Facebookのアカウントを削除したいと考えているなら、“悪いタイミング”というものは存在しない。利用頻度が減っていて久々にログインすると、いわゆるネタ扱いされるようなニュースが再び拡散していたり、数人の遠い知り合いの近況報告を読むはめになったりするだろう。それを考えれば、Facebookとの関係を断ち切るなら、いまが絶好のタイミングに思える。

「Facebookを“退会”したい? データを保存してアカウントを「完全に」削除する方法」の写真・リンク付きの記事はこちら

『ウォール・ストリート・ジャーナル』の連載記事によると、フェイスブック(10月28日にメタに社名変更)は自社サーヴィスが引き起こしたさまざまな悪影響についての社内調査を、再三にわたって無視してきたとされている。2021年10月4日には長時間にわたるサーヴィス停止も発生し、世界中のインターネット活動の多くがたった1社を経由する現状には問題があると人々に思わせた。

それに全体的に見てFacebookは、おそらく社会にとってあまりいいものとは思えないという一般的な感覚もある。そうなれば、ある時点で「もう十分」となることだろう。

こんな領域まで達してしまった人たちのために、この記事ではFacebookを完全に退会してアカウントを削除する方法と、やめたあとにフェイスブックによる追跡を制限する方法などを紹介していく。

Facebookアカウントを「削除」する方法

実際のところFacebookアカウントを削除する手続きをしたつもりでも、実際には削除されていないこともある点を確認しておきたい。

例えば、スマートフォンからFacebookのアプリを削除した場合はどうだろうか。精神衛生上はいいかもしれないが、機能的には意味がない。

Facebookアカウントの利用を解除する場合はどうだろうか。これなら少しはましで、Facebookからほぼ姿を消すことができる。だが、まだ個人のデータはFacebookに残されており、あなたが戻ってくる日まで辛抱強くいつまでも待ち続けている。

これで十分という人もいるだろう。完全な禁煙ではなく、ニコチンパッチを欲することもあるかもしれない。間違った答えなどないのだ。

Facebookから完全にアカウントを削除するには、まず最初にメインページの右上にある下向きの三角形のアイコンから「設定とプライバシー」「設定」の順に進む。そこから左側に一覧表示される設定リストから、「あなたのFacebook情報」を選ぶ。次に中央のメニューに戻っていちばん下までスクロールしていくと、ようやく「利用解除と削除」にたどりつく。やれやれだ。

これをクリックすると、ふたつの選択肢が示される。「利用解除」と「削除」だ。標準では利用解除を選ぶことになるので、そのまま進んで「アカウントの利用解除へ移動」をクリックする。ここでパスワードの再入力を求められるので、入力するとページのロックが解除され、利用解除の理由を選択するよう求められる。

そこではFacebookからのメール(友達からグループに参加するよう招待された──といった通知で、休眠中の“ゾンビアカウント”にも届く)の停止や、「Messenger」の利用継続も選択できる。これらをすべて選択して「アカウントの利用停止」の青いボタンをクリックしたら、それで終わりだ。

終わりと言っても「完全に」ではない。利用解除しても、実際には大したことはできていない。友人に送信したメッセージは相手の受信箱にまだ残っているし、あなた自身もまだ相手の友達リストに表示される。

それに先ほども説明したように、Facebookはあなたのすべてのデータをいつまでも保持し続ける。アカウントを再開するには、そのアカウントにログインするだけで済む。これではまるで「ニューヨークからの脱出」という壮大な評論を書きながら、ニューヨーク中心部のアストリア地区にある小さなワンベッドルームのアパートメントに法外な家賃を払い続けるようなものだ。

Facebookアカウントを「本当に削除」する方法

本気でFacebookをやめる準備が整ったら、まずはサーヴァーに保存されているデータのなかにとっておきたいものがないか考えみてほしい。

2000年代後半にFacebookをフォトアルバム代わりに使っていたかもしれないし、とっておきたいメッセージがあるかもしれない。あるいは、かつて一度だけ素晴らしい投稿をしたことがあるかもしれない。もしあるなら、それはどんな投稿だったか改めて見てみたいものである。

