「勝ちましたやんか~」パロディ腕時計″フランク三浦″ 保証規定に込めた時計屋の想い - 田野幸伸

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※この記事は2016年12月20日にBLOGOSで公開されたものです

1個5000円前後と手頃な価格で、思わずクスッと笑ってしまう遊び心たっぷりの腕時計「フランク三浦」。スイスの高級腕時計「フランク・ミュラー」と商標を巡り係争になったことは記憶に新しい。

この「フランク三浦」を手がけるディンクス(大阪市)の下部良貴社長に話を聞けるチャンスが舞い込んできたのは11月のとある日。新幹線に飛び乗り大阪・鶴橋へと向かった。

社員の息抜きから生まれた「フランク三浦」

-「フランク三浦」はどのように誕生したのですか?

下部:元々僕らは、セレクトショップに置いてある3万~5万円ぐらいのOEMブランドの時計や、自社でオリジナルの機械式の時計を作ったり、時計の並行輸入をやっておったんです。

機械式時計って、0.数mm幅がズレただけで、金型のパーツを全部やり直さなアカンとか、針が0.何mm短かかったとか、すごくストレスが溜まる商品なんですよ。

かなりストレスが溜まっていた夜に、お菓子食べながら、「なんか、おもろいことないかなー。『フランク三浦』とかあったら、おもろいんちゃうかなー」とポロッと言ったら、そこにいた4人のスタッフのうち、1人が爆笑したので「よし作ろうか」と。「えー!?」みたいな顔されて。

-それはいつのことでしょう。

下部:2010年に企画したんですかね。それまで5000円以下の低単価の時計は作っていなかったんですけど、ちょうどそのタイミングで、そういう時計を作る業者の社長さんが来て「なんか仕事ないの?」と。

サブプライムショックが過ぎたあとで、不景気だったんですね。僕がマジックでデザインを落書きして、「これ、ミニマムで作って」って言うて渡して、そこからです。

フランク三浦が出来上がってきて、営業マンが売りに行くじゃないですか。今まで、真面目な時計ばかりやったんで「どうしたの?頭がおかしくなったの?こんなん売れるわけないやん」って言われましたね(笑)。

-『フランク三浦』はあくまで本業ではないと。

下部:僕含め社員の息抜きになればいいなと思ってやっているんです。これに追われると本業の高額帯の時計販売に影響が出ますので。

-売り上げの規模的には?

下部:全体の売上に占めるパーセンテージは1桁ですね。全然売れへんでも、あげたらええかなぐらいでやってます。

東京・銀座の博品館が最初に目をつけた

下部:ネットショップでパラパラ売ってたら、一番最初に銀座・博品館の社長さんから連絡があったんですよ。最初、バイヤーの人からかかってきて。

大阪の人間って、博品館さん知らないじゃないですか。十三にも銀座ってありますし、戸越銀座もありますし。「そんなんええすから、先に金を振り込んでください」って冷たく言ったんですよ。

それはそこで終わって、もう1回かかってきて。「どうしても、うちの社長が…」って。「だから、もうええすから、FAXで注文くれて、そのまま送金してくれたらええっすよ」って感じでやって。

それでも何回もかかってくるから、周りに聞いたんですよ。東京の人とかに。「博品館ちゅうところから何べんも電話がかかってくるけど、なんすか?」って言ったら、「下部さん、普通は絶対に取引なんか出来ない大手だから。それは絶対お願いした方がいいよ」と。

でも、あれだけ無下にやっといて、こっちから言うのアレかなと思っていたら、今度は社長の直属の方から連絡が来て「1回社長がお会いしたい」と。「必ずオーダーはするし、うちのことをちょっと調べていただけますか?」と。

その時はもう調べた後やったんで、「大変失礼をいたしました。すぐに馳せ参じます」ということで行って(笑)。リアル店舗では銀座の博品館が最初でした。言い値で全種類置いてくれたら、毎週注文があって。

