絶滅した動物として有名なマンモスは約400万年前に登場し、1万年前頃に絶滅したと考えられてきました。ところが、マンモスの一種でありユーラシア大陸の広範囲や北海道、北米大陸に生息していたとされるケナガマンモスのDNAから、マンモスが実際には5000年前まで生き延びていた可能性が示されています。

Collapse of the mammoth-steppe in central Yukon as revealed by ancient environmental DNA | Nature Communications

https://www.nature.com/articles/s41467-021-27439-6

Woolly mammoths and humans coexisted in North America much longer than experts thought | Live Science

https://www.livescience.com/woolly-mammoths-in-north-america-longer

北米大陸で発見された「ケナガマンモスのDNAの断片が含まれる凍った土」が、過去10年間にわたり実験室の冷凍庫の中で保管されていました。このケナガマンモスのDNAを、オンタリオ州マクマスター大学人類学部の研究員であるタイラー・マーチー氏ら研究チームが分析した結果、マンモスは現在のカナダ・ユーコン準州周辺で約5000年前まで生存していた可能性が明らかになっています。



研究の主任著者であるマーチー氏は、「生物は生涯を通じて絶えず細胞を放出しています」と語っており、実際、人間は平均して1時間あたり約4万個の皮膚細胞を体から分離しているそうです。これは人間が常にDNAの一部を周辺に放出しているということを意味します。

細胞を周囲に放出しているのは人間だけでなく、動物・植物・菌類・微生物なども同じです。ただし、生物から分離した体組織が環境に残ることはほとんどなく、その理由は微生物が食べてしまうため。しかし、一部は少量の鉱物堆積物と結合し、今回のケナガマンモスのDNAのように長期にわたって保存されるケースもあります。

マーチー氏によると、研究グループはユーコン準州中央部の永久凍土層から採取した土壌サンプルを分析しています。土壌サンプルから収集されたケナガマンモスのDNAの断片はひとつひとつは非常に小さなものですが、土壌中に大量の断片があったため、多くのDNA情報を集めることができたそうです。DNAを分析することの利点について、マーチー氏は「化石化しない傾向のある生物を分析できること」を挙げています。



研究チームが3万年前から5000年前の土壌サンプルを分析したところ、更新世から完新世(1万4000〜1万1000年前)あたりに絶滅したと考えられてきたマンモスが、これまでの想定よりもはるかに長く北極圏で生存していた可能性が明らかになっています。マンモスは更新世から完新世への移行により急激に個体数を減らしたものの、このタイミングで完全に消えたわけではないことが示唆されています。

研究グループは永久凍土の土壌サンプルはこの種の古代DNAを分析する研究にとって「理想的」であると述べました。しかし、北極圏の氷は急激な温暖化により溶け続けているため、「氷が溶けることで古代に関する貴重なデータを永久に失うこととなります」とマーチー氏は語りました。