●Windows 11搭載PCを買ったら最初にやっておきたいこと【アプリ編】

PCの手入れが終わったら、アプリのインストールを

新しいPCを購入して最初の手入れを行ったら、次にやるべきことは、利用するアプリケーションのインストールや設定だ。 利用するアプリケーションは業種や用途によっていろいろだ。面倒な作業ではあるがが、PC購入時のタイミングでまとめて作業しよう。作業の際は、設定内容を記録しておくことと、不要なアプリはインストールしないことに留意しよう。

アプリケーションは最初は調子よく動いてくれるが、使い続けていくと動作がおかしくなることがある。そうした場合の解決方法の一つが、データのバックアップを取ってからのアプリケーション再インストールだ。この場合、最初に行った設定の記録があると、手間が桁違いに楽になる。「ほかのPCをセットアップする」「PCを工場出荷時の状態に戻す」といった作業を行うときも、この記録が役に立つ。面倒ではあるが、要点だけでよいので設定内容は記録しておこう。

また、新しいPCはスペックが上がっていることが多く、いろいろなアプリケーションをインストールしてみたくなるものだ。しかし、使わないアプリケーションはインストールしないほうがよい。システムの見通しが悪くなるし、バックグラウンドで動作してPCリソースを消費するかもしれない。本当に必要なアプリケーションだけをインストールしよう。このタイミングでこれまで使わなかったアプリケーションのインストールを止めることも検討しよう。

本稿では、Windows 11搭載PCをビジネスや開発で利用することを前提に、アプリケーションのインストールと設定の要点を取り上げる。作業の際の参考にしてもらえれば幸いだ。

本稿では、「DELL XPS 9305」で行った作業をもとに話を進めていく


ビジネス系アプリケーションのインストール

VPN

テレワークにおいて欠かすことのできない機能が仮想プライベートネットワーク(VPN: Virtual Private Network)だ。VPNを使っている場合には最初に設定と動作確認を行う。

VPNは設定アプリケーションから「ネットワークとインターネット」→「VPN」→「VPNを追加」を選択して作成する。会社やVPNサービスプロバイダから指定されているデータを記入する。

設定アプリケーション:「ネットワークとインターネット」→「VPN」→「VPNを追加」を選択


会社やVPNサービスプロバイダから指定されているデータを記入してVPNを作成


これで接続できない場合は調整を行う。「ネットワーク接続」を起動し、作成したVPNを選択して「プロパティ」を開く。

ネットワーク接続:作成したVPNを選択して「プロパティ」を開く


認証が「拡張認証プロトコル(EAP)を使う」になっていると思うので、ここを「次のプロトコルを許可する」に変更し、いくつかオプションにチェックを入れて接続を試す。

「次のプロトコルを許可する」に変更し、いくつかオプションにチェックを入れて接続をする


作成したVPNはクイック設定(Windows 10の「アクションセンター」)に表示される。「Windows」+「A」を押して表示するとVPNのアイコンを確認できる。

クイック設定からVPN接続を切り替えできる


Microsoft Office

Microsoft Officeインストール方法

winget install --id Microsoft.Office

Microsoft Officeサインイン


Microsoft Officeをインストールしたら、一度だけWordやExcelなどインストールしたアプリケーションを起動する。最初の起動でサインインが求められるので、Microsoft Officeを利用できるアカウントでサインインする。

Outlook / Windowsメール

Windowsメールのアカウントセットアップ


利用するメールアカウントを登録する。GmailやOutlook、Hotmailといったアカウントは問題なく登録できるはずだ。iCloudメールを登録する場合、iCloud側でアプリパスワードを生成して使う必要がある。この辺りの条件は時々変わるので、その都度適切な方法を選ぶ必要がある。

企業が自前で運用しているメールサーバはOutlookやWindowsメールには登録できない、ないしは、登録しても使えないことがある。そういった場合には利用するメールアプリケーションを変更して試す。