なんで博品館さんで売れたかっていうと、銀座で遊び歩いている人達って、クラブに行くときにお花買ったり、おもちゃ買ったりするじゃないですか。

-博品館のある銀座8丁目は高級クラブ街でしたね。

下部:最初に1本買っていってウケたから、次の日にお店全員の分をってドバっと買うんですよ。

-クラブのお客さんにとっては高くない買い物。

下部:当時、1個4000円ぐらいやったんで。20本買うても、10万円しないじゃないですか。高いお花買って何万円も使うより、これはインパクトあるでってのが、ツボにハマったんやと思いますね。それをきっかけに、富裕層と言われる方にブームが来ました。

-このパロディーの面白さが分かるのは、フランク・ミュラーのデザインが頭に入っている富裕層だったと。

下部:僕は完全オリジナルを主張しているので、それはコメントできないです(笑)。

-そうでした(笑)。

独特の「保証規定」にこめられた時計屋の想い

-フランク三浦の保証書。だいぶ攻めてますね。
[フランク三浦保証書兼取り扱い説明書兼保証規定]

フランク三浦は全てこちらの規定に判断に基づいて対応させていただきます。

●外装について 全て手作りで作っているため外装に多少の傷、文字盤に埃、異物、指紋まれにちぢれ毛などか混入しておりますがこれらは全て許容範囲内とお考えください。
ましてや裏ブタやベルトの傷などは当たり前のように付いておりすが苦情や返品、返金には一切応じることかできませんのでご了承ください。

●防水について フランク三浦は基本的に全て完壁な非防水です。ダイビングや水泳に使用されるのは勝手ですが確実に水分が浸入して時計が破壊されます。
汗、気圧、温度変化などありとあらゆる水気や空気中の水分にすらに耐えられませんのでガラスの曇りや水分の浸入には一切対応が不可能だとお考えください。30度以上の高温にも全く耐えられません。

●磁力、磁気について パソコン、モーター、ドライヤー、携帯電話など磁気を発生するモノの近くに置かないで下さい。すぐに壊れますし、磁気による故障は保証対応ではありませんのでご了承ください。

●ショックについて 落下などのショックによる耐久性は全く持ち合わせておりません。2センチ以上の高さから落とした、ほんの少し壁やドアに接触したなどで故障した場合も全て自己責任です。保証は適応されませんのでご了承ください。

●電池について 全てモニター電池です。電池切れはお近くの時計屋さんで交換を実費で行って下さい。購入後すぐに電池が無くなったとしても保証対応ではありませんのでご了承ください。

●ウレタンベルトに調整用の穴が開いていない⇒ご自分で開けて下さい。

●使用による皮膚のかぶれや湿疹などが起きた場合、直ちにご使用をおやめ下さい。時間は携帯電話・スマホ、駅の時計などでお確かめ下さい。

●一日の遅れや進みか大きい⇒電波時計を参考に毎曰時刻合わせして下さい。

●保証期間はご購入日より90日で、対象はムーヴメントのみとなります。

●送料負担につきましては保証期間内であっても全てお客様負担となります。
保証書紛失、販売日が明記されていないなどの場合、保証期間内であっても無償修理を受けることが出来ません。また修理が不可能の場合、代品交換もしくはあきらめて頂くことになりますが、ご了承ください。

下部:僕が30秒ぐらいで打ち込みました。ワーッと打って、清書してって感じです。これでもだいぶ縮めたんですけどね。

これはちゃんとした時計を作っている時にもらったクレームを元にしています。防水って書いてあるから風呂に入って、水が入って、着払いで送ってきて新品に変えろみたいなことを言ってくる人が年に数人いるんですよ。それも執拗になんどもなんども電話をかけてくる。

日常生活防水って水の中には入れないんですね。10気圧防水って書いてあっても、水道の蛇口から水をガッとかけると、実際のところ10気圧以上の水圧がかかってしまうんです。