重要な点は、Facebookのデータにはアカウントを完全に削除する前に保存したり、あるいはほかのサーヴィスに移動したりするだけの価値があるかもしれない、ということだ。そのための作業は難しくないが、少し手間がかかる。

まずはメインページの右上にある下向きの三角形のアイコンから始めて、「設定とプライバシー」「設定」の順に進む。次に、左側に表示される設定のリストから「あなたのFacebook情報」に移動する。

データを移動させたい先がオンラインストレージなら、「あなたのFacebook情報のコピーの転送」で9つある転送先から選ぶ。転送先としてはDropbox、Google フォト、Backblaze、Bloggerなどが用意されている。

転送先を選んだら、転送するデータの種類と量を選べる。例えば、写真なら日付の範囲を設定したり、特定のアルバムを選んだりできる。これらの設定が終わったら転送先のサーヴィスに接続し、データを移動できる。写真と投稿とで転送先を別の場所にしたい場合は、転送先の数だけ手順を繰り返す。

Facebookにあるデータをすべてダウンロードして、手元のストレージに保存することもできる。その場合は「個人データをダウンロード」に移動する。データのカテゴリーは44あるが、このすべてが必要ということはないだろう(ほとんどの人がバグ満載のプログラム履歴をダウンロードすることなくFacebookに別れを告げられるはずだ)。

このときに、なくても困らないデータのチェックを外しておく。日の付範囲は「すべての期間」に設定し、ダウンロードしたデータをあとで開けるようにファイル形式を「HTML」に設定する。「メディアの品質」が「高」に設定されていることを確認してから、「ファイルを作成」をクリックする。ダウンロードの準備が整うと、Facebookから通知が届く。

この通知が届いた時点で、ようやくアカウント削除の準備完了だ。利用解除の場合と同じ手順(「設定とプライバシー」から「設定」「あなたのFacebook情報」「アカウントの利用解除と削除」の順に進む)をたどっていき、今度は「アカウントを削除」を選んで「アカウントの削除へ移動」へと進む。

ここで、「Messengerの利用を続けるなら削除ではなく利用解除するように」と注意を促すメッセージが表示され、削除する前に自分のデータをダウンロードするよう求められる。次に「アカウントを削除」を選んでパスワードを入力し、「次へ」と進む。これでようやく完全な削除が一応は完了だ。

しかし、まだ完全に削除されたわけではない。万が一気が変わったときのために、Facebookには30日間の猶予期間が設けられている。30日以内なら、アカウントにログインして「削除をキャンセル」を選べば元通りになる。

なお、アカウントのすべてのデータを実際に削除するには90日かかるという。災害などからの復旧用にデータがバックアップされており、データの一部がそこに保存される可能性があるからだ。とはいえ、これは「削除されたもの」とみなしていいだろう。

フェイスブックの追跡を制限する方法

これでミッションを完了したと思っているかもしれないが、実はまだ終わっていない。Facebookのアカウントを削除したとしても、InstagramやWhatsApp、Messenger、Oculusといった同じグループ内のアプリから“追跡”される可能性があるのだ。

仮にこれらのアプリをひとつも使っていなかったとしても、その広大な広告ネットワークによって、ほとんどのインターネットユーザーに関する洞察を得ることができる。ユーザーがFacebookに登録していたかどうかは関係ないのだ。

残念なことに、ここからの選択肢は非常に限られている。できることは、一部のターゲティング広告活動のオプトアウトを業界団体「Digital Advertising Alliance」が運営するサイト「YourAdChoices」から依頼するか、「DuckDuckGo」のようなプライヴァシーに配慮したブラウザーを使うことくらいだ。

あるいは、所有している電子機器すべてを海に放り込んで、自然への回帰を受け入れる。つまり、Facebookの運営会社からの追跡からは、どうやっても逃れられないのだ。

それでも「アカウントの削除」は、いいスタート地点と言っていい。そしていまが、その絶好のタイミングのようにも思える。

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