マイホームは、人生最大の買い物と言われています。大きな決断をするわけですから、真剣に条件や予算を検討することになります。既婚者の場合、最近は共働きが当たり前になっているので、夫婦で買って夫婦でローンを返すという家庭も多いでしょう。
互いに希望条件を挙げていくと、夫婦の意見が合わないことがある、ということをよく耳にします。株式会社AlbaLinkが実施した「家を購入する際の意見の相違に関する意識調査」を見ても、夫婦で意見の相違があったことが分かります。

意見が合わないTOP2は、「間取り」と「立地」?

調査で、「家を購入する際に夫婦で意見の相違があった」と回答したのは56.8%(「たくさんあった」15.2%+「少しあった」41.6%)。実に過半数が、意見の相違があったと認識しています。

では、どんな点で意見の相違があったのでしょう? 最も多いのが「間取り」、次が「立地条件」という結果でした。

出典:AlbaLink「家を購入する際の意見の相違に関する意識調査」

間取りについては、広さの取り合いになるので、何を重視するかで違いが出るのでしょう。予算に限りがあるので、希望の立地で探すと広い家に手が届かないことがあります。一定の広さであれば、リビングを重視するのか部屋数を重視するのかを選ぶ必要があったり、部屋数が限られるなら、リビング・ダイニングと寝室のほかに子ども部屋、書斎(ワークスペース)、家事室などのどれに充てるのかを選ぶ必要があったりします。

かつて私が取材したお宅では、夫が自分の部屋を希望したもののかなわなかったという事例が多くありました。テレワークが普及した今なら、希望がかなったかもしれません。子どもの成長によって部屋の割り振りが変わる場合もあり、どんな間取りの家を買うかはなかなか難しい問題です。

また、立地についても、通勤に便利な場所にするのか、子育て環境のよい場所にするのか意見が分かれるところです。実家が近距離にある場合は、妻が将来の子育てを考えて自分の実家の近くを希望することもあります。間取りにしても立地にしても、どちらの希望にも、もっともな理由があるので、調整するのが難しいというところでしょう。

専門家の立場から言うと、4位の「予算や住宅ローン」の額については、しっかりすり合わせておきたい点です。最近は、新築住宅でもさまざまなオプションがあったり、中古住宅を買ってリフォームをする人が増えたりしています。新たに買う家具家電の予算も必要です。どうせならあれもこれもとなって、予算管理がルーズになったり予定より多くの住宅ローンを借りることになったりすると、その後の家計に大きく影響してきます。住宅ローンの返済に関することは、後悔するだけでは済まない場合もあるので、夫婦間の意見の相違のないようにしたいものです。

夫婦の意見が合わないとき、どうする?

では、意見が合わなかったときにどうしたらよいのでしょう? 先ほどの調査で、夫婦で意見が合わなかったときの解決策を聞いたところ、表のような結果になりました。

出典:AlbaLink「家を購入する際の意見の相違に関する意識調査」

調査結果では、「配偶者の意見を採用した」が最多で、男性(夫)が女性(妻)の意見を採用したほうの比率が高いという結果となりました。

筆者がお勧めする解決方法は、僅差で2位になった「納得するまで話し合う」と5位の「第三者のアドバイスを受ける」です。長い時間を過ごし、団らんや子育ての場にもなりうるマイホームですから、どちらかが意見を通したり、簡単に妥協したりすることはお勧めできません。特に「自分のほうがお金を多く出している」といった理由で意見を通そうとするのは、かえってこじらせる場合もあります。

実は、マイホームを買うことは、「夫婦の人生プランなどを話し合う場」になることが多いのです。それまでは独立採算制だったものが、マイホームの際に初めて互いの収入や貯蓄の額を知ったという人もいました。また、子どもはいつ頃を想定するか、教育方針はどう考えるか、仕事はどうしたいかなど、長期的な人生プランを初めて真剣に話し合ったという人もいました。

間取りや予算の希望を考える際に、子育てをこうしたいとか、週末に家族とこう過ごしたいといった考え方が背景にあるものです。なぜその希望条件を挙げるのかをじっくり話し合い、たとえば、キッチンは妻が多く使うので妻の希望を採用しようとか、子どもをこう育てたいのでこの立地にしようなどと、互いに納得したうえで決めていくのが良いと思います。

第三者の冷静なアドバイスも参考に

マンションか戸建てか、駅近のマンションか住環境の良いマンションか、などと意見が合わない場合で考えてみましょう。両方の物件を夫婦で見学に行って、不動産会社にそれぞれの違いを聞いたり、実際に見比べて違いを確かめたりすると、気づかなかった視点を発見したり、印象とのズレを感じたりということもあります。

予算や住宅ローンなども、金融機関の窓口や無料のファイナンシャルプランナー相談会などで相談すると、新しい気づきがあったり考え方に自信を深めたりすることも多いでしょう。ただし、専門家のアドバイスも一般的な場合を想定したものなので、あくまで助言として受け止め、自分たちの場合はどうかを判断しましょう。

マイホームを購入した知人などの助言も参考になりますが、それぞれの家庭で事情も異なるので、あくまで参考意見の範囲で。そのうえで、マイホームでどう暮らしたいかを夫婦で話し合い、納得する結論を出すというのが理想的な解決法だと思います。

「意見が合わないときこそ、夫婦の人生観を共有するチャンス」ととらえ、楽しい生活が過ごせるマイホームを手に入れてほしいものです。

執筆者:山本 久美子(住宅ジャーナリスト)