クロールに耐えられるレベルとなると、20気圧ぐらいなんですよね。そういうのが全く一般の方に伝わっていなくって。

1万5000円の時計をルーペでず~っと見て、「ここに点があるからやり直し」というエンドユーザーさんもホントにいるんですよ。だから、僕はそのストレスを全部ここにぶち込みました。

-そういうことだったんですか。

下部:実際のところ、フランク三浦に防水性能はあるんです。日常生活の弱防水と防水用のゴムのパッキンを入れているので、すぐに水が入ったりはしないんですけど。ネットでみんな防水実験してるんでググってみてください(笑)。でも、どんなことがあっても、水が入ったら自己責任ねって。

落下にしても、ほとんど当ててないのに割れてたって人を何人も経験しています。「タダで替えろ」って。「替えるか、ボケー!」と言いたい気持ちを抑えて、ここにぶつけている。

-あの保証書の文言にはそんな背景があったのですね。

下部:1000万円の時計でも2000万円の時計でも、非防水の時計はいっぱいあるんです。「そんなことも知らんのか」ってここまで出かけてるんですけど、普段は絶対に言えないのでここに書いているんですよね。

プロ野球選手から広がっていった「フランク三浦」

下部:僕、PL学園野球部出身で、元ヤクルトスワローズの宮本慎也が同級生なんです。

彼が当時コーチ兼選手やったんで、投手が1勝したとかっていうたら、そいつの名前なり日付なりを彫ってプレゼントする用に10万円、20万円の時計のオーダーを受けていたんですね。

たぶん、年間2000万円分ぐらいは人に贈っていたと思うんですよ。毎月2~3回オーダーが来るんで、その時計を送るときに、箱の詰め物みたいにして、フランク三浦をバーっと一緒にフザケて送ったんですよ。もう電池切れて止まっているやつとか(笑)。

そうしたら、すぐに宮本から電話がかかってきて、「選手全員の分、1軍とスタッフ全員の分を買うから送ってくれ」と。

その時に「お金は一切いらんから。全員の分をあげるから、無断で写真を送って、ネットで使わしてくれ」って言ったんですよ。

彼はフロントの方まで繋がっていたので。「分かった。ホンマは絶対にアカンけど、球団にもしも言われたら、俺の名前を出したら1回は止まるから。それまではやっていい」っていうわけのわからんことをして(笑)。

そうしたら、ヤクルトさんが全く怒らなかったんですよ。そしたら広まるだけ、うわーっと広まるじゃないですか。

その後、2011年の暮れにロケットニュースさんが、「クリスマスで絶対贈ってはいけないナンバーワン」っていうことでフランク三浦を取り上げてくれて、ネットショップのリンクが貼られて、突然ドーンと売れて、楽天のランキングが上がって、ワーッとなった。

そういうのがいっぱいありましたね。めっちゃ人気のAV女優の方とかが、自分のサイン会をするのに、雑貨屋さんにたまたま置いてあったのを見つけて「これ買ってくれたら、私のサインあげる」とか言うて、DVD買う人に売りつけてくれたこともあったし。

ホリエモンさんが持ってくれて、それがFacebookでアップされたりとか、加藤ミリヤさんとか。ものすごいところに広がっていってしまって。

色んな人が遊んでくれたおかげですね。僕らは宣伝に全くお金を使わずにというか、売る気もなかったんですけど。

でも、フランク三浦を応援してくれる人って、捕まっている人が多いんですよね。高知東生さんもそうですし、麻生希さんもそうですし。みんな薬物で捕まるんですよ。テレンス・リーさんもそうですしね。でも、ブログとかバーっと広めてもうたほうが、自然とバズるんで。

-シャレの効いているものだから、みんなが面白がってくれる。しかも、SNSで広げられる。

下部:SNSの拡散が一番大きかったですよね。僕ら何もしてないですよ。これだけの広告費を自腹でかけてたら、多分1個20万円ぐらいになってるやろなと。

戦略的にやっていたら、定価は1万数千円くらいにすると思います。作り始めた時っていうのは、円が1ドル=80円。民主党政権で、日本は景気悪かったですけど、僕らは「いいぞ。原価安いぞ」っていう状況で。