Microsoft Edge

Microsoftアカウントでサインイン


Microsoft EdgeはMicrosoftアカウントでサインインしておいたほうが便利なことが多い。こだわりがなければ「設定」→「サインイン」からMicrosoftアカウントでサインインを行う。



Slack

Slackのインストール方法

winget install --id SlackTechnologies.Slack

Slackでサインイン


オンラインコミュニケーションでは、Slackが使われるケースが多い。Slackにサインインして利用できる状態にしておこう。

LINE

LINEのインストール方法

winget install --id LINE.LINE

LINE利用サンプル


日本では、メッセージングアプリとしてLINEが使われることが多い。LINEもインストールしてログインしておこう。

Facebook Messenger

Facebook Messengerのインストール方法

winget install --id 9WZDNCRF0083

Facebookでログイン


Facebookメッセンジャーも使われることが多いメッセージングサービスだ。インストールしてログインしておく。

※ IDが異なる場合には「winget search "Messenger"」でIDを調べてから使用する。

開発系アプリケーション

Visual Studio Code

Visual Studio Codeのインストール方法

winget install --id Microsoft.VisualStudioCode

Visual Studio Code使用サンプル


開発者に最も人気の高いエディタであり開発環境であるVisual Studio Codeをインストールする。多機能エディタとしても利用できる。

Windows Sandbox

※ この機能はWindows 11 Homeでは利用できない。Windows 11 ProやWindows 11 Enterpriseが必要。

設定アプリケーションで「アプリ」→「オプション機能」→「Windowsのその他の機能」→「Windowsサンドボックス」→「OK」を選択し、システムを再起動して「Windows Sandbox」を有効化する。

Windows Sandbox


使ったことのないアプリケーションをインストールして試したり、一度だけしか使わないアプリケーションをインストールして利用したりする場合などに便利な機能。

Hyper-V

※ この機能はWindows 11 Homeでは利用できない。Windows 11 ProやWindows 11 Enterpriseが必要。

設定アプリケーションで「アプリ」→「オプション機能」→「Windowsのその他の機能」→「Hyper-V」→「OK」を選択し、システムを再起動して「Hyper-V」を有効化する。

Hyper-Vマネージャー実行サンプル


仮想環境はホストをクリーンな状態に維持する目的にも利用できる。

仮想環境を削除した際は、管理者権限で「C:\Users\Public\Documents\Hyper-V\Virtual hard disks\」に残るディスクイメージも削除する。削除しないとディスクが消費されたままになる。削除するディスクイメージを間違えないように注意する。

Windows 10 開発環境

※ この機能はWindows 11 Homeでは利用できない。Windows 11 ProやWindows 11 Enterpriseが必要。

Hyper-Vの機能を使うことで仮想環境としてWindows 10開発環境を作成できる。作成はHyper-Vマネージャーから「クイック作成…」→「Windows 10 開発環境」→「仮想マシンの作成」→「接続」→「起動」で実施する。作成される開発環境は英語環境なので、次の操作で日本語環境へ切り替える。

設定アプリケーション:「Time & Language」→「Language」→「Add a language」→「Japan」「日本語」→「Next」→「Set as my Windows desktop language」→「Install」

システムを再起動

設定アプリケーション:「時刻と言語」→「言語」→「日本語」→「オプション」→「使用しているキーボードのレイアウト」→「OK」

設定アプリケーション:「時刻と言語」→「地域」→「国または地域」→「日本」

設定アプリケーション:「時刻と言語」→「日付と時刻」→「タイムゾーン」→「(UTC +09:00) 大阪、札幌、東京」

Windows 10開発環境を削除した際は、管理者権限で「C:\Users\Public\Documents\Hyper-V\Virtual hard disks\」に残るディスクイメージも削除する。削除しないとディスクが消費されたままになる。削除するディスクイメージを間違えないように注意する。



