発売約1年でもトヨタ「ハリアー」が超人気! 高級SUVヒットの理由とは?

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「いいもの感」と「割安感」のバランスが絶妙なハリアー

 2020年6月にフルモデルチェンジして4代目となったトヨタ「ハリアー」ですが、発売から約1年が経過する現在、販売状況はどうなっているのでしょうか。

 発売翌月からの登録台数ランキングをみると、2020年7月は4位(9388台)、8月は6位(6231台)、9月は5位(8979台)、10月は6位(9674台)、11月は4位(9897台)、12月は4位(8128台)。

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 2021年1月は4位(9177台)、2月は5位(8006台)、3月は7位(1万428台)と、ランキング上位の常連となっていることがわかります。

2020年6月にフルモデルチェンジしたトヨタ「ハリアー」(4代目)

 月平均だと9000台強ほどの販売状況が長く続いていることから、大人気モデルといってよいでしょう。

 SUV単体としてハリアーよりも登録台数が多いモデルはコンパクトクラスのトヨタ「ライズ」しかおらず、ハリアーはSUVのなかで販売トップを争うと同時に、上級SUVとしてもっとも売れ筋となっています。

 現在、トヨタ公式サイト上で確認できる納期目途の表示は、半導体不足による生産の制約の影響か「販売店にお問い合わせください」とのこと。

 トヨタがサブスクリプションとしてすすめているサービスであるKINTOのウェブサイトを見ると、納車は「1.5〜2か月目途」となっています。

 そんなハリアーの人気の理由はどこにあるのでしょうか。

 いくつか考えられる理由のうち、まず考えられるのは「いいもの感」と「割安感」のバランスの良さです。

 ハリアーの流麗なスタイルはしっかりと高級な雰囲気を感じさせ、本革調の素材を大胆に使った運転席まわりの表面処理などインテリアの仕立てもプレミアムを実感できるもの。

 そんなハリアーを購入すれば“いいものを買った感”で満たされるのは間違いありません。それを、ベーシックグレードであれば300万円を切る299万円という価格から実現しているのですから、お買い得に感じられます。

 もちろん、実際にはベーシックグレードではなく上級グレードを買う人も少なくありません。しかし「200万円台から設定」されているバリエーション構成は、新車購入時の車種選びにおいて、ハリアーを選ぶハードルを下げているのは間違いないでしょう。

 また、ブレないキャラクターも人気の理由。ハリアーはスペックや実用性といった横並びで比較するような部分は気にせず開発されています。

 一方で重視されているのが、デザインや品質感です。たとえばデザインは、新型はクーペフォルムを強調していますが、これは荷室の広さを犠牲にして成り立っています。ハリアーと基本メカニズムを共用する「RAV4」より荷室は狭いのです。

 しかし、「ハリアーを選ぶ人は絶対的な荷室の使い勝手よりもデザインを求める」という信念のもとで開発されたことで、荷室の広さとデザインの両方を求めて中途半端に終わるよりは、徹底して美しいデザインを目指しました。

 それが「ハリアーらしい」として高く評価されているのは間違いないでしょう。

 品質感に関しては、前出のように運転席周辺の作り込みなどが挙げられます。

現在のヒットにつながる下地はすでに出来上がっていた!?

 さりげなく採用する先進機能も、ユーザーには「先進性」として好影響を与えていると考えられます。

 新型ハリアーには前後のカメラが捉えた映像をSDカードに録画するドライブレコーダーと同様の機能をトヨタ車として初採用。

 また、一瞬にして透明ガラスと曇りガラスを切り替えできる「調光パノラマルーフ」もトヨタ車初採用の先進装備で、「ハリアーは特別なクルマだ」と感じさせます。

トヨタ「ハリアー」(4代目)

 さらにいえるのは「ハリアー」という安心感も人気の秘訣でしょう。

 定番商品が強いというのがクルマに限らず多くのジャンルで共通することですが、初代ハリアーは現在につながるSUVブームが始まる前の1997年に登場しました。

 当時はまだSUVといえば悪路走行を前提として頑丈なメカニズムを組み合わせるモデルが当たり前のなか、FF乗用のプラットフォームに豪華なインテリアをコーディネートするという独自のコンセプトが斬新だったのです。

 それに対して当初は「SUVなのに邪道」という声もあったものの、市場からは歓迎され、いまに続くラグジュアリーSUVブームの礎を築いたといえます。

 その独自の方向性もあってハリアーは人気モデルとなり、先代に当たる3代目では多くのユーザーの手に渡りました。

「買って失敗のないクルマ」という評価を多く得たことで、新型デビュー時にはヒットする下地が出来上がっていたのです。

 そして新型も期待を裏切らなかったことで、人気モデルへと上り詰めたといえるでしょう。

 こうしてハリアー人気の理由を探ると、それは一朝一夕で実現したものではないことが理解できます。

 乗用車ベースのラグジュアリーSUVというジャンルを世界に先駆けて提案し、そこから20年以上にわたってブレずにブランドを育ててきたこと。そしてハリアーに対する市場の期待を裏切ることのない新型を開発したこと。

 その両輪のバランスが現在の人気を実現したといえ、どちらかが欠けても現在のような爆発的なヒットにはならなかったといえそうです。