これぐらいのコストやったら、いけるやろと思っていたら、1ドル=125円まで来て、原価1.5倍になって。さらに中国がバブっちゃって、人件費があがって。一時期は、売っても赤字。「これはもう受けん方がええな」ってなってました。

商標登録をめぐり、スイスの高級時計「フランク・ミュラー」と裁判に

-その後、「フランクミュラー」との商標登録を巡る裁判に勝訴します。「フランク三浦」の商標登録を取り消した特許庁の判断が覆った。

下部:僕らがフザケて「フランク三浦」を作っている状況の中で、大手の量販店さんから「商標登録は取ってるのか?」という声が挙がったんです。

僕らにも2万~3万円のオリジナルブランド時計が何個かあるんですが、そういう時も、必ず商標登録をしているんですよ。

お店さんとしては、商標登録をしている商品じゃないと安心して並べられない。ってことで登録をしたんですよ。申請が認められなかったらもう「フランク三浦」やめますって話をしていて。そしたら申請が下りたんですよね。

そこから大手の量販店にも並べたら反響がよくって、売れて広がって。広がったらスイスから英語で抗議のメールがバーっと来て、英語わからんから日本語で返して(笑)。

-スイスから直でメールが来たんですか。

僕らが取ったのは日本の商標登録なので、日本人は「フランク・ミュラー」と「フランク三浦」を絶対間違えるはずがないんですよ。漢字で「三浦」ってなってるし。

訴えた、訴えられた、という形式ではなくて、商標登録をして認められたものに対して、特許庁がフランク・ミューラーの申し立てを認めて、登録を取り下げたから「いやいやいやいや、ちょっと待って」ってなっただけなんです。

-一度通った商標登録がひっくり返った。

下部:そうです。特許庁が1回ひっくり返したんです。それで、「異議申し立てをしますか?」って連絡が来たんです。「そらしますよ」って。「これ、どうなるんですか?無かったことになるんですか?」って話になったので、商標登録が無かったことになったら、時計を卸しているお客さんとかに説明めんどくさいじゃないですか。

それに対して、ネットでは「言われたらやめたらいいのに」とか、「バッタモンや」とか「商標登録までして、そこまでして金が欲しいか」的なことも書かれるんですけど、僕らの中では、商標登録はルール上のことなので、それがもしも出来なかったら売る気もないし。元々フザケて作ったもんですから。

-「100万円を超える高級腕時計と、4~6千円程度の低価格商品の『三浦』を混同するとは到底考えられない」という判決がでました。※ミュラー側は判決を不服として最高裁に上告中。

下部:弁護士さんともお話をさせてもらって、「これは、サブカルやろ」って。「じゃあ、江戸川乱歩、どうなるの?」とか。模した人っていっぱいいてはるでしょ。

だから、判決が出たことに対しても、大喜びとかそういうことは全く無く、「よかった、よかった」みたいな感じだったんですが、取材の電話とかバンバンかかってきて。

判決が出る前の日まで中国に行っていて、帰ってきて39度の熱があったんですよ。それなのに、勝訴やなんや言うて報道ステーションに出ましたね。そしたらドン・キホーテやヨドバシの偉い人からもドワーっと電話が。

-「おめでとう」って連絡だったんですか。

下部:「なんで裁判のこと黙ってたん?」って。こういうことになってるって知らなかった。「いやいや、勝ちましたやん!ええですやん(笑)」って言うて。向こうもそのノリで笑ってくれて。

-裁判になったことは報道されていなかった。

下部:報道されてなかったですね。判決が出て、バーンとなったんで「どういうことですか~」言うて。「勝ちましたやんか~」言うて。

で、一旦終わって、朝まだ熱がある時に帰って、会社に出てシャッターを開けたら、4つか5つある電話が全部鳴ってて、FAX用紙が電話帳みたいになってて、全部注文書やったんですよ。

-爽快じゃないですか!

