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試合カンペキー!ナイスー!

最終日が激熱の展開となってまいりました。18日に行なわれた北京五輪カーリング女子準決勝で、日本のロコ・ソラーレが勝ったのです。過去に世界選手権での銀はあるものの、五輪では日本カーリング史上初となる決勝進出、銀メダル以上の確定。通例ならノンビリと夜の閉会式を待つ最終日に金メダルマッチがやってくる。カーリング見て、フィギュアスケートのエキシビション見て、閉会式を見てで大わらわの最終日です。

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準決勝スイス戦は、妙な自信がありました。相手は予選リーグを1位で勝ち抜けた強豪で、日本は4位で滑り込んだチーム。通常なら勝ち目の薄い戦いです。しかし、日本はつい前日に予選リーグ最終戦でスイスと対戦し、敗れていました。敗れた相手だからこそ、この再戦には勝てそうな予感しかありませんでした。

予選リーグ最終戦で対戦した際には、通常では考えられないようなミスショットを連発し、4-8で敗れていたロコ・ソラーレ。野球で言えば暴投で1点献上、暴投で1点献上、満塁から暴投で3点献上みたいなひっどい試合でした。各面に「120点、120点、100点、100点、80点、0点」と書いてある歪なサイコロを振るスキップ藤澤さんが0点の目を連発した、予選リーグでも最悪の内容でした。

そんな試合の翌日に同じ相手とまた試合をするというのは率直に言ってラッキーでした。違う相手ならば運もふりだしに戻りそうですが、あれだけのひっどい試合をしたあとに、もう一度同じことになるとは思えません。相手も楽勝のあとこそ逆の展開になりそうで怖いでしょう。気持ちの面ではすでにスイスに勝っています。

もちろん相手は実力者ですので、簡単な試合ではありません。カーリングの勝負を分けるほんの少しの差を握られ、有利な展開で試合を進められます。1エンドは後攻のスイスが互いに得点を取らないブランクとすることを選び、まずはスイスの狙い通りの立ち上がり。2エンドは相手のミスもあり後攻のスイスに1点を取らせることに成功しますが、3エンドはスイスに盤面をコントロールされ日本も頑張って1点を取るのがやっと。互角のスコアではあるものの、スイスのほうがややチャンスがある序盤戦でした。

3エンドなどはスイスにナンバー1・2・3まで握られ、真ん中に置きに行くしかないという形から、「相手の石を弾いてその場に残ろう」「やべっ!クソボール投げちゃった!コレ当たらんわ!」「自分の石だけ抜けて出ていったら3失点やぞ!」「ちょっと曲がれ!曲がれ!スイープで曲げろ!」というドタバタを経て、最終的には相手の石を2個弾き出すダブルテイクアウトをやってしまうという珍プレーも(※やる必要性ゼロ)。やらかし大ピンチでしたが、これが「回避できちゃった」のは、やはりいい巡り合わせが来ています。前日の試合のぶんまで運が溜まっています。

第4エンドはいい展開で相手に1点を取らせたロコ・ソラーレ。後攻を握って前半最後の第5エンドに向かいます。お互いに石を弾き出しながら4投ずつを終え、まだハウスのなかに石はひとつもありません。ここから日本はあらかじめ置いておいたコーナーガードの裏に石をため始めます。ハウスに石を3つためつつ、ガードを壊して前を広くしました。スイスは日本の石を全部出すのは無理と、ハウスのなかに最後の石を入れてナンバー2・3を持っている状態で日本の最後の1投を迎えます。

大きく開いた真ん中に入れれば労せず2点という場面でしたが、日本の選択はダブルテイクアウト。スイスのナンバー2・3を両方弾き出せば一気に4点が取れるぞと、手堅い2点より4点チャンスをつかみにいきました。ナンバー2の石に薄く当て、ほぼ真横にあるナンバー3にも当てる。決まれば4点、外せば1点という場面で、スキップ藤澤さんは120点満点のナイスショット。完璧な1投で4点のビッグエンドを作りました。

↓4番・藤澤五月さん満塁ホームランです!


折り返して後半戦、日本は第6エンドにスチールで1点を奪い、このあと「7エンド先攻」「8エンド後攻」「9エンド先攻」「10エンド後攻」という戦いやすい流れを作ることに成功。6エンド終了で6-2の4点リードは、じんわりと勝ちを意識する展開です。7エンドはスイスに3点を許しますが、それでもまだ6-5の1点リード。第8エンドは吉田夕梨花さんが連続ウィックで相手のガードを2枚無効化し、オープンな展開から後攻の日本がラクに1点を追加。これで7-5。

第9エンドはスイスに素晴らしいショットが出て、ナンバー1・2・3・4までを握られます。残るはスキップの2投ずつのみ。複数失点は避けられそうもない盤面でした。よくて2失点、悪ければ4失点まであるかというピンチです。ここでスキップ藤澤さんは「ダブルテイクアウトして自分の石もいい場所に残す」「ダブルテイクアウトして自分の石もいい場所に残す」という120点満点のショットを連発。この大ピンチを1点で凌いだのです。ノーアウト満塁からクリーンナップを三者三振といった守護神ぶりでした。今日は一度も「0点」の目が出ない、本物の藤澤さんの日です。

↓ピンチの第9エンド藤澤さんの1投目120点!


