※この記事は2019年04月25日にBLOGOSで公開されたものです

NEXCO東日本をはじめとする高速道路を管理運営する4社などは、皇位継承に伴う10連休を含む11日間(4月26日~5月6日)の渋滞予測について、例年と異なって休日が10日間にわたって続くために混雑が分散される傾向だと発表した。

前例の無い10連休。NEXCO各社はどのように渋滞を予測したのか。関東の1都6県と長野県の一部を管轄するNEXCO東日本関東支社では、“渋滞予報士”を務める外山敬祐さんが前人未到の10連休の予測に挑んだ。「過去に例がなく、難しい予測となったが、少しでも渋滞を回避させるのに役立ててほしい」と話す。【岸慶太】

渋滞の“ヤマ”はなだらかになり、混雑は10連休で分散

全国的にみると、10キロ以上の渋滞は昨年同時期の328回から432回まで増える一方、30キロ以上の長い渋滞は昨年同時期の25回から17回まで減少する見込みだ。渋滞のピークは、下り線が5月3日(金)、上り線は4日(土)と5日(日)。

東日本関東支社によると、管轄する関東以北の高速道路では、11日間の利用車数は増加が見込まれる一方、混雑は分散される見込みだという。例年は子供の学校や仕事がある平日を挟むために前半と後半の連休に混雑が集中する“山”があったものの、今年は休日が10日間も続く影響で移動のチャンスが広がったためだという。

その影響で、10~29キロの渋滞回数は管内で114回と見込み、昨年同時期より19回増える。一方、30キロ以上の長い渋滞は8回と見込まれ、昨年同時期から4回減少する予測だ。

退位の30日・即位の1日は渋滞少な目 Uターンは6日が穴場

天皇陛下が退位される4月30日(火)、皇太子さまが即位される5月1日(水)の混雑状況はどうだろうか。両日が関心の高い国民的行事であり、改元に備えるための業務で出勤する人も一定数いるとみられることから、外山さんは「前回の皇位継承でもテレビが高視聴率だったことも踏まえれば、人の移動は比較的穏やかになるのではないか」と話す。

そのため、今年の大型連休については、30日と1日は平日となる例年に比べると渋滞は増えるものの目立った混雑は無いと仮定し、4月27日(土)~29日(月)の前半の3連休と、5月2日(木)~6日(月)の後半の5連休に分けて、過去の類似したデータをもとに予測を進めたという。

まとまった休みがとりやすい5連休に移動が活発になり、下り方面は3日(金)、上り方面は4日(土)、5日(日)にピークを迎え、30キロ以上の長い渋滞も2回ずつ発生する予測だ。

外山さんによると、「大型連休の最終日は家でゆっくりしたい人が多いのか、高速道路はすいていることが多い。上り方面のUターンは、6日がねらい目」という。

過去3年のデータに様々な要素を加味して予測 渋滞予報士のお仕事

NEXCO東日本は、1987年度から渋滞予測の情報提供を始めた。高速道路利用者にさらに渋滞情報へ関心を持ってもらい、快適な走行環境を作るため、現在は4人の社員が各地域で “渋滞予報士”として渋滞予測と対策をPRしている。

外山さんは2016年7月に5代目の渋滞予報士に就任。「天気予報と違って当てるだけではなく、利用者の行動を変えて渋滞を減らすまでが仕事」。そう語る外山さんに渋滞予測のメカニズムや渋滞への対策を聞いた。

渋滞とは、“時速40キロ以下の低速走行状態”になること。NEXCO東日本管内では、おおむね2キロごとに「トラカン(トラフィックカウンター)」と呼ばれる車両感知器が道路に設置されている。NEXCOが管理する高速道路ではループコイル式のトラカンが主流だ。

5.5メートル離れた道路舗装内に対になるようにループコイルが埋め込まれており、このループコイルが走行する車に反応する時間差から時速を割り出し、渋滞状況の把握に役立てられる。交通量、大型か小型かなど車種も計測している。

そうして計測された長年の渋滞情報が、渋滞予報士にとっての財産だ。渋滞が発生しやすい地点について、過去の渋滞発生時刻や解消時刻、ピークの時刻や渋滞距離などを三角形のグラフに表現し、過去3年分のグラフを重ねることで予測に役立てる。

大潮の日は千葉方面の潮干狩り渋滞に注意

ただ、外山さんは「これだけでは、予測としてはまだ70点」。例えば、祝日の土曜日か通常の土曜日かでも交通量は変わり、新たな道路の開通や天気、ETC割引の有無なども状況を大きく左右する。

「潮目の影響も重要です」。大潮の日には潮干狩りに向かう車で千葉方面が混雑する。善光寺(長野市)で7年に一度営まれる御開帳の際には7年前のデータが重要となる。その時々の状況を加味することが正確な予測には不可欠なのだという。

速度低下スポット「サグ」 上り坂でもスピード維持を

「渋滞ポイント サグ」――。そんな文字が記されて桃色と黄色が目を引く標識の設置をNEXCO東日本が進めている。サグとは“たわみ”や“たるみ”を意味する英語で、下り坂から上り坂にさし変わる凹部を指している。

渋滞の原因は、工事や事故が多いように思える。ところが、実際には交通が集中したことによるいわゆる「自然渋滞」が75%を占め、そのうち、約6割がサグや上り坂をきっかけに発生している。上り坂に気づかないドライバーが無意識に速度を低下させることで、後続の車も相次いで減速して渋滞が起きる。先頭を走る車のわずかな速度低下が、渋滞を引き起こすのだ。

「前の車との間隔を距離ではなく時間で計る、車間時間を気に留めてほしい」と外山さん。前の車が通過した標識や橋を目印にして、そこまでにかかる時間を常に頭に入れることが渋滞を防ぐコツだ。混雑時は、前の車が走っている地点に到達する時間が2秒になるように意識しながら、「つかず・離れず」を維持することが事故防止と渋滞予防の両面で重要だという。

高速道路は今や電車感覚で 迂回ルートで所要時間短縮

首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の9割が開通するなど、高速道路網は目まぐるしく進化を続けている。走行中の地点から目的地まで複数のルートがあるケースも少なくなく、外山さんは「ルートを選べば遠回りでも、時間が短縮されるケースは多い。都心の電車に乗るように、高速道路でもルートを選択する時代です」と呼びかける。

東日本が、お盆の2017年8月15日に実際の走行にかかった所要時間を分析した結果がある。高崎IC(群馬県高崎市)を出発し川口JCT(埼玉県川口市)まで、①関越道直進(103.7キロ)②圏央道経由(110.8キロ)③北関東道経由(118.6キロ)――の3ルートで向かい、到着までの時間を分析した。

最も走行距離の長い③の所要時間が100分だった一方、①と②では130分かかってしまった。外山さんは「道路上の情報板やサービスエリアの掲示などで、最新の交通情報をチェックして最適なルートへの迂回を検討してほしい」と話す。

道路状況をリアルタイムで確認し快適なドライブを

渋滞予測に加えて、リアルタイムで渋滞情報を知ったりルートを検索する便利な方法は無いのか。そんなときは、NEXCO東日本の無料アプリ「ドラぷらアプリ」が便利だ。目的地までの距離や料金について、複数のルートを検索することができ、所要時間は渋滞予測を踏まえた結果を得ることができる。現地状況を映したライブカメラも視聴できる。

NEXCO東日本はTwitterの公式アカウント「@e_nexco_kanto」でも、渋滞や通行止めの状況を伝えている。道路状況をリアルタイムで入手し、迂回ルートを探すことが快適なドライブのポイントになりそうだ。