下部:いやいや、在庫がないんすよ。在庫が数千しかなくて。3日くらいで10万本ぐらいの注文が来て。そのFAXとメールに「申し訳ございません。在庫がありません」って返信する対応を営業マンがやっている横で僕はメディア対応をしていて。人生の中でもう経験できへんなみたいな怒涛の2日間でしたね。

-M-1で優勝した芸人のマネージャーみたいですね…。

下部:ホンマにそうですね。その時いたスタッフに聞くと「私、この仕事が終わったら辞めようと思ってました。」って最近告白されて「えー!」って。

運が悪かったんか知らないですけど、ちょうどその日に入社した子がいたんですけど、2日で辞めました(笑)。こんな状態で何も教えられないじゃないですか。来なくなりましたよね。申し訳なかったなと思ってます。

-この裁判報道で「フランク三浦」を知った人も多かった。

下部:そういうことですね。Google、Twitterのアクセスで、瞬間的に全部1位を取ったんですよ。そこで完全に在庫がなくなりました。4000円で売ってる時計にプレミアがついて2万円になって、3万円になって。

僕らが作り直しに2~3ヶ月かかったので、今年夏過ぎぐらいから、ようやくお店さんに並びはじめたのかな。

パロディーとパクリの線引

-10月にアメリカ村でパロディ商品の一斉摘発がありましたが、あれとは、性質が全く違う?

下部:それについてもいっぱい取材が来ましたね。NHKさんからもきました。「何か一言」って言われて、「いや、何もしゃべりませんよ、そんなん」って(笑)。

-さきほどアメ村をぐるっと回って来たんですけど、キレイにパロディ商品がなくなっていました。

下部:ねずみの国の人達を目隠ししたりとか、ルイ・ヴィトンが描かれてたりとか。これは、アカンやろと。ルールの線引きはないんですけど、アウトなものがいっぱいあって。

弁護士さんから聞いたところによると、「やめろ」という通達はあったと。そこをスルーして、ずっと放置していたから、民事で埒が明かないから刑事でいったんじゃないかって。

「僕もパクられます?」って話をしたら「そうならないように、こうやって話をしてるでしょ」と。

-でも、パロディか悪質かみたいなところって、全部曖昧じゃないですか。

下部:そうなんです。警察がそれを判断できるわけではないので、とりあえず、あるものを全部押収したんでしょうね。「アジデス(アディダスのパロディ)」みたいのは、アウトといえばアウトだし、セーフといえばセーフだし。

でもね、それを全部アウトにすると、世の中の同人誌と言われるものはアウトになりますからね。僕はドラえもんの最終回(同人版)大好きですから。

47都道府県応援モデル「ご当地三浦」

-この数のデザインを考えたんですか!?

下部:デザインをする時は、僕が4秒ぐらいでざっくり考えるんですよ。ぐわっと書いて、後はやっといてって。それ以上、手間がかかるんだったらやめようっていう。

ご当地モデルに関しては、以前、サイバーエージェントさんの「Makuake」というクラウドファンディングで、「これが何本いったら作りましょう」みたいなことがあって。「そんなんいくわけないやん」って笑っていたんですが、6県~7県ぐらいは目標金額をクリアしたんですよ。

ロット150本かな。これだと損益分岐点をクリアになるんで、それやったらやろうかという形で、僕らはリスク無く作ったんですよね。

その後金額が半分に満たなかったような県から「やってくれ、やってくれ」ってすごく言われて。「えー、こんな在庫持つの、絶対イヤヤ」という話をしたんですけど、作ることになりまして。

-出身地モデルを買いたくなりますよ。千葉の攻め方とかドキドキします。

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下部:埼玉県モデルなんて「池袋」って書いてある。でも、これ、埼玉県民の人が見たら、分かるらしいです。

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東京が一番売れるんかなと思ったら、神奈川が売れたりとか。都道府県単位だけじゃなくて、秋葉原モデルの「フランクアキバ」なんてのもあります。

-特にお気に入りの県ってありますか?