WSL 2

Ubuntu (WSL 2)インストール方法

wsl --install -d Ubuntu

Ubuntu 必要最小限のセットアップ方法

sudo apt update

sudo apt upgrde

sudo apt install language-pack-ja

echo 'export LANG=ja_JP.UTF-8' >> ~/.bashrc

Ubuntu 実行例


WSL 2を使うことで、UbuntuなどのLinuxディストリビューションを利用できるようになる。

MSYS2

PCのメモリ容量が少ない場合、WSL 2の常用は厳しい。その場合はMSYS2といったソフトウェアを使うことで、LinuxコマンドをWindows 11で実行するといった方法がある。

MSYS2をインストールする前に、次の環境変数を設定し、システムを再起動する。

Windows Terminalで「echo $env:Path」と実行して環境変数PathにC:\msys64\usr\binやC:\msys64\mingw64\binが追加されているか確認してから、次の操作でMSYS2のインストールとセットアップを行う。

MSYS2のインストールとセットアップ方法

winget install --id msys2.msys2

pacman -Syu

MSYS2セットアップサンプル


Git

Gitインストール方法

pacman -S git

現在のソフトウェア開発において、GitHub.comは欠かすことができない。Gitをインストールして利用できるようにするほか、次のようにGitHut.comを利用するための設定を行う。

GitHub.comを利用するための設定

git config --global user.email "メールアドレス"

git config --global user.name "ユーザ名"

Gitの使用サンプル


Vim

Vimのインストール方法

pacman -S vim

Vimの使用サンプル


Vimは開発者に人気の高いエディタの一つ。

NeoVim

Vimと共に人気の高いVi系エディタがNeoVim。NeoVimをインストールする前に環境変数PathにNeoVimをデプロイするパスを追加しておく。

「Home - Neovim」からNeoVimをダウンロードし、ホームディレクトリ以下のDocuments\neovimへデプロイする(C:\Users\名前\Documents\neovim\bin\neovim.exeが存在する状態にする)。

NeoVimの使用サンプル


デプロイパスや環境変数Pathに追加する値は状況に合わせて変更する。

PowerShell 7

PowerShell 7インストール方法

winget install --id Microsoft.PowerShell

PowerShell 7実行サンプル


Windows 11にプレインストールされているPowerShellはWindows PowerShell 5.1だが、MicrosoftはWindows PowerShellではなくPowerShell 7を使うことを推奨している。PowerShell 7をイントールする。

Windows Terminal

Windows TerminalのデフォルトシェルをPowrShell 7へ変更する。「設定」→「スタートアップ」→既定のプロファイル「Windows PowerShell」を「PowerShell」へ変更する。

Windows Terminalの「設定」→「スタートアップ」→既定のプロファイル「Windows PowerShell」を「PowerShell」へ変更


PowerShellでWindows Terminalが起動してくる


Windows Terminalで新規ウィンドウや新規タブを起動し、Windows PowerShellではなくPowerShell 7が起動することを確認する。



OpenSSH サーバ

OpenSSHサーバを有効にすると、Linuxサーバのようにssh経由でWindows 11にリモートログインできる。設定アプリケーションから「アプリ」→「オプション機能」→「機能を表示」→「OpenSSHサーバー」にチェック→「次へ」→「インストール」を選択し、システムを再起動してOpenSSHサーバを有効化する。

次のように設定ファイルを作成する。

設定ファイルC:\ProgramData\ssh\sshd_configの作成と編集

copy C:\WINDOWS\SYSTEM32\OPENSSH\sshd_config_default C:\ProgramData\ssh\sshd_config

notepad C:\ProgramData\ssh\sshd_config

設定ファイルC:\ProgramData\ssh\sshd_configの編集内容

C:\ProgramData\ssh>fc /n C:\Windows\System32\OpenSSH\sshd_config_default C:\ProgramData\ssh\sshd_config

Comparing files C:\WINDOWS\SYSTEM32\OPENSSH\sshd_config_default and C:\PROGRAMDATA\SSH\SSHD_CONFIG

***** C:\WINDOWS\SYSTEM32\OPENSSH\sshd_config_default

86:

