ドコモが「オープンRAN」の現状を解説。外販では楽天がリード(石野純也)
▲オープンRANを導入すると、基地局を構成する各装置を自由に組み合わせられるようになる

ドコモは、オープンRANに関する記者向けの勉強会を開催し、その現状を解説しました。オープンRANとは、基地局などの無線設備をオープン化していく動きのこと。基地局は、無線ユニット(RU)や無線を制御する集中ユニット(CU)、分散ユニット(DU)などに分かれますが、これらを自由に組み合わせられるようにするのがオープン化の意味するところです。

ドコモは、4G時代からマルチベンダー構成の基地局を展開していましたが、5Gではそれを踏襲しつつ、サービス開始当初からオープンRANに準拠しています。例えば、20年10月に導入された3.7GHz帯と4.5GHz帯のキャリアアグリゲーションでは、富士通とNECという異なるベンダーの装置を使うことに成功。「オープンRANの環境で1000万を超える(5Gの)お客様を抱えているのは、世界でドコモだけ」(ドコモ 無線アクセス開発部長 安部田貞行氏)と、世界に先駆けて大規模な商用環境を提供しています。

▲ドコモの5Gは全基地局がオープンRANに準拠。キャリアアグリゲーションでも、異なるベンダーの基地局を使って周波数を束ねている

キャリアのネットワークというと、世界的には大手の通信機器ベンダーが丸っと自社の製品で固めてキャリアに提供するのが一般的でしたが、オープンRANのトレンドは、それを解体していく動きと言えるかもしれません。安部田氏はテレビとレコーダー、スピーカーなどに例えていましたが、キャリアが基地局の各要素を自由に選べることで、ベンダー同士の競争が加速され、コストの削減効果も見込めるといいます。

▲ドコモが海外キャリア向けに提供している検証環境。サーバー内のアクセラレーターやソフトウェアを別の会社のものに入れ替えても、きちんと動作する

特定のベンダーが開発した新機能をいち早く取り込めるのも、オープンRANの魅力。通信性能がいい無線機が開発されたら、そこだけを取り換えられるため、性能向上の恩恵を受けやすいというわけです。さらには、経済安全保障の考えから、特定の国の設備が使えなくなってしまった場合にも、ネットワークの全面入れ替えといったことをしなくて済むので、リスクを低減させることが可能になります。

オープンになっても仕様がバラバラだと、それぞれの機器をつなげることができません。その仕様策定を行うのが、O-RAN Allianceです。同アライアンスはドコモのほか、米国のAT&T、ドイツのドイツテレコム、フランスのオレンジ、中国のチャイナモバイルが設立した団体で、現在で世界各国のキャリアや通信機器ベンダーなど、計321社が加盟しています。ボードメンバーには、日本のキャリアとしてKDDIや楽天モバイルも名を連ねています。

▲海外キャリアと協力して18年にO-RAN Allianceを設立。現在は300社以上が加盟している

O-RAN Allianceでは、ホワイトペーパーの発表などを行っていますが、ドコモ自身もオープンRANを普及させるため、21年2月に「5GオープンRANエコシステム」(OREC)を立ち上げています。ORECは、グローバルのベンダー計13社と海外に向けてオープンRANの導入を促していく取り組み。成果として、1月に韓国キャリアのKTがORECと連携しながら、仮想化基地局(vRAN)などの検証設備を構築することが発表されています。

ドコモとしては、先行的にオープンRANに取り組んでいる強みを生かし、海外キャリアに検証環境を提供したり、コンサルティングをしたりすることで、収益化を目指す方針です。実際、2月28日から3月3日に渡ってスペイン・バルセロナ開催された「MWC Barcelona 2022」では、オープンRAN関係の展示がかなり多かったのが印象的でした。富士通やNECなど、通信機器ベンダーとしてはシェアの小さい会社が特に積極攻勢をかけている様子がうかがえました。

▲MWCでも、O-RAN関連の展示は多かった。富士通など、グローバルで見るとシェアの低い日本のベンダーも、海外での採用例が増えている

▲クアルコムもO-RAN関連製品を出展。写真はアクセラレーターカード

日本では、同様にオープンRANを生かし、海外キャリアのネットワーク構築を支援している会社があります。楽天モバイル傘下の楽天シンフォニーです。同社は、ドイツでMVNOからMNOへと鞍替えして新規参入を目指す1&1社からネットワーク構築を受注。米国の新興キャリアのDish Netoworksにも、ネットワーク監視や最適化を行うソリューションを提供しています。

オープンRANの導入だけでなく、完全仮想化まで行い、全国区のネットワークを提供したのが楽天モバイルの強み。その実績や運用ノウハウの一部もしくは全部を海外キャリアに提供していくのが、楽天シンフォニーの役割です。同社は、MWC開始直前の2月に、イギリス、フランス、ドイツの計3カ所に欧州拠点を開設。MWCでもイベントを開催し、CEOのタレック・アミン氏や楽天モバイルCEOの三木谷浩史氏が講演を行いました。

▲MWCでは楽天シンフォニーもイベントを開催。タレック・アミン氏が完全仮想化ネットワークの利点を強調した

▲基地局の開設やネットワーク品質の監視、さらにはユーザー情報の管理まで一元的に行える「Symworld」を披露した。

一方のドコモは、海外キャリアに向けた販路の構築がまだこれからといったところ。「オープンRANやvRANの比率は中長期的に拡大していくため、それに合わせた体制をこれから整備していきたい」(R&D戦略部 グローバル技術推進室長 大久保公博氏)状況です。オープンRANのビジネス展開という観点では、楽天モバイル&楽天シンフォニーが他社をリードしている状況と言えます。

ユーザー数や日本でのエリア展開などではまだまだドコモとは大差がつけられている楽天モバイルですが、ことネットワークの外販という点では新興キャリアとして完全仮想化ネットワークをいち早く構築した強みを生かせています。対するドコモはO-RAN Allianceをいち早く海外キャリアと共同で立ち上げ、標準化を推進してきただけに、こうした動きにどう対抗していくかは注目しておきたいポイントです。