下部:そうですね、本当は埼玉だと思ったんですけど、秋田県が全然売れないので、秋田県ですね。押してもらえません?秋田、全く売れないですよ。どうなってんねん、秋田県!

-なんでですかね(笑)。

下部:僕、フランクアキバに対抗してフランク西成(大阪府)とか作りたいんです。「日本で唯一暴動が起きる町」とか「ホテル700円~」とか「ひったくり世界レベル」とか、そういう毒々しいの書きたいんですけど、ここまで広がると怒られますかね。

-売上ナンバーワンはどこの県ですか?

下部:神奈川です。理由は分からないんですけど、神奈川はず~っと売れてるんです。500本からオリジナルモデルも作れるので、いろんな地域の人から声がかかって欲しいなっていうのはありますね。

-アキバモデルも「秋葉原駅前商店街振興組合」とのコラボなんですね。

下部:本当にフランク西成作りたいです。「危ない、行くな!」とか、ピンクの文字盤に「飛田新地」とかね。地域モデルを作ってくれる人ってのは、基本的に在庫リスクを持ってもらうことになるんですけど、喜んでもらえる声は嬉しいですよね。 ちなみに私、西成区につい最近まで15年間住んでましたんで西成区民の方、自虐としてお許しください(笑)

「時計をしない人」から「時計をする人」に

-若者が時計を着けなくなっている昨今。時計屋さんとしてはどう感じていらっしゃいますか?保証書には「時間はスマホで確認しろ」なんて書いてありますが。

下部:マジメな話になるんすけど、40代、50代は時計がステータス性を持っていて、いい時計はめろとか、TPOで使えとか言うんですけど、今の10代、20代にはそんなこと通用しないですよ。

インスタで芸能人がつけてたとか、ドラマで誰かがはめてるみたいなことが重要で、時計専門のメーカーじゃなくて、本当にファッションブランド的な時計、シンプルな時計みたいなんがパーっと流行っているんですよね。

だからもう時計は「ブレスレット」。一生使うもんではなくて、服に合わせてとか。今風の服がこれやから、こういう風な…みたいな感じの単価帯で使うもんなんじゃないでしょうか。

どんな理由であれ、若い人に時計が浸透するのは、いいことかなって。

スマートウォッチが出てきて、時計は終わりや的なアレもあるんですけど、そうではなくて、色んな層がいてはるんで。「最初はフランク三浦やけど、頑張って貯めてフランク・ミュラーを買おう」みたいなツイートをみかけると、ほっこりしますね。

新シリーズ「ダニエル売れてんのん?」

-こちらが「フランク三浦」の新シリーズ。

下部:これ、新製品なんですけど、エラーで「フランク」じゃなくて「フラソク三浦」になってしまってるんです。

-狙ってフラソクで発注したんじゃないんですか…?

下部:ちゃいます!これ、新しい時計師キャラで「ダニエル三村」とか出てきて、いろんな人気のファッション時計の世界観を混ぜ込んで、フランク三浦にしては、結構企画に時間かけて「ダニエル売れてんのん?」って感じを狙ったんですけど、「フラソク三浦」って刻印打たれたんで、「もうどうでもええわ」って思って。ひどいですよ(笑)。販売ページもすごく頑張って作ったのに・・・・

逆にこれにクレーム入れられても、「いや、フラソクやから。フランクやないから」って言いますよ。偶然ですからね、ホンマに。

ーいつもと違うところに発注したんですか?

下部:いつもと同じ中国のメーカーです。でも全くカタカナが分かってない。「お前何年やってんねん」って全員がツッコミましたよ(笑)。

・フランク三浦公式オンラインショップ