87: Match Group administrators

88: AuthorizedKeysFile __PROGRAMDATA__/ssh/administrators_authorized_keys

***** C:\PROGRAMDATA\SSH\SSHD_CONFIG

86:

87: #Match Group administrators

88: # AuthorizedKeysFile __PROGRAMDATA__/ssh/administrators_authorized_keys

*****

C:\ProgramData\ssh\sshd_configファイルの最後の2行を上記差分データのようにコメントする。元の設定のままでは、C:\ProgramData\ssh\administrators_authorized_keysをチェックしに行った後で公開鍵認証そのものが無効になり、${HOME}.ssh\authorized_keysに公開鍵を配置しておいても使われない。${HOME}.ssh\authorized_keysに公開鍵を追加して使えるようにするには、上記のようにMatch Group administratorsの設定を無効化しておく必要がある。

設定を変更したらOpenSSHサーバ(sshd)を起動する。

OpenSSHサーバの起動

Start-Service sshd

OpenSSHサーバの動作を確認


Windows 11起動時に自動的にOpenSSHサーバが起動するように、次のコマンドを実行する。

Windows 11起動時に自動的にOpenSSHサーバが起動するように設定

Set-Service -Name sshd -StartupType 'Automatic'

次のコマンドを実行してファイアウォールのルールを表示させ、外部からWindows 11へアクセスできることを確認する。

OpenSSHサーバに関するファイアウォールのルールを確認

Get-NetFirewallRule -Name *ssh*

外部からOpenSSHサーバへアクセスできない設定になっている場合、次のようなコマンドでOpenSSHサーバへアクセスするための設定を追加する。

OpenSSHサーバへアクセスするためのルールを追加

New-NetFirewallRule -Name -DisplayName 'OpenSSH Server (sshd)' -Enabled True -Direction Inbound -Protocol TCP -Action Allow -LocalPort 22

OpenSSHサーバを起動したあとで設定ファイルを編集した場合、次のコマンドでOpenSSHサーバを再起動する。

OpenSSHサーバの再起動

Restart-Service sshd

次のコマンドを実行して、リモートログインしてきたユーザーのデフォルトシェルをPowerShell 7へ変更する。

リモートログインしてきたユーザーのデフォルトシェルをPowerShell 7へ変更

New-ItemProperty -Path "HKLM:\SOFTWARE\OpenSSH" -Name DefaultShell -Value "C:\Program Files\PowerShell\7\pwsh.exe" -PropertyType String -Force

リモートログインを許可するホストの公開鍵を${HOME}.ssh\authorized_keysへ追加しておく。

OpenSSH クライアント

OpenSSHクライアントを有効にすると、Windows 11からLinuxサーバなどにリモートログインできる。OpenSSHクライアントは設定アプリケーションから「アプリ」→「オプション機能」→「機能を表示」→「OpenSSHクライアント」にチェック→「次へ」→「インストール」を選択して有効化する。Windows Terminalでsshコマンドを実行できるか確認する。環境変数Pathの変更が反映されていない場合、いったんシステムを再起動してから確認する。

ssh-keygenコマンドを実行して秘密鍵と公開鍵を生成する。

秘密鍵と公開鍵を設定

ssh-keygen

リモートログインしたいホストの~/.ssh/authorized_keysへ公開鍵を登録しておく。

Windows 11のsshコマンドでほかのWindows 11へリモートログインしたサンプル


sshコマンドで設定した他のホストへリモートログインできるか確認する。

アプリケーションのセットアップは記録しておく

アプリケーションのインストールと設定についてすべて記録するのは大変であり面倒だ。しかし、この記録があるのとないのとでは、再インストールしや再セットアップの時の手間が変わってくる。すぐに同じ状態にできることがわかっていれば、アンインストールもそれほど躊躇しなく実施できるようにもなる。

こうしたアプリのセットアップ作業はある程度まとめて一斉にやっておくとよい。新しいWindows 11搭載PCを購入した段階で一気に作業しよう。