてだけでなく、乳がんの撲滅、検診による早期発見を啓発する「ピンクリボン運動」の取り組みも並行して行われる意義深い2日間でもある。

 そんな今年の「タカガール・デー」で球団史上初、球界でも珍しいであろう取り組みが行われていた。それが相手チーム、今回であれば、ヤクルトのファンたちに向けたビジター応援グッズを開発、制作し、来場したヤクルトファンたちにも配布したのだ。

「対戦相手であるヤクルトのファンの方にも、年に1回のこのイベントを一緒に楽しんで欲しい」

 今回、ビジターファンに配布されたのは、ヤクルトでお馴染みの応援グッズである「傘」。神宮球場で応援歌「東京音頭」に乗って、色とりどりの傘が踊るのを見たことがある人も多いだろう。この傘を“ピンクリボン仕様”としてピンク色にした。これまでにもビジター応援席用のグッズ配布は行っていたものの、今回のようにオリジナル商品を開発したのは初めての試みだった。球団の担当者はその狙いをこう語る。

「今年は、ビジター球団も含め、より多くのファンの皆さまが、それぞれの楽しみ方をできる非日常のひとときを提供したいという想いがありました。対戦相手であるヤクルトのファンの方にも、年に1回のこのイベントを一緒に楽しんで欲しいと思い、ヤクルトと言えば“傘振り応援”が名物なので、ピンクの傘の配布を検討しました」

 年に1度、2試合しか開催されない「タカガール・デー」。球場がピンクに染まるこのイベントを相手球団のファンにも楽しんでもらいたかった。さらに、球団の垣根を超えてスタンドをピンク一色に染めることで、普段は味わえないような一体感を創出し、それをヤクルトのファンにも味わってもらおうとした。

球団の垣根を超えて「ピンクリボン運動」をより多くの人に…

 それだけではない。「タカガール・デー」の大きな目的の1つとして、先にも記した「ピンクリボン運動」がある。乳がんの撲滅、検診による早期発見は、球団関係なく全ての女性に対して啓発すべきこと。だからこそ「ビジターファンも含め、乳がん検診等の啓発が出来ればという想いもあり、デザインには“ピンクリボン”を取り入れました」と語っている。

 実際にヤクルトのファンからも好評だったという。球団担当者は「とても喜んで頂けました。ニュースを公開した直後から『ありがたい企画』『かわいい』というお声もたくさんいただき、とても嬉しかったです」と語る。残念ながら、この3連戦、ソフトバンクは3連敗を喫し、レフトスタンドではこの“ピンクの傘”が何度も踊ることになってしまったものの、ビジターのファンにも喜び、楽しんでもらおうという思いは通じた。

「ホークスファンはもちろん、ヤクルトファンにとっても、タカガールデーが楽しい野球観戦の思い出になって頂けたのであれば、とても嬉しいです」と担当者も胸を撫で下ろした今年の「タカガール・デー」。試合結果はさておき、ソフトバンクファンも、そしてヤクルトファンも、ピンクに染まったスタンドに魅せられた2日間だったのではないだろうか。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)