●Windows 11なら自動化できる

自動化で業務効率をアップできることはわかっているが

今のパソコンはパワフルだ。省電力でありつつも素晴らしいパワーを持っている。Webサーフィンは快適に行えるし、オフィススィートもサクサク動く。通常の事務仕事であれば今のパソコンのパワーで難なくこなせるだろう。

しかし、である。パソコンは快適に動いてくれているにもかかわらず、人の手を使った自動化できない作業がたくさん発生している。毎日特定のWebページを巡回して、人間が手動でデータを集めて、Microsoft Excelに整理して、ファイルサーバへアップロードする、といった類の作業だ。

パソコンで行っている作業なのだから、その作業は自動化できるはずだ。しかし、多くのオフィスワーカーが自動化できずに手をこまぬいている。自動化できることは何となくわかっており、そのほうが業務効率が上がることもわかっている(別の仕事をしたくないので、あえて面倒な手動の仕事を自動化していない場合は別だが)にもかかわらず、自動化に手を付けられずにいる。

それは単純に、その方法を知らないからだ。

プログラマーならできるが、ビジネスユーザーには難しい

ある程度プログラミングができる人なら、問題を解決するにはプログラムを書けばよいということに発想が至る。先ほどの例であれば、特定のURLからコンテンツを取得し、解析したいデータを抽出し、最終的にCSVデータに整理して特定のファイルへ出力する、といったプログラムを書けばよい。そこそこの経験があれば、この程度のプログラムを作るのは難しくない。この場合、プログラミング言語も主要なものであればどれを使ってもよいだろう。

APIを利用すれば、Webサービスに対して処理を自動化することもできるし、デスクトップアプリケーションに自動処理させることもできる。デスクトップアプリケーションのAPIを使うとなると、プログラミング言語が限定され、少し敷居も高くなってくるが、時間をとって調べればできると思う。つまり、できるできないの問題ではなく、時間の問題というわけだ。

問題は、業務を自動化したいと考えているビジネスユーザーや経営者と、プログラミングのコードが頭に浮かんでくるエンジニアとは、職種が異なるということだ。優れたプログラミングスキルと持ったエンジニアは常に不足しているため、プログラミングの経験がないオペレータや経営者が自ら自動化に取り組む必要がある。

プログラマーじゃなくても自動化を実現する方法はある

このようにビジネスの現場の自動化が滞っていることは世界中で問題視されており、解決へ向けた取り組みが進められている。その代表的な取り組みの一つが「ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA:Robotic Process Automation)」だろう。

実態を知らないとぼんやりした言葉だが、要するに前述したプログラミングをGUIベースでできるようにしたもの、と考えてもらえるとわかりやすいだろう。プログラミングの量が少ないことから「ローコード開発」、またはまったくプログラミングを必要としないものは「ノーコード開発」と呼ばれることもある。

GUIで自動化というと簡単なイメージを受けるかもしれないが、それほど簡単ではない。ある程度試行錯誤が必要だし、作業していてイラッとくることも多い。しかしそれでも、C/C++やC#でAPIを叩いたコーディングを行うのに比べると、圧倒的に作業量は少ない。GUIベースの試行錯誤は、コーディングする難しさと比べればとんでもなく簡単だ。

Windows 11からは「Power Automate」

「RPA」「ローコード開発」「ノーコード開発」を実現するためのソリューションやプラットフォーム、サービス、ソフトウェアは市場に多く出回っている。有償で製品が提供されていることが多い分野だ。

しかし、2021年に状況が大きく変わった。Microsoftがデスクトップ上の操作のフローをデザイン・実行するツール「Power Automate Desktop」をWindows 10において無償で提供すると発表したからだ。これにより、Windows 10ユーザーは簡単に利用できる自動化機能を体験できるようになった。

そして、Windows 11だ。MicrosoftはWindows 11に標準でRPAの機能を搭載した。そのアプリケーションが「Microsoft Power Automate」だ。Power Automateを使うことで、Windows 11におけるGUIの操作を記録して、あとから再生することができる。記録した操作を編集することもできるし、最初から操作を組み立てていくこともできる。

Windows 11に搭載されているPower Automateの実態は、ビジュアルプログラミング言語に似ている。子供向けの学習に使われることが多いビジュアル言語は、フローや構造が図示できるようになっており、ブロックを組み合わせるようにプログラミングを行う。Windows 11のPower Automateもそれによく似ている。

Power Automate自体はある程度のプログラミングを行うことになるので、ノーコードではなく「ローコード」のプラットフォームという位置づけだ。使いこなすにはある程度の試行錯誤は必要になる。しかし、それはプログラマが通常のプログラミングで行う労力と比べると遥かに小さい。オペレータや経営者の前提知識でもある程度の試行錯誤でこなせるようになるレベルだ。これを使わない手はない。



Power Automateをセットアップしよう

Windows 11にはPower Automateがインストールされているが、利用するにはセットアップが必要だ。少なくともMicrosoftアカウントを持っているか、またはそれに類する企業アカウントまたは教育機関アカウントが必要だ。

スタートメニューに「Power Automate」と入力すれば対象が表示されるので、これを選択して起動する。次のように起動へ向けた準備が行われる。

Power Automate起動時 - 更新処理


最初にMicrosoftアカウントによるサインインが求められるので、アカウントでサインインする。

Microsoftアカウントでサインインが必要


アカウントを入力してサインインを実施


あとは、最初の設定を行って起動すればよい。

Power Automate - オプションデータの収集設定


Power Automate - 国/地域の選択


Power Automate - クイックツアー


Power Automate - クイックツアー


Power Automate


そもそも「なぜデスクトップのオートメーションにMicrosoftアカウントが必要になるか」だが、これはPower Automateがもともとはクラウドベースのソリューションだからだ。デスクトップ向けの機能はその中の一つである。このため、利用するにあたってMicrosoftアカウントが必要だ。Microsoftとしてはデスクトップ向けのPower Automateを無償で開放することでユーザを増やし、エンタープライズユーザーによるPower Autoamteサービスの購入につなげたいという狙いがあるとみられる。

なお、セットアップ時、次のようにMicrosoft Edgeに「Microsoft Power Automate」拡張機能がインストールされる。Power Automateを使っていくならここで「拡張機能をオンにする」を設定しておく。

Microsoft Edge - Microsoft Power Automate拡張機能


Windows 11の操作をレコードし、フローの作り方を学んでいく

Power Automateを起動したら、フローを新規作成して自動化したい操作を構築していく。最初はWindows 11のGUI操作をレコード(記録)し、それを編集することで「Power Automate」に慣れていくのがよいと思う。

Power Automateを使うとさまざまな作業を自動化できる。まずは、毎日自分が行っていることをPower Automateで記録し、そこからフローの作り方や自動化の方法を学んでいこう。一気に学ぶ必要はない。日々の仕事の中でできる空き時間にでもこの連載を見て少しずつ試していってもらえればと思う。

GUI操作の自動化ができると、日々の操作で発生するストレスを低減することができ、当然ながら、業務の自動化も実現する。そのうち、どうすればPower Automateで自動化できるか、考えるようになるだろう。これはなかなかに使える機能なのだ。

「Power Automate」を使ったことがなければ、これをキッカケとして一度使ってみてもらえればと思う。

○参考

Introduction to Power Automate for desktop - Power Automate | Microsoft Docs

Browse all - Learn | Microsoft Docs

Power Automate Desktop - Power Platform Community

Product updates | Power Automate Blog