↓ピンチの第9エンド藤澤さんの2投目120点!


1点リードで最終第10エンドの後攻を握った日本。相手はガードを置いて石をためる展開を狙いますが、それをことごとく吉田夕梨花さんがウィックでずらして無効化し、オープンな展開を保ちます。夕梨花さんのこの日のショット成功率99%。先手先手で相手を封殺しました。石を弾き出していく展開から、最後はオープンなハウスの真ん中、赤色の円にかかる程度のストライクを入れれば日本の勝ちが決まります。試合中一度だけ取れるタイムアウトをこの1投のために使い、じっくりと時間をかけて投げた藤澤さんの最後のストーンはしっかりとハウスの中央部に止まりました。持ちタイムをほぼゼロまで使い切っての会心の勝利。ここぞの場面でドローを外してきた藤澤さんが、歴史の扉を開くドローショットを決めました!

ロコ・ソラーレ、ナイスーーーーーー!!



素晴らしい試合、素晴らしいプレーの連続でした。前日は「敗退と思い込んで」泣いていたチームが、そこから復活したことで自信と挑戦心に満ちていました。難しいショットを迷わず選択し、しっかりと決め切りました。簡単なショットをミスして迷いのドツボにはまっていた前日とは別のチームのようです。やはりこのチームは土壇場が強い。追い詰められて、もうやるしかないと開き直ったときが一番強い。国内代表争いもそうでした。

そういうチームのメンタルを巧みにコントロールしているコーチ陣がいるのでしょう。おそらくはナショナルチームのJ・D・リンドコーチが、あえてこういう状況へとチームを導いているのだろうと思います。リンドコーチはチームを信じ、強気を引き出していくような助言を与えるタイプです。予選リーグアメリカ戦では、失敗が少なそうな策に傾きかけたチームに、強気のダブルテイクアウトを指示し、結果として好結果に導いていました。



予選リーグ終了後、一番驚いたのはロコ・ソラーレが本心から「自分たちが敗退した」と思い込んでいたことです。ライバルの試合結果によって生き残りがあると記者が伝えても、吉田知那美さんは「(並んでも)LSDがよくないので上がらないと思います」と失笑しながら言い切りました。藤澤さんは「私の責任」「最後まで戦えてよかった」と泣きながら詫びていました。僕も含め、日本のファンや視聴者はみんな勝ち抜けの条件を知っていて、今まさに準決勝進出に近づいているというのに、本人たちは何もわかっていませんでした。

お詫びの会見が終わったあとリンドコーチが「クオリファイ」と準決勝進出を告げると、チームは一転して大喜びで崩れ落ちます。「嘘でしょ」「嘘だ」「本当に!?」という会話は真実の声色です。そして、改めての取材に対して吉田夕梨花さんは「LSDの結果もよくないと思っていたので、今日のさっちゃんの1本目かな」と勝ち抜けの要因を分析していましたが、これもまったくの的外れ。国際連盟が毎日ご丁寧にLSDの数値を公式サイトで発表しているのですが、その数値で電卓をはじけば「LSDがどうなってもカナダに逆転されることはもうない」というのが前日の時点でわかっていたのです。当日までわからなかったことではなく、前日の時点で確定していたことです。

それを本人たちは知らなかった。

コーチ陣が知らなかったとは思えません。他力本願の勝ち抜けを気にしても仕方ないことですが、条件がわからなければ最善手もわかりません。しっかり調べて、そのうえで「あえてチームには伝えない」を選択したのでしょう。スイス戦に勝つしかないと思わせてチームを崖っぷちに追い込んだ。勝てばヨシ、負けても逆転の生き残りがあれば、それをメンタルの起爆剤にしようと目論んだ。そういうことではないかと思います。

「負けろー」と祈りながら他力本願で生き残るよりも、一度死んで甦るほうが気持ちは軽やかに前を向くでしょう。チームの面々は準決勝進出を「ご褒美」と表現していました。もう試合もメダルもないと思い込んだところから、ご褒美の2試合を戦えるという喜び。その喜びによって、準決勝では開き直って攻めていくロコ・ソラーレのいいところが全面に出たように思います。守ったり恐れたりするのではなく、はしゃぎながら危険に突っ込んでいく、このチームのいいところが。

藤澤さんの手に書かれた「BE SATSUKI」「ENJOY」の文字。

すぐに忘れてしまいそうになるから、忘れないようにするための文字。

この文字を書いたのもリンドコーチだと言います。

このチームに大切なものを、上手に、爆発的に、密かにもたらした策士がたぶんいる。必死に条件を調べて「負けろー」をやっている側だからわかる巧妙な仕掛けに、この先の戦いにも大いに希望がわいてきます。金メダルのチャンスに欲をかき、震えるのではなく、最後まで「自分らしく」「楽しんで」で突っ走れれば、きっとイイ試合ができるはずです。よく寝て、よく忘れ、決勝を楽しんでください、ロコ・ソラーレ





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自分を超えられたのかどうかが、色でハッキリわかるのは